アベンズ家の血統
こちらの位置はT字路の縦棒の末端と考えて良い、相手は横棒の左側から来る。
照明のない砦内部では、ホモンクルスになったときに得られた暗視能力も大きな利点だった。
人影が視界に入ると無駄なく流れるような無音の動作で短剣をリリースする。
「キャッ!!」とカキィーン…。叫び声と金属音がほぼ同時に通路に響いく。
あれ? アイテムボックスから予備の短剣を取り出し近づくと、テレナが盾で短剣を防いだまま硬直していた。
「なっ、何するよっ!!」
”吸音の魔法”を使っていないとはいえ、ほぼ無音の短剣を防ぐとは…。目で認識できたのは恐らく…テレナから5mしか離れていない位置ではないだろうか?
こいつは…危険だ。
オール・グランからの命令で、商業都市オハロ以外で活動する将来有望な新人は殺せと言われている。このテレナは、アベンズ家の血を引くだけあって優秀すぎる…。
「そんな目で見ないで…」テレナは何かを感じたように訴えた。
「おい、そっちは大丈夫か?」
気絶したイレーゼを抱えてグレッドが近寄ってくる。恐らく背後から近づきイレーゼを無効化したのだろう。
「あぁ…問題はないが、イレーゼを寄越せ、殺す…」
グレッドは仕方なく気絶しているイレーゼを床に置いた。
「ちょっと、何を??」
困惑しているテレナにグレッドは説明する。裏ギルドであっても信頼は重要なのだ。信頼に値しない者は殺されるべきなのだ。また多数決や証言だけで信頼を証明すれば冤罪を助長させるだろうが、裏ギルド・個人用ランクプレートを見れば一目瞭然なのである。
イレーゼのプレートは赤く染まっていた…つまり裏切りのプレートなのだ。
「これを証拠としてルシファーに提出すれば、血盟同士の争いも起きない」
投擲した”抽滴の魔法”で毒を塗った短剣を回収すると、イレーゼの心臓に突き刺した。
「あ、あなたたち…。わたし…いつの間にか…あなたたちを仲間だと…思い込んでいたのね…」
涙するテレナを無視して、俺はグレッドにイレーゼの死体をマジックボックスに回収するようにお願いする。
殺気っ!!
振り返りざまに、短剣をクロスして一撃を防ぐが、完全に勢いを殺すことができず、壁に叩きつけられた。
体のダメージがでかすぎる…一撃で…ここまで…やられるとは…。
俺が壁に寄りかかっった状態で意識を失う寸前に見たものは、俺を見下すように立つ、金色の鎧を纏った黒髪の少女だった。




