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解体屋 鉄治  作者: MiYA
12/25

… 猛獣・珍獣・大集合 … 冴木 猛 …

昔の話し …


そんなもん今更話して何になる…


胸糞が悪くなるだけだぜ…


まぁ、今日は良しとするか…



俺はガキの頃 …


ロクデナシの親父と…


泣くか従うかしか出来ねぇ母親と…


そんな二人の、愛ある家庭とやらで育てられた。



たまに帰って来ては、昼も夜も… 一升瓶片手に酒に溺れる親父…



母親に手をあげて金を(ムシリ)り取っては…何処かに消えちまう



ガキながら、正義感とやらが強かったんだろうな、母親殴りつけてる親父を止めようとしたら、今度は俺が伸びる迄殴られた…


強くなりてぇって思ってたな…


何時か親父を殺してやろうと思ってたな…


ガキの成長ってのは止まらないから、躰はデカくなるし反抗期ってのは来るし…


中学にもなりゃ、アル中の親父なんかに負けて無かったな …



クズは消えるのが… 世の為、人の為 …



消えてもらおうと思ってな、包丁で腹ぶっ刺してやったんだけどな、生きてたな…(笑)



躊躇った覚えは無いけどな、可笑しなもんだぜ… 世の中ってのはよ…



こんなんだからよ、更正の見込み無しで


俺は少年院行き…



出てからは会ってねぇから…


親が何処に居るのかも知らねぇな …


もう死んでんじゃねぇか?



それから、各地を転々として…



あるドヤ街で鉄虎と竜也に出逢った …


あぁ、鉄虎(テツトラ)は解るだろ?


竜也(タツヤ)ってのは名字は真木…


それで、俺が(タケル)だ …



猛獣・珍獣・大集合みたいだろ?(笑)




俺の人生の宝と言えば…


そうさな、鉄虎と竜也に逢えた事だな …


味気無い、ザラザラした砂を噛んでるみたいな人生が… 2人との出逢いでパッと華やかに一変した…



夢ってのを持てたんだ …



知り逢った当初なんて、毎日殴り合ってた


だけどよ、二人とも強ぇんだ!それにも況して懲りない!タフガイだな…



初めて面白い奴等を見つけた …


そう思った…



竜也は()しても伸しても、ギラギラした眼で俺を睨んでな …


あぁ、何時かコイツにヤられるな …


素直にそう思った…



鉄虎は鉄虎でしつこいんだ、真夜中に奇襲攻撃してくんだ…


夜行性だせアイツ…



俺の人生なんて、どっちにヤられても仕方ないな …



なんて思ってたら仲良くなってな…



三人で泥々になって働いて、互いに肩寄せて泣いて笑って … 歩いて来たな…



竜也は逝っちまったけどな …



本当に竜也の奴は馬鹿野郎だ …


現場で倒れる何日か前の真夜中に、電話掛けて来て



「冴木、俺、死ぬかも知れない…」



声震わせて、そう言うから…



「あん? 悪い女にでも手出したのか?それ とも闇金から金でも借りたか?どっちも任せろ何とかしてやる…」



「冴木 … それよ、どっちも死ぬじゃなくて()られるだろ? 危ねぇな~ 相変わらず … 何とかするって、お前っ、裏で何やってんだ? 死んでも死にきれねぇよ!危ねぇな 、悪い事すんなよ … 鉄虎に迷惑掛けるだろう ?」



竜也の奴、ショボクレ声出して心配そうに説教するからよ



「只のバイトだ!世の中には困ってる奴が多いんだ気にすんな… 所で何で死ぬんだよ …」



そしたら竜也の奴、黙っちまって …



あんまり黙ってるから



「おいっ寝てんのか?鉄虎みたいに奇襲掛けるぞ!」



「やめろよ、敵わねぇよ… アハハッ! 俺な 、先月から山通ってんだよ …」



真夜中に何の話ししてんだ?と思ったけど 、無下に出来なくてな



「山?山男になる気か?何しに行ってんだよ… バイトか埋めてんのか?」



「お前のバイトはヤバイね、危な過ぎるわ !何埋めたいんだよ!俺は修行に行ってんだよ!山伏の!」



竜也が山伏修行?何言ってんだろうなって思って



「そんな事して龍になって滝昇るのか?趣味に文句つける気はねぇけどよ …」



「昇らないよ!それより今な、冴木と鉄虎に贈り物しようと思ってな、頑張ってんだ楽しみにしててくれよ !」



嬉しそうに話してたから



「贈り物なら熊持って来てくれよ!ガァー !強ぇだろうな!」



「無理だっ!それより冴木… 会社と鉄虎を支えてくれよ… 頼む…冴木…」



そう言って電話切られてな…



変な奴だな…結局、何が言いたかったんだ ?最後の言葉… 遺言みてぇだし …


そう思っていたら…



本当に逝っちまったよ…



俺と鉄虎にイラタカ遺してな …



あの馬鹿!解ってたんだろう、てめぇが、もうすぐ死ぬって …


俺に電話迄して来て、言えねぇのかってんだ!糞ったれが!馬鹿野郎… 竜也の奴は筋金入りの馬鹿野郎だ!



鉄虎には言っていないが…


竜也の葬式、全部終わってから…


喪服着たまま街行って、そこいらのチンピラに喧嘩売って殴らせて貰ってな…


少しは心が落ちつくかと思ったのに全然駄目で 、また、そのチンピラが弱ぇんだよ!


1発殴ったらゴリッて歯折れるし、お前等ポ○中かってくらい骨脆(ホネモロ)、骨弱…



冷めちまって…


弱い者虐めみたいで嫌になってな… そのまま帰った…



真木が逝って49日の法要も済んだ頃 …


何でだろうな …


真木に逢えるような気がしてな…


俺達が出逢ったドヤ街に行ってみたんだ…



何か見覚えあるのが居るなと思ったら、鉄虎も来てたんだ … 同じ日にだ、驚いたな…


俺はストーカーみたいに隠れて、遠くから鉄虎の姿見てたら…


あいつ、薄汚れたモッズコート着てる若造と何か話してたんだ、何話してんのか気になって、鉄虎に気づかれないように近づいた。



「なぁ、兄ちゃんドヤ街が悪いって言ってんじゃねぇよ、俺もドヤ上がりだ、ガハハ !若くて活きのいいのが欲しいんだ、本気で仕事してみねぇか? どうだ?」



「うっせーな!若い奴なら他にもいんだろ 、話し掛けんな!」



「まぁまぁ、そう言わずに聴いてくれよ、 ハッキリ言うぜ、兄ちゃんな勿体ないって 、確り仕事覚えてよ、一人前になったっていいじゃねぇか、じゃ、名刺だけ渡しとく わ、兄ちゃんよ俺は嘘は嫌いだ、あんたなドヤには勿体ねぇんだ!」



俺は息が止まるかと思ったぜ …


その若造のギラついた目、その背格好…



俺達が知り逢った頃の


真木 竜也に瓜二つだ った…



鉄虎は絶対、この若造を連れて帰るだろうな…


そう思いながら俺は、黙ってドヤ街を離れたんだ …



角田 鉄治 … お前の事だ …


お前も珍獣の仲間入りだな …




冴木はふっと笑い、煙草に火をつけると流れる煙を見つめた …


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