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解体屋 鉄治  作者: MiYA
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21/25

笑って死のうや … 角田 鉄治 …



いい笑顔だ… 玉五郎 …


そうさ、そうやって、友達や仲間ってのが増えて行くのさ …


笑顔ってのは鍵だよな …


途切れ途切れの鎖の先には、片方に小っち ぇ鍵、もう片方は鍵穴がついててよ、そいつをガチャッと外すのさ 、誰でも持ってる笑顔っつー鍵を使ってよ 、そうやって輪が繋がって行くのさ…



何かいい気分だな …


昔の話しでもしたい気分だな…



俺の育った町は …


ただっ広い大地の平原みたいな田舎でな、空っ風がビュービュー吹いて…


薄ら寒い町だった …



俺は… 本当の親父ってのの顔を知らねぇんだ…


お袋の話しじゃ、俺が生まれて直ぐに消えちまったらしい… 話したくないだけなのかも知れねぇけどな …


俺が2才の時、お袋が再婚したんだ…


だから、角田って名字は義理の親父の姓なんだ、まぁよ、よくある話しだよな …女が子供抱えて1人で生きてくには、塩っ辛い世の中だしよ …


俺が5つの時、妹が産まれた …


小っちゃくて、ぷにぷにしてて、餅みてぇで可愛くてな …


妹は可愛いんだけど … 何だかな…


家ん中の雰囲気が変わったんだよな …


何か… 俺は、蚊帳(カヤ)の外… みてぇな …


何がどうてんじゃねぇんだが…


上手く言えねぇな …


俺が、そう感じちまったんだな…


家ん中じゃ、あんまり喋んなくなって…


笑わなくなっていた…



小学上がって、友達っての作るだろう?けど 、笑わねぇからよ、からかわれんだ…

でな、出来た友達ってのが悪さの好きな篠田って奴でな、篠田ん家は… まぁ今で言う完全なるネグレストだな …


男兄弟3人なんだ、篠田は真ん中、カップメン1個を争って壮絶なバトルだぜ、兄弟3人で、()びる迄殴り合うんだ…それ見て篠田ん家のお袋さんはゲラゲラ笑ってんだ …


篠田の話じゃ、親父さんは最初から居なくて、兄弟皆、父親が違うらしい… お袋さんは週に1回か2回帰って来て、菓子だのカップ麺だの置いてくだけだったらしい… あんま話したがらないから詳しくは聞けなかったけどな…


だから、篠田と遊ぶ時は万引きしてた…

篠田、何時も腹空かしてたからな …

最初はな悪い事だよなって思ってたんだけどな、麻痺してくんだ、その内にスリルに変わってな …


中学上がって、篠田とはクラスが別になったんだけどな…


青春の息吹きって奴だな…


悪 = 格好いい、みたいな感じになっちまってな… それによ、異性つーの意識する年頃だしよ …


尾崎の世界で、バイク盗んだら捕まってな(笑)


歌ってぇのの危うさを知った…


13の夏だったな …


こりゃぁ痛かったぜ…


それから思考が少し変わってな…


力 = 強さってなっちまって…


明け暮れたな、喧嘩って聞いたら飛んで行 ったぜ、そんなこんなで、過ごしてたな…



俺が小学5年の頃からだったな…


いいなって思う女の子がいてな、名前は翔子… サラサラして肩より少し長い髪で 、人形みたいに目のパッチリした可愛い顔してて、真面目でな…


けど、そう思うのは俺だけじゃ無くて…


まぁ、憧れみたいな甘くて酸っぱいみたいな、そんな感じだ …


告白なんて野暮なこたぁしなかった…


中学2年の秋頃になると、中学出てからの進路をどうする?って話しになるだろ、俺には 、学って事の意味が今いち解らなくてな … 家出て勝手に生きてくからって言ったんだけどな、お袋に泣かれて …



何か悪いなって思ってよ、工業高校行ったんだ、まぁまぁ見渡す限り野郎ばっかり…数少ない女なんて3~5人男がいたんじゃね ぇかな… 俺、そう言う女嫌いでよ …


バイトもしてたんだ、学校終わってからコンビニバイト、ある夜、バイト10時迄なのに交代の奴が来なくて、「何とか12時まで頼むよ…」店長にすがられて、12時でバイト終わって、チ ャリで家に向かってたら、翔子がボーっとして歩いてたんだ …



