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解体屋 鉄治  作者: MiYA
17/25

若さって…いいなぁ…



「えっ?あっ、はい、解りました 」



熊八は携帯電話を切ると



「あのな、今日は昼で終わってくれって、元請けから電話あったから、皆、もう昼だから片付けて帰ろうな…」



「あの… 熊谷さん、俺達、人が足りないからと社長に言われて来たんですけど … 」



天野が申し訳なさそうに聴くと



「実際はそうなんだ… でもなぁ~大人の事情なんだ… 」



熊八はニコッと笑った。



「はい… 解りました…」



天野は頷き返事をすると



「政、清 、後片付けだ」



政と清は腑に落ちない顔をし、渋々、片付け始めた。



「天野、悪いが… 後で二人に教えてやってくれな…」



熊八は天野に気を遣いながら、そう言った


天野は微笑み



「大丈夫です、すみません…」



「置き場に戻して来る…」



熊八は重機に乗り走って行った。



3人はその間に、作業現場の後片付けを終らせる。


天野は片付けをしながら…



「政、清 、 今日、鉄さん家行くだろ?早く終わって良かったよな?」



政は仏頂面で …



「何か俺… 面白くないっす… 人足りないつ ぅーから来たのに…」



天野は苦笑いをしながら…



「あのね、政、こう言う事もあるんだ…うちの会社の人間だけで仕事をしているなら 、無いだろうけれど、今回は下請けで入っているだろ?元請けの指示で動かなくちゃならないんだ … 工事が予定より早く終わり過ぎると入って来る金額が違ってくる… 見積りと合わせなくちゃってね、時にはその差額が、数百万、仕事によっては数千万になる事もあるんだ … それで会社が潰れる事だってある、だから、こんな時は、今日これ以上仕事していたら怪我していたかも… 良かった怪我しないで… 俺はそう思う事にしているんだ… 解って貰えたかな?」



政も清も、仕方のない大人の事情を噛み締め頷いた。



それから、重機を置いて来た熊八と一緒に 、現場に来る時に乗って来た鉄虎の車で、会社へ戻った…



「お疲れさまで~す」



4人が事務所に入ると、事務の真奈美が浮かない顔をして溜め息をついていた…



「あっ、お疲れ様です…」




熊八は心配になり…




「真奈みん、どうした? 元気ないね?」



「えぇ、それが社長に何回電話を掛けても繋がらなくて… 繋がってもノイズ凄くて…直ぐ切れちゃうんです … 」



熊八は、自分の携帯を作業着の胸ポケットから取り出し、社長の携帯に電話を掛けた



ガッ-ピーピー!プッ…




「あれ、本当だ …」



天野も政も続いて清も自分の携帯から掛けてみたが… 電話は繋がらない …



「社長の今日の現場… 樹海だった?」



「樹海って…」



政は震えた …



「樹海に現場あるんですか?」



清は質問し…



「無い無い、熊谷さんの冗談だよ、ハハハ ッ!」



天野は大人の対応をし…



「3人面白いねぇ~」



熊八はTV番組プロデューサーのように、笑いながら指パッチンを決めた …



「今日は、麻野の多田さん宅の御浄めに行 っている筈なんです、もう戻って来てもいい時間なんですけど …」



真奈美は冷静に社長の居場所を告げた…



天野と政と清は顔を見合せ互いに頷き



「俺達、麻野迄行って来ますよ、家の場所を知ってますから」



ニコニコしながら天野が言うと、政と清はサッサと先に車に乗り込んでいた…



「天野さん、いいんですか? そんな… 皆さん 疲れているのに …」



真奈美は申し訳なさそうに言った …



「何でも無いですよ、俺達も鉄さんに用事があるので … それじゃ、車借ります!」



天野は真奈美と熊八に言うと、車の運転席に乗り走り去って行った …



熊八は、澄み渡る空を見上げて



「若さって … いいなぁ …」



ポツリと呟いた …



天野達を見送り…



熊八が自宅へ戻ろうと歩き出すと …




プップ~!



ジミーが運転席の窓を開け…



「熊ッチモ早上ガリ?俺ト矢野ッチモ…」



熊八は閃いた…



「矢野さん、俺達もたまには青春しませんか?」



熊八は後部座席に座る、矢野に声を掛けた



「青春~? それはワシに、リングに沈めて欲しいって懇願してるの~?ワシ、出来るかな~♪」



熊八は顔を引き吊らせ…



「違いますよ!」



斯々然々と事情を説明し天野達を追わないかと誘った。



「楽しそう~♪皆で行ってみよう~♪」



矢野は乗り気になり、真奈美に多田家の地図をコピーして貰うと、ジミーの運転で天野達を追った。



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