表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GUARDIANS・IN・IRON   作者: 寺野深一
第二章 波乱到来編
41/51

第40話 「My style」

めちゃくちゃお待たせいたしました

第40話、おとどけいます

 





「だぁあああああ!!」


 烈迫の雄叫びを上げながら、俺は細い路地から大通りへと飛び出した。

 開ける視界、明るくなる景色。

 そして……エネミス。


 こちらに無防備な背中を晒した獲物は、見失った()の姿を探し明後日の方角を見ている。

 俺が見えていない敵など、ただの的だ。

 エネミスの無防備な背中に向けて〈ボフォースMk.6〉の引き金を引く。


 彼我の距離は僅か80mほど。

 俺の尺度に換算すると、5mちょっとの距離でしかない。

 外すことなど……ありえない。


 千輪菊花火が咲き乱れたかのような激しい撃発音が灰色の都市に響き渡り、()()の銃口から吐き出された57mm徹甲弾が標的へと迫った。


 ──着弾。


 マズルフラッシュの煌めきと共に、炸裂した鉛弾(なまりだま)が無数の火花を散らす。

 分間1200発の銃撃は灰褐色の背中に確かな威力を与え、その上体を大きく蹌踉めかせた。


 ……が、俺はその効果を確認せずに、再び路地へと飛び込んだ。

 素早く且つ慎重に、細い路上を駆け抜ける。

 IG一機分の幅しかない道を走るのは、なかなかに神経を使うことだ。


 しかし……同時にそれが、心地よくもある。

 自分の背丈の何倍もある鋼鉄の巨人を、自在に操り走り回るのだ。

 繊細な機械を操る緊張感。

 見慣れた景色を上から見下ろす爽快感。

 そのスリルが俺には堪らない。

 IGに乗っている時が、一番俺を緊迫(ワクワク)させる。

 操縦桿を握っているときが、一番俺を高揚(ドキドキ)させる。

 操縦席(コクピットシート)に座っている間、どうしようもなく俺の気分は昂ぶり続けるのだ。

 プラスにも、マイナスにも。

 どんなに死の恐怖に当てられても、またこの席に座ってしまうのは、やはり俺も変態だということなのだろうか。


 ……これでは文研部を笑えないな。


 そう思った途端、口元が自然に吊り上がる。

 アスファルトから跳ね返る微振動が、アナログ計器をカタカタと鳴らした。




「あーーーっ……堪んねぇぇ!!」





 ーーーーーー

 ーーー

 ー





 ラファエルとの出逢いの後、俺の気分はどうしようもなく高揚していた。

 悩みが解けた途端、痛烈な開放感が俺を包み続けている。

 IGに乗りたくて仕方が無い。

 学校にいるときも、家で寛いでいるときも。

 トイレに入っているときですら、俺の脳内にはIGのことしか無かった。


 懐かしい感覚だ。

 ()()()()に乗っていたころを思い出す。

 幼かった俺は当時、IGに乗ることが楽しくて仕方なかった。

 いろいろなことをやった。

 全速力で走り回ったり、どこまで高く跳べるのか試してみたり、はたまた戦闘ごっこをしてみたり。

 無邪気な発想で機体の力を限界まで引きだそうとしたのだ。


 今の俺の心情は、その頃の自分に近い。 


 新しい発想がどんどん湧き出してくる。

 思考の海の中で、いろんな俺がエネミスと戦った。

 新たな戦法を思いつくたび、支部のシミュレーターでそれを試し、効果が無いなら改善を、有効でもさらに改良を重ねることを繰り返した。



 そうして数日が過ぎ……再び俺の元に出撃命令が下った。





 ーーー





 九十二式のコクピットの中。

 出撃待機中の俺は、MFDで機体状態の確認をしている。


「……メタ運動野パラメータの更新、完了。

 流体信号回路集積群の作動確認、正常。

 各種センサーの誤差検出、異常なし……っと」


 チェック項目をスクロールしながら確認していく。

 そうは言っても、この作業は基本的にただの出撃前のルーティーンだ。

 機体が万全であることを確かめて、高ぶる気分を少しでも落ち着けるためにやっているに過ぎない。

 機体の整備班が手を抜くことなんて有り得ないし、そもそも手を抜く様な人は〈ASCF〉にはいないからな。


 MFDをスクロールしていくと、注意欄に気になる報告を見つけた。


