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ポム  作者: 天野 うずめ
9/16

グルグル、早起き。

ある朝、グルグルと聞こえてくる謎の音で目が覚めた。

まだ夢現がハッキリしないまま、もそもそと身体を動かし、固くシャッターが閉じた目を無理やり開きながら音の発せられている方向に視線を移動させる。

辺りはまだ薄暗い。

しばらく視界がもやもやとしたままで、次第になんとか周囲を確認できるまでにはなると、そこには白い毛玉が転がっていることに気が付いた。

「なんだポムか……まだ四時じゃないか……。いったいこんな時間にどうしたんだ」

毛玉は未だにグルグルと謎の音を発しながら、どうやら窓から外を覗いているようだった。


コイツ、うなってるのか?

窓の外に何か気に入らないものでも見つけたのだろうか。

「てかポム、早起きだねぇ」

やっとこさ頭がすっきりしてきて、僕は布団を抜け出してポムのもとまでずりずりと這っていった。

「ふー、朝はまだ寒いねー。何かあったのかい、ポム?」

ポムは返事をせずに、しきりに外の様子を気にしながらグルグルと音を発した。

一体何を見ているのだろうかと、僕も窓の外に視線をやると、

「……すずめ……だよ……ね?」

数羽、集まってアパートのベランダで何かをついばんでいる。


別段変わった光景でもない。むしろ、朝早く起きればいつでも見る事ができる至って普通の光景だ。

一体なにがポムの癇に障ってこんなうなり声を発しないといけない事態になってしまったのか。

ポムは変わらずグルグルとうなっている。

「ポムー、そんなしつこくグルグルやってたらすずめさんたちも気分が悪くなるよ。折角の朝ご飯を……ってふぁっ!?」

あまりにグルグル行ってたので注意をしようとポムの方を見て、僕は数秒の間何を行っていいか分からずにその場に凍り付いてしまった。


「え、いや……あの、ポムさん?」

グルグル。

「怒ってるわけじゃ……ないん、です、か……?」

グルグル。

「僕てっきりポムさんが何か気に入らないことがあったからうなっている物とばかり……」

グルグル。

「なぜだ……なぜなんだ……」

あまりにもそのギャップが酷すぎやしないだろうか。

こんな朝早く起こされて、何かあったのならまだしもだ。

鳥を眺めるだけならもうちょっとお静かに願いたいものだ。

何も憤慨した猫よろしく喉を鳴らしまくらなくたっていいではないか。


覗き込んだポムの顔は、こちらが呆れるほど気の抜けた、だらしのない満面の笑みで満たされていたのだった。

まるでそのまま溶けていくのかというほどに、幸せでいっぱいの毛玉はグルグルとうなり声をあげる。


「ベランダバードウォッチングとかどんな趣味だよー……」

そして僕は一気に力が抜けてそのままへたり込んでしまった。


動けない一人と、謎の声を発しながらベランダを覗き込む真っ白な謎の生物。その視線の先には、集会所よろしく集まるすずめの大群。

それはある種、とても平和な時間であった。


ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

早起きは三文の徳、とはいいますが、

二度寝を味わうためだけに早起きをして、そこからまた眠りにつく僕は三文を無下にしているように思えて仕方ありません。


次回も是非、お読み下されば幸いです。

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