「おぉ、暫くだな、元気?」



声掛けたら、涙ボロボロ流して泣き出して … 服に土かなんか付いてるし、足とか手も擦り傷、切り傷だらけでよ …



「どうしたんだ?」



聞いても泣くだけで …



「私、死にたいっ!もう嫌だ…」



そう言って座り込んじまって …


近くに公園があるから、其処へ連れて行ってベンチに座って、何も言わないから…



俺も何も言わないでいたら…



翔子が…



「犯…さ…れた… の …」



下向いて、公園のサラサラした土の上に涙落としたんだ …



「誰に…」



俺は翔子に聞いた …



「解らない …」



翔子、全然、顔上げないんだ、ずっと下ば っかり見てよ…慰めの言葉なんて出て来ね ぇって…



暫く2人して沈黙してたんだけど…



俺が翔子誘って無理矢理ブランコ乗せたんだ…



「馬鹿なんじゃない…」



結構、ハッキリ言われたんだけど…


それでも、無理矢理乗せて背中を押した…



ブランコが揺れて …



俺、力一杯、翔子の背中を押して…



「負けんな … 」



それしか出て来なくてよ …



何とか微笑む程になれた翔子を、自転車の後ろに乗せて家の前迄送って行って…


俺は鬼の形相で家に帰って、高校で仲のいい、ちょっぴり目立ってヤンチャな嶋田ってのに電話をして、探してくれ!って頼んだんだ …


嶋田ってのは、地元じゃ一目置かれるような奴なんだけど、俺とは気が合ったんだ



「鉄治、30分待ってな、必ず見つける…」



まぁ、嶋田は、多方向に知り合いもいる奴だから、探せちゃった訳だ…



25分後、嶋田から電話が来て…



「あっ、鉄治? 見つけて、今、店に連れて来たから迎え行かせたから、家の前に出てて …」



俺が家の前に出てたら、バイクが近づいて来て、メット渡されたから後ろに乗って嶋田の店へ行った…


嶋田、高校生なんだけど…


大人びてたから…


6才上の兄貴の名義にして、夜、店やってたんだ、その辺の悪が集まってるような店…


そんで俺が店に着いたら…


店の奥に隠し部屋あんだけど…


猿轡(サルグツワ)されて、両手と両足を縄で巻かれた20代くらいの男が3人…


既に顔がボコボコ… 岩みたいに腫れて監禁されてた …



「鉄治、悪いな… 俺、こう言う奴らダメなんだ、ヤりそうになったけど待ってた … どうする?お前ヤる?」



嶋田はナイフを俺の前に差し出した



「ナイフはしまえよ、何でボコッちゃった訳? 俺、出番ないだろ?」



嶋田はニコニコしながら…



「そいつらヤッさんだぜ、お前は不味いだろ?これっ、其処の闇金で借りさせた… これで、その子に花でも買ってやれ…」



嶋田は俺に現金100万円を渡した…



「俺の一つ下の妹ね、中学の時… こう言う奴らに殺されたんだ… 回されて… 鉄治の知り合いと同じ塾の帰りに… 俺、それからダメなんだ、こう言う奴らっ… 」



ブスッ…



「フグゥ~!」



嶋田は、一番手間に座らせていた男の肩にナイフをぶっつり差した…



玩具の黒ひげ迄は行かないけど、その男、尻浮かせてたな… ピョンッて跳ねた…



「適当に解放しとく …」




嶋田がそう言ったから …



「ヤるなよ … 」



そう言って店を出た、帰りに通り掛かりのコンビニで茶封筒を買って、嶋田が渡してくれた100万円を入れて、封筒の上に成敗したぜ…って書いて、翔子ん家のポストの中に突っ込んだ …



1週間程経って…



授業が終わる頃、進学校に通う翔子が、俺の通う野郎ばかりの工業高校の門の前で、オドオドしながら誰かを待っていた …



嶋田が俺に



「あ、あの子、めっさ可愛いい… 清白学園の翔子ちゃん…」



「えっ!何で知ってんのっ?」



俺が嶋田に聞くと…



「俺の情報網に入らない情報は無い… 鉄治 、いいなぁ …」



俺は嶋田に



「嶋田… 悪いけど… あの子、送ってやってくんね … 」



どんな顔して翔子に会えばいいか解らなくて…



「俺が何かするかもな …」



嶋田はそう言った…



「お前は絶対出来ねぇ…」



俺はそう言って、翔子に会わないように裏門から帰った。


翌日は日曜で、バイトも休みだった俺は、部屋でゴロゴロと寝ていた…



「鉄治、電話!女の子から、急用だって 」



お袋の声で起きて電話を受けると…



「角田君… 来生です、来生翔子です、ニュ ース見た?」



翔子が電話を掛けて来て、俺にそう聞いた



「あ、いや、今、起きた… 何で?」



「昨日、角田君の使いですって、嶋田さんが …私、校門の前で待っていたんだけど…角田君に会えなくて、それで、嶋田さんが送ってくれたのバス停迄… 本当は家迄送りたいけど…つけられているみたいだから…あんたに何かあったら鉄治に間違いなく抹殺されるんで… そう言って… そしたら、今 、ニュースで死体が発見されたって … 角田君?聞いてる角田君? 」



