日星青奈は特異体質
一
私、日星青奈は、何処にでもいる普通の高校二年生。
だが私は、昔から少しばかり他の人と違っていた。いや、少しばかりというのは謙遜が過ぎるかもしれない。実を言うと、私は脳のリミッターを自在に解除し、いわゆる〈火事場の馬鹿力〉というやつをいつでも自由に引き出すことができるという、天からのギフトを持っている。
人間の筋肉は、本来持っている全ての力は普段は使われていないらしい。全力で筋肉を収縮させると、自分自身の骨や筋肉を破壊してしまうから、なのだとか。しかし、私の体は生まれつきその出力に耐えうる異常なほどの肉体強度を備えていた。リミッターを外したところで、筋繊維の一本すら断裂することはない。
さらに欲張りな事だが、私にはもうひとつ、これより更にすごい特異な体質がある。生まれつき、筋密度が常人の四十八倍らしいのだ。ミオスタチン関連筋肉肥大という遺伝子疾患にも関係しているらしく、筋肉生成ホルモンのミオスタチン生成量が少ないとかで、何もしていなくても筋肉がどんどんと成長していくという、超人とも呼べる特異体質である。
素手でコンクリートを砕くことも容易いし、頑丈な体のお陰で怪我とは無縁。例え猛スピードのダンプカーに正面から轢かれようとも、私が無傷でダンプカーの方が大破する自信がある。なので、リミッターを解除していない平常時でさえ、常人の何倍もの筋力があるというとんでもない超スペックを持っているのだ。
ただ、見た目は華奢で、ゴリゴリのマッチョというわけではない。筋肉、腱、骨が極限まで高密度に圧縮されている為、幸い見た目は普通の女子高生と変わりない。ただ、この体質故に体重は百キロ以上ある。百七十七センチと女の平均よりずっと高い身長もあるが、それを加味しても異常な体重だろう。なので、私の体質を知った周りの人や学校の友達からは、大抵とんでもなく驚かれる。
普段は平和に過ごしているが、超人的な体質を維持し、さらに成長を続ける筋肉のせいで異常に腹が減るため、めちゃくちゃ食べる。しかしどれだけ食べても太ることはなく全て筋肉の成長と維持のエネルギーになるため、これはこれで好きなだけたらふく美味しいものを食べられるので悪くはない。
女の私でさえこれなのだから、もし男で同じ体質だったらと想像するだけで恐ろしい。一体どれほどの筋骨隆々とした怪物になっていたのか……考えないでおくことにする。