「ん……?左人差し指の駆動状態に難有り……?」


 試しにそこだけ関節ロックを解除し、駆動させてみる。

 すると、確かに他の指に比べて反応が固かった。



「日向さん、ちょっといいですか?」

「おう、なんだ」

「この左人差し指なんですけど……」

「ああ、それか……」


 すると、日向さんは大きく顔を顰めて事情を話し出す。


「関節パーツの備品が少なくなってきたから本部の方に発注してたんだがな……。

 向こうの手違いで別のもんが送られてきたんだ。

 一応右人差し指のパーツを代用しておいたが、やっぱり違和感は残っちまうか……」

「そうか……」


 よくあること、というわけではない。

 しかし、それでも人間の手で行われることだ。

 どうしてもそういった不具合は起こってしまう。

 今回は、たまたまそのタイミングが悪かったに過ぎない。


「……もしアレなら、支部長の方に残れるように言っておくか?」

「……いや、大丈夫。

 この程度なら、なんとかなるレベルだ」

「お前がそう言うなら……。

 けど、今回の出撃は例のやつの試験も兼ねてるんだからな。

 ……くれぐれも無茶はするなよ」

「分かってるさ」


 そういうと日向さんは顔を引っ込め、自分の作業へと戻っていった。

 メカニックマンは忙しいのだ。


 俺は再びMFDに視線を戻し、確認作業を再開する。

 キーボードをリズムよく叩きながら、機体状態を完全に把握しておく。

 自らの命を預ける機体だ。

 俺も確認は決して怠ってはならない。


 …そして、出撃(その時)はやってくる。


『第六小隊各位に通達します。

 第二支部より救援要請が入りました』


 ……来たッ!


『場所は東京都杉並地区。

 現在第十二機甲小隊が対応していますが、苦戦中とのこと。

 確認されているエネミスは…九体です』

『九体か…。多いな』

『そうだねー。

 この状況で一体に戦力を集中させるのは無理かなー』


 さっそく作戦前のミーティングが始まる。

 武装受け取り所に向かいつつ、予想される戦況や窮地を挙げて事前に対策を練っておくのだ。


配置(ポジショニング)はどうなります?』

『うーむ…いつも通りのほうがいいだろう』

『互いの援護は?』

『今回は厳しいな。恐らく個人で戦うことになると思う』

『一応援護射撃はやるッスけど、あんま頼らないでほしいッス』


 つまり頼りになるのは自分だけ、ということか。

 一対一、運が悪ければ二対一となる状況下で、援護もなし。

 己の強さのみが道を切り開く。


 ……好都合じゃないか。


『うーん……』


 …しかし、一人だけ渋っている隊員がいる。


『……私は二人一組(バディ)を組んだ方がいいと思います』

「……四ノ宮?」


 そう、彼女だ。

 中央画面の端には、考え込んだ様子の四ノ宮の顔が映し出されている。


『ほう、理由は?』

『戦力分散して各個撃破するよりも確実だからです。

 効率は悪いですけど、安全性は上がるし状況変化にも対応しやすいと思います』

『……一理あるな』


 四ノ宮の返答に、染谷が納得したような表情を見せた。


『確かに…』

『…そっちのほうがよさそうッスね』


 沓城や佐渡も同じような表情をしている。

 確かに、散会して戦力を分散するよりも、そちらのほうが確実だろう。

 事実、俺は一人で戦って負けているわけだし……


 …けど――


「けど…そしたら一人だけ余るんじゃないか?」


 われらが第六小隊の構成員は全部で五人。

 どうしても割り切ることができない。

 3人と2人に分ければ極端に効率が悪くなるし、そもそも佐渡は後方支援(スナイパー)だ。

 機動性は良くないし、護衛する人も必須だ。

 すると、必然的に一人だけ余ることになるわけで…


『そ、それなら私が…』

『いや、俺が行こう』

『「隊長!?」』


 四ノ宮を遮って名乗り上げたのは、なんと隊長の染谷だった。


『前回のことがある以上木崎を一人にはできないし、まず高機動型のお前たちに俺がついていけない。

 それに……』


 そう言って染谷はいったん言葉を区切り、


『後ろから確実に守ってくれるやつがいるからな。

 そうだろ?直樹』

『隊長……!

