第47話 「大和との訓練」
めっっっちゃ久しぶりの更新です、大変お待たせいたしました
大和聡一特務一佐との衝撃的な出会いから、一週間が過ぎていた。
夏休みに入った俺たちは、毎日のように第四支部へと通っている。
いや・・・通わされていた。
『脇が甘いッ!振りが大きいッ!
ほら足を止めるな、そんなのではすぐに撃墜されるぞ!』
回線を通じてコクピットに響く大和の声。
容赦ない連撃になすすべなく翻弄され、振り回される。
重い一撃を受け止めることで精一杯な俺は、とうとう揺らいだ瞬間を付かれて大きく吹き飛ばされた。
「うわぁっ!?痛つつつ・・・」
『やれやれ・・進歩が無いなァ、木崎』
大和の呆れたような声を聞きながら、俺は思わず呻いた。
こんなん無理ゲー、ですッ!!
―――瞬殺された模擬戦の翌日。
第四支部にて朝から待ち受けていた大和は、俺に向かって堂々と宣言した。
「お前を“最高”に鍛え上げるぞ!」
「・・・は?」
思わずそう聞き返した俺に、大和はもう一度同じ言葉を繰り返す。
「今日から俺がお前を鍛えるといったんだ。“最高”にな!」
ドヤァ、と文字が見えそうな表情の大和。
要はこれから彼が修行をつけてくれるということらしい。
なぜドヤ顔なのかはさっぱりわからないが・・・。
「あ、あの・・・」
「さあ、さっそく始めるぞ。ついてこい!」
問答無用だった。
あっけにとられる俺を置いて、大和はズンズンと格納庫へ歩き去ってしまう。
仕方なく、俺も格納庫に向かうことにした。
そこからが地獄の始まりだった―――
九十二式の衝撃吸収機構がしっかり働いてくれたおかげか、そこまで体にダメージは無い。
ちらっと計器やディスプレイを確認してみたが、機体にも特に問題はなく、まだまだ性能をしっかり発揮できる状態だ。
つまり、訓練続行か・・・
ここ数日はこの繰り返しが続いている。
朝から晩までずっと実機を使用しての模擬戦。
毎日毎日毎日毎日毎日、ず~~~っと同じ模擬戦だ。
もういい加減疲れたわ。
相変わらず遠慮無い大和の攻撃に呻きと悪態を吐き出す。
「くそっ、思いっきり蹴っ飛ばしやがって……」
『聞こえてるぞぉ~?』
あ、しまった。
『その調子じゃまだまだ大丈夫そうだなぁオイ』
「じょ、ジョーク!軽いジョークだから!」
『さっさと立てっ!』
「ちくしょぉぉぉっ!」
最初こそ彼に対して敬語を使っていたが、日が経つにつれそれが必要のないことだと気が付いた。
今じゃ面と向かって怒鳴りあいまでするようになってしまった。俺も変わっちまったな・・・
けど、それも仕方のないことなのだ。
なにせやることなすこと破天荒、この人に普通は通用しない。
現に今も・・・
『だからー・・・何度言ったらわかんだ!
相手の次の行動を全部先回りして潰すんだよッ!』
「んなことできるかッ!少年漫画の世界じゃねんだぞッ!」
こんな頭のおかしいことを言っていた。
そんなの無茶に決まってるだろ。
―――相手の行動を予測する。
勝負の世界ではよく聞く言葉だ。
これだけなら一見簡単そうにも聞こえるだろう。実際最初は俺もそう思っていた。
でも彼の……いや、こいつの場合は意味合いが違う。
『はぁ……なんでできねえんだよ、たかが未来を先読みする程度のことなんて』
「いやできるわけねぇだろ!!」
周囲の状況や状態はともかく、自分や相手のリズム、考え、行動に至るまで全てを把握する。
それは「次はこうなりそう」という確立を求めるではなく、「次はこうなる」という確定を見つけ出す。
大和が求めているのはもはや未来予知の領域だ。本人もそう言ってるし。
もう一度言おう。
無茶に決まってんだろ!
世の中物語のようにうまくはいかないんだ。
おれにはプロ棋士のような洞察力はないし、戦闘中にじっくり考える時間も余裕もない。
ただでさえIGの操縦には極度の集中が必要なんだ。
顔も見えない相手の思考を読み解くなんて無茶苦茶ができるわけないだろ。
アホかこいつ。
『お前今「アホかこいつ」とか思っただろ』
「・・・思ってない」
なぜバレたし。
『そうかそうか・・・時間延長な』
「いやだぁぁぁぁーーー!!!」
鬼かあんたは!?
俺の魂の籠った絶叫を聞いてなお涼し気な表情の大和は、軽く俺を無視して再び構えをとった。
『さっ、続きやるぞ~』
「くそっ・・・いつかぜってぇぶっ飛ばしてやる・・・」
しょうがなく俺も大和へと向き直った。
‐‐‐‐‐‐
「だぁーーーーっ、疲れたぁぁぁ!!」
地獄のような大和の特訓メニュー延長verをやっと終えた俺は、帰ってくるなりそのままソファーへと飛び込んだ。
「お疲れさま、なんか飲む?」
「あー、スポドリちょうだい」
「はいはい」
先に帰宅していた四ノ宮が、隣に腰掛けつつ冷えたスポドリのボトルを渡してくれる。
天使のような四ノ宮がいるのも相まって、疲れ切った体に染み込むようだ。
あー癒されるんじゃー・・・
「今日も実機訓練?」
「そ。一日中ずっとコクピットのなかだぜ。俺、あれは訓練じゃなくて拷問だと思うんだ」
「あははっ、わかるわその気持ち」
「だろ?」
やっぱりというべきか。
四ノ宮も前にあの鬼畜野郎に鍛えられていたらしい。
少しだらりとしながら雑談に興じる。
この時間が俺にとって貴重な清涼剤になっている。じゃなければとっくにへたばっていただろう。
「あ、そろそろご飯準備しなくちゃ。木崎は早く着替えてきたら?」
「そうだな、着替えてくるよ」
「すぐできるからねー」
四ノ宮がキッチンに向かい、俺は服を緩めつつ二階の自室へとあがった。
その後は四ノ宮の美味い晩飯を頂き、ふろに入った後長期休暇の課題にいそしむ。
そういやもう夏休みなんだな。
拓真とかどうしてるかなー。遊び行きたいなぁ。しばらくは無理だろうけど。
そんなことをぼんやり考えながら今日の分の課題を済ませていたら、時間は日をまたぎそうになっていた。
そろそろ寝ないと明日の訓練に支障が出そうだ。向かいに座る四ノ宮も勉強を切り上げるようで、どちらともなしに席をたつ。
「じゃおやすみ」
「おう、おやすみ」
四ノ宮の眠たげな表情が扉の向こうに消え、俺も自室のドアを閉める。
ふぅ、これで明日も頑張れそうだ。
次話は多分三日後くらいに投稿すると思います
総合評価Cランクの英雄のほうもよろしくお願いします!




