再契約
特攻するグレッドに続き俺も短剣を構える。
前を走るグレッドが小型の瓶を取り出すと飲み干すのが見えた。ドラッカーなのか?
ドラッカーとは、手間と費用のかかる魔法ではなく、簡単に同等の効果をもたらす薬物を服用することにより、一時的かつ簡易的な肉体強化する手法である。
「うおぉぉぉりゃぁぁぁっ!!」
グレッドが背中から両手剣の止め金を外して構えると、待ち構えている護衛の首を撥ねた。
剣速が尋常ではない速さだっ!!
俺もグレッドに注意を向けている護衛の背後に回り込み、首を二本の短剣で切り落とす。
残り…。確認する前に、イレーザの矢が残りの護衛を仕留めていた。
「なんだよっ!! ドラッグ使うんじゃなかっだぜぇ」
興奮状態のグレッドは、残された商人の親子に近づく。近づかれた父親は娘を身を挺してかばう。
この親子を残す意味がわからない…。俺は短剣で同時に親子の首を狙う。
キィィィィンッ!! 甲高い金属音が野営地に響く。
「おい、何勝手しやがる?」俺の短剣を軽く防いだグレッドが息を荒げて睨んでくる。
「これだから、弱小ギルドは…」イレーゼが呆れた顔で近づいてくる。
「どういうことだ?」と俺は尋ねた。
俺を無視してイレーゼは、商人に向き直ると交渉を始めた。
「おい、交渉だ。お前の護衛は見ての通りだ。王都まで俺達が護衛してやる。金貨30枚だ、どうだ?」
「む、娘に…手を出さんと約束してくれ…それ以外は…好きにしろ」
「交渉成立だな。グレッド、死体を片付けておけ、どうせ、こいつのアイテムボックスじゃ、はいらねーだろうからな」
グレッドは4体の死体をアイテムボックスに放り投げていく。なんだ? あの間口は…恐ろしく広い…。死体サイズが入るアイテムボックスの存在は知らなかった。アレがあれば…クエストがどれだけ楽にこなせたか…。確かに俺のでは入らない…。
「えっと、俺達の事を話さないこと。護衛の事を話さないこと。ぐらいか?」
「娘に手を出さないことじゃ…」
イレーゼは、商人の持っている契約の魔道具を利用して、契約を交わす。
「よっし、ここからは普通の冒険者だ」イレーゼが報告してきた。
外套と仮面を外す三人の素顔を見て、商人の親子は驚く。
「まだ…子供ではないか…お前らは…一体?」
「余計な詮索はするな。それよりも…野営の最中だったな? 食べ物はあるのか?」
「はい。ここに」商人の娘は、冷めたスープを焚き火で温め直し、パンと共に三人に手渡しした。




