第44話 「破天荒な出会い」
大変お待たせいたしました
GRAND SELECTOR編、開幕です
なんで、俺はこんなことになっているのだろう……
沈黙したコクピットの中、未だ衝撃から覚めないままぼんやりと思う。
画面や計器は完全にブラックアウトし、外の様子は一切わからない。
操縦桿をいろいろ動かしてみるも、機体からの反応は返ってこなかった。
どうやらシステムが停止してしまっているようだ。
「痛っ…!くそっ」
ひとまず外に出ようと座席から上体を起こした途端、首筋を鈍痛が走った。
どこかで頭を打ったらしい。
視界も若干ぼやけていて焦点が定まらない。
それに頭部だけでなく、全身がだるく重かった。
無理に動くには少々厳しい状態だ。
仕方なく俺は、上半身を操縦席へとあずける。
「……どうしたもんかな、これは」
そう呟いてみるも、なにか打開策が生まれるわけではない。
しかし、かといってぼやく以外にできることもなかった。
視界はほぼ真っ暗で、耳を澄ましてみるも聞こえるのはリアクターのエンジン音のみ。
息苦しく無いということは、空調類に異常はないということだろうか。
システムを再起動させようといろいろ試してみたが、画面は真っ黒なままだった。
ハッチをこじ開けようかとも思ったが、コクピットハッチは気密がとても高いため人力では到底開かないし、第一今の俺の状態では力を込めることすら難しいだろう。
八方ふさがりだ。今は救助を待つほかない。
いざというときのため少しでも体を休めておこうと、俺は目を閉じた。
「ふぅ………」
深く息を吐き出しながら、全身の力を抜いた。
そして思考が一周して最初に戻ってくる。
そもそもどうしてこんなことになったのか。
時は二時間ほど前に遡る。
ーーーーーー
ーーー
ー
学校から支部へと駆け付け、ブリーフィングルームへとやってきた俺たちの目の前に飛び込んできたのは、死屍累々と倒れ伏す染谷たちだった。
「染谷隊長っ!?」
「ど、どうしたんですか!!」
あわてて駆け寄ると、染谷が呻きながら目を開ける。
「う、うう……」
「大丈夫ですか隊長!」
「何があったんですか!?」
俺と四ノ宮の呼びかけに、染谷が起き上がろうとする。
よかった、意識はあるようだ。
と、思ったが……
「あ、あいつが……早く、逃げ……」
目の焦点が定まらない染谷が、うなされたようにもがく。
あまり大丈夫な様子ではなかった。
沓城や佐渡も似たような状態だ。
早く医務室へ連れて行ったほうがよさそうだ。
全員の様子を確認している間も、染谷は呻き続けている。
あえぐように漏れ出た声は、しかし途中で遮られた。
「情けないな貴之!もうギブアップか?」
そう……見慣れぬ機体の前で仁王立ちした男によって。
……誰?
「あ、あなたは……!」
「四ノ宮……?」
その姿をとらえた途端、突如四ノ宮は目を大きく見開き、かすかに震えだした。
心なしか青ざめているように見える。
彼女の白くきれいな首筋を、小さな汗が伝っていた。
あの四ノ宮が……怯えてる?
今まで見たことのない四ノ宮の様子に戸惑う俺。
しかしそんな俺を置き去りにして、事態は進んでいった。
「ん?……おお、四ノ宮か!」
「げっ……!」
男がこちらに気が付き、声をかけてきた。
それに、あからさまに嫌そうな反応をする四ノ宮。
今「げっ」て言ったぞ、「げっ」って……。
ん……?
待てよ、あの階級章は……特務一佐!?
ということは、じょ、上官じゃないか!
「久しぶりじゃないか四ノ宮!元気してたか?」
「たった今元気じゃなくなりました……」
「そうかそうか!じゃあ、どれほど成長したか試してやろう!」
「この流れでどうしてそうなるんですか!?
絶対に嫌ですよ!」
「遠慮するなよ。レグルスナンバー同士、立場は皆同じだろ?」
「全く違いますよ!?私は今特務二尉なんですからね!」
「たかが三階級じゃないか」
「殉職しても届きませんよ!」
飄々とした男に対し、思わず四ノ宮が声を荒げている。
常にどこか余裕ある印象の四ノ宮がツッコミをしているなんて……。
なんともレアな光景だ。
……って、さらっと流してたけど、今この人「レグルスナンバー同士」って言わなかったか!?
マジで!?
この人、最強の称号持ちなのか。
てことは……めちゃくちゃヤバい人なんじゃ……!
だが、驚く暇を与えてくれずに、その男は四ノ宮を引っ張っていってしまう。
ちらりと目が合った瞬間、四ノ宮が救いを求める目をしていたが、あっけにとられて止められなかった。
割とガチな表情だったけど……
ごめん、四ノ宮……
――30分後……――
「うええ……」
ぐったりとした四ノ宮が帰ってきた。
「大丈夫か四ノ宮!」
「う、うん……なんとか…」
傍らに寄り添い、フラフラとしている彼女の体を支えてやる。
だいぶ弱っているようだ。
30分の間に一体なにがあったのだろう。
……いや、大体見当は付いていた。
「はっはっは!まだまだだなぁ、四ノ宮!」
その時、ブリーフィングルームへと男が戻ってきた。
予想どうりIGのパイロットスーツを着ている。
「ほんと……勘弁してくださいよ」
「いやーすまんすまん、ついはりきっちまったよ。はっはっはっ!」
がっしりとした肩を揺らし、レグルス持ちの男は豪快に笑う。
「……なぁ、四ノ宮」
「ん、どうしたの?」
おずおずと、隣の四ノ宮に小声で話しかける。
今更なんだが……
「この人…誰?」
「えっ!?」
そう訊ねると、四ノ宮は目を見開き驚く素振りをする。
その反応を見るに、やはり名の通った人なのだろうか。
「こいつ……じゃない、この人のこと知らないの?」
「うん、知らない」
「ええ……?
ASCFの隊員なら誰でも知って……あ、そっか。
当たり前過ぎて誰も言わなかったんだ……」
そこまで有名なのか。
無知をさらけ出しているようでけっこう恥ずかしい。
これが田舎者の心境というやつか。
あと上官をこいつ呼ばわりは流石にダメだと思います。
「この人はね……」
「ん?四ノ宮、そこにいるはどいつだ?
見ない顔だが…」
「なんであなたはいちいち人の台詞に合わせて喋りだすの!
まだ私が話してる途中でしょ!?」
マイペースな男にとうとう四ノ宮が敬語を使うのをやめた。
そんな四ノ宮を面白がるように、男はまた剛毅に笑う。
なんというか……のんびりとして掴み所の無い人だ。
「…今あなたのことを話してたんですよ」
「おれのことを?なんで?」
「はぁ……まったくこの人は……。
まぁちょうどいいし、あなたにも彼のことを紹介しておきます。
彼が新しいヴァイツのパイロット、木崎優真特務一尉ですよ」
「ほう……?」
一瞬、男の目の奥が鋭く光ったような気がした。
だが、確かめる間もなくまた先程までの表情に戻ってしまう。
「き、木崎優真です。よろしくお願いします」
「…そうか。木崎優真、ね……」
若干緊張して声が上擦ってしまった。
「木崎、この人は……」
「おう!おれは大和聡一だ!
また四ノ宮を遮りながら、男──大和はそう名乗ると再び剛毅に笑った。
これが、後の偉大なる師匠との出逢いだった。
次回作準備のため、だいぶ投稿間隔が開くと思います……あ、いつも通りか(笑)
一応次回作が始まってもエタるつもりはないのでご安心ください