俺はTVのリモコンのボタンを押した…



翔子の言う通り …


嶋田が20数ヵ所刃物でメッタ刺しにされ、死体が発見されたと報道されていた…



「ごめん… 今、解った… 知らせてくれて、 ありがとな…」



俺は電話を切った …



翔子からの電話を切った後、同じ高校の奴らからひっきりなしに電話が鳴った…



嶋田は、慕われていた …


難しいとこだが…


曲がった事は嫌いだった、金は好きだったけど… 見掛けはギャングみたいだったけど …卑怯じゃねぇし、白黒つけるタイプだって言えばいいかな …


誰が嶋田やったのか調べようぜ…


誰からじゃ無く、そう言う話しになったんだ 。



俺は家を出た …


警察官じゃねぇけど、聴き込みしようと思 ってな …


家を出て直ぐ、不審な黒いワンボックスカ ーにつけられている事に気づいた …


俺の横でビタッと車が止まり、ドアが開いて中から男が二人降りて、俺を車に押し込めようとしたから、俺も暴れる…


もみ合っているうちに、2人に見覚えがある事に気づいた …



嶋田の店で見た奴等さ…



「お前等か嶋田殺したのか!」



ボガスカ殴りながら言ったら…



「てめぇも死ねや!」



俺は頭が沸いて …弾みだったんだ…


1人の奴、打ち所が悪くて…


まぁ、そう言う事になっちまった …


奴らの職業っつーか何だ?勤務先がそうだ ったし…言わなきゃいいのに翔子が、全部警察に話しちまって… 俺は情状酌量みたいになったけどな



その後 …



義理の親父を中心に、家族はハッキリと変わった …



鑑別帰りの…はみ出し者 …



俺は高校も、勿論、退学…


家も故郷も捨てて…



彼方ふらふら~ 此方ふらふら~


風の吹くまま…気の向くまま…



気がつきゃ周りに誰もいねぇし…


誰も信用出来なくなっちまってた …



そして、辿り着いたドヤ街に住み着いて、3ヶ月が過ぎた頃…



鉄虎社長に声掛けられた…



「兄ちゃん、何時からドヤに住みだ ? 」



最初、ヤーさんかと思ってよ、臓器でも取られんのかと思ったけどよ …



しつこく言うんだ …



「兄ちゃん、俺の知り合いによく似てんだ 、そいつ腕のいい解体工でよ、まぁ聞けって兄ちゃん!」



歩き出そうとしてんのに、前に回り込むんだ…



「煩ぇ、話し描けんな!若い奴なら他にいんだろ!」



怒鳴りつけてもよ …



「ガハハッ!まぁ、そう言うなよ、兄ちゃん、短期は損気だぜ、ガハハッ!」



何だ?このオヤジ…



そう思ってよ、押し退けて行こうとしたら



「おぃ、兄ちゃん、逃げんなよ…」



貫禄(カンロク)ある声でそう言われてな …



「今が嫌なら、1年後でも何年後でもいいからよ、本気になったら電話くれや …」



ニッコリ、笑ったんだ …



飢えてたんだよな …

愛情とか優しさってやつに …



そして、もう1回 …


信じてみたくなったのさ …


人間て奴と… 自分をな …



社長が鍵を挿してくれたから…


俺も少しだけ微笑んで …


挿さった鍵ガチャ ッて回したんだ…


そしたら上手く繋がって…


今じゃ、鉄虎で働く仲間達とも繋がった …


笑顔っつー鍵を使ってな…



今は俺、幸せなんだぜ …



社長が教えてくれて、本を読む楽しさってのも知ったんだ …


読んだ本の中に、忘れられない言葉ってのもあって… インディアンの本なんだけどよ



貴方が産まれた時 …


貴方は泣いて、周りの人達は笑った…


貴方が死ぬ時は …


貴方は笑って、周りの人達が泣くのです



俺、鉄虎社長と出逢えて …


こう言うふうに死ねるって…


心からそう想えているんだ…



笑顔の鍵使って…


笑って死ねるってな …



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