プライド
ファルを砦に置き去りにしたパーティーが通って来たと思われる経路の床に、まだ乾ききっていない人間の血痕がある。
「ここが殺人現場か」と呟き短剣を抜くと、背後から襲ってくるゴブリンソルジャーを切り伏せる。
通路が狭いためゴブリンソルジャーが一直線に並んでいた。
ちっ、数が多いな。まるで殺される順番待ちだな。
そう思っていると、ゴブリンソルジャーの列の一番奥がキラリと光る。
俺の目の前にいる奴が邪魔で見えないが、次々と奥側からゴブリンソルジャーの多分頭部? が弾け飛んでいる。
攻撃かっ!? 俺はしゃがんでその攻撃を避ける。
「よう、大丈夫か?」イレーゼが悪気もなく聞いてきた。
「何でお前がここにいる?」
「お前さんが探偵ごっこしに行くのが見えたんでな。それにしても殺した奴を魔物の餌にするなんて貴族らしいな。俺もそうしようかな」
「そうか。貴族か…」
なるほど理解できた。毎回死者を出すパーティーに疑いがかからないのはそのためか。また貴族から誘いを受けて断れる平民は少ないため、新しいメンバーを探すのも楽なのだろう。
しかし…二度目はないと教えてやったのに…。短剣を防御の姿勢で構えると、別れの挨拶をする。
「お前は、エレナと仲良くやっていたのに、何が不満だったのだ?」
「全てさ、七灑守護者? ギルドメンバーの層が薄すぎだろ? ノクターンさんよ? 実力もないくせに、定員割れで選ばれたくせにっ!!」
ギュィィィィーーーーーーン。
魔力が弓矢に集まっている。これは武器自体に特殊スキルが付与されているレア武器か…。
ピンっ!
短剣を心臓の前でクロスさせ放たれた矢をブロックするが、矢の威力が強すぎてふき飛ばされた。
短剣が2本とも折れて、矢は俺の鎧に突き刺さっていた。短剣で勢いを殺さなかったら貫通しただろう。
くそっ。この距離は完全にイレーゼ有利だ。
立ち上がる前に煙玉をアイテムボックスから取りだし、着火させて俺とイレーゼの中間あたりに放り投げた。煙玉から噴出した煙はすぐさま視界を遮る。
匍匐前進で通路の折れ目まで逃げ延びると、さらに奥に進む。この距離ならば折れ目からランプの光は届かないだろう。
左膝を立てて右膝を地面につく。そして、ゆっくりと尻を右足に乗せ固定する。
薬草を握りしめると”抽滴”を詠唱し、右手の短剣に毒が付着するのを見届け、投擲の態勢に入る。




