物取りの森
「なぜ? こいつらを生かすのだ?」
俺の質問に商人の親子の顔から血の気が引くのがわかった。
「あっ? 説明してやれ」とイレーゼはグレッドに丸投げした。
「折角だから、傭兵の得点と金を稼ごうというわけだ。そのためには商人に生きてもらわねばならん」
「うん? 金の方はわかったが、傭兵の方がわからい。ギルドを通した依頼ではないし、そもそも人数が足りないため、クエストの受注ができないのでは?」受注時は最低4人がルールなのだ。
スープを飲むイレーゼの手が止まる。
「ギルドを通すって方は緊急ってクエストってことで問題ないが、人数か…。おい、商人…お前は依頼主になるから…娘、お前、ギルドに加入してたりするか?」
娘は父親の顔を見ると、決心したかのように懐からギルドカードを2枚出す。
”傭兵:銅、狩人:銅、冒険者;銅、兵士:銅”
”採取:銅、職人:銅、商人:銅、公務:銅”
表ギルドも、職業ギルドも…オール銅だ。
「まぁ、銅なら、俺達と一緒だな。丁度いい」
グレッドはランクを確認すると、ギルドカードを返す。
その後も圧倒的な強さで襲い来る盗賊や魔物を蹴散らす三人に、最初は恐怖で顔を引きつらせていた親子も次第に安堵の表情を見せ始めた。
そして王都リゼンまであと半日の距離、最も襲撃率の高い森、通称”物取りの森”に差し掛かるとお約束のように盗賊の集団が姿をみせる。
「30? 40? とにかく多いな、俺が出る。お前とイレーゼは親子を頼む」
2本の色違いの小型の瓶を取り出すと飲み干す。これは筋力と持久力を高めるドラッグだ。
薬の効果はすぐに現れ、グレッドは街道沿いにいる盗賊目掛け切り込んだ。
あの両手剣を森の中で振り回すのは相当のハンデとなると察したイレーゼは、森に潜む盗賊たちを矢で攻撃し始める。
俺は二本の短剣を防御の態勢で構える。親子を守ろうにも、必ず死角ができてしまう…最悪は、報酬のことを考えて、親を生かすべきだろう…。できる限り死角の位置を無くすために、親子の回りを歩きながら敵の攻撃を警戒する。
やはりと言うか、死角から矢で攻撃される。俺は親子を庇うために身を挺して矢を体で受け止めた。
脇腹に矢が刺さるが、敵が位置を変える前に、短剣の投擲により敵を仕留める。
刺さった矢を何事も無く抜く俺に親子は目を見開くが、そんなことより「もっと身を屈めていろ」と注意する。
戦況を確認する。グレッドは敵首領に手こずっているが、イレーゼの矢を嫌って下っ端は、首領の援護に出て来ない。しかし下っ端は森のあちらこちらに拡散し身を潜めているため、イレーゼも手出しができず膠着した状態だ。