 …ッス!隊長の背中はおれがばっちり守るッスよ!』


 そんな漢気溢れる隊長に、佐渡が頼もしく応じる。

 素晴らしい信頼関係だ。

 長年同じ部隊で戦ってきた賜物だろう。

 こんな二人みたいな関係は…正直羨ましい。

 相棒みたいな人が俺も欲しいな……。


 ――え、四ノ宮?

 馬鹿言っちゃいけないよ、実力が釣り合わないだろ。

 彼女とはなんというか……師弟関係みたいなものだ。

 一方的に寄りかかっているにすぎない。

 俺はお互いに背中を任せられる、そんな関係が欲しいのだ。


 ……。


 ……いや、ここで悩んでもしょうがない!

 今俺が考えるべきは、これからの戦いについてだ!


 気持ちを切り替えるようにパンパンッと頬をはたき、画面を見据える。


『決まり、みたいだね。

 それじゃあいこうよ。

『ああ。第六小隊、出撃だ!』

「『『『おう!』』』」




 ーーーーーー

 ーーー

 ー




『ベガ4より各位へ。現状を報告せよ』


 閑散とした大通りを警戒しながら進んでいた時、染谷から通信が入った。

 一切警戒を解くことなく、その通信にも注意を向ける。


『ベガ6よりベガ4。』

 現在エリアc3にて、アルタイル6と共に警戒索敵中。

 周辺に敵影及びレーダー反応は無し。どうぞ』

『こちらベガ4、了解した。

 引き続き警戒を行ってくれ』

『ベガ6、了解』


 通信によれば、佐渡と沓城は現在右斜め後方で照準器を覗いているようだ。

 援護射撃を主とする佐渡は、愛銃のWvS.60〈ラインメタル〉140mm滑腔狙撃砲に取り付けられている高倍率スコープを用いて、標的を探るのだ。

 沓城の方は、佐渡の護衛がメインのため、周辺の索敵が主となる。


「レグルス9よりベガ4。

 現在レグルス8とともに、エリアF7を南東へ直進中。

 周辺に敵影無し。

 対処目標は、広域索敵システムの反応α2を追っています。どうぞ』

『ベガ4、了解した。

 標的を補足次第、各自で戦闘行動をとれ。

 こちらはα4を追う』

『レグルス9了解、ご武運を』

『そちらもな』


 染谷の台詞とともに通信が切られ、スピーカーから漏れ出す音が、機体が風をかき分ける音に変わる。

 時速100キロで移り変わる景色が、画面を流れていく。


『……そういえば木崎。

 その装備はどうしたの?』


 個人回線を通じて、四ノ宮が話しかけてきた。


「ふふん、これは俺の秘密兵器さ!」

『ウザい、早く答えて』

「ごめんなさい……」


 俺の返答は、四ノ宮に冷たく切り捨てられた。

 真顔だった。


 なんだよ、ちょっとふざけただけなのに……。


「過去の戦闘記録から導きだした、俺の新しい武器編成だよ」

『そういうことね。

 珍しい組み合わせだったから』


 確かに、日向さんもこんな注文をするヤツは俺が初めてだといっていた。

 普通は、主武装+シールド+補助武装、というスタンダードな構成を変えることは無いらしい。


『その肩のでっかいやつもそうなの?』

「そうだよ」

『……動きにくくない?』

「そりゃ四ノ宮はもっとデカいの(アマテラス)を使ってるからな……。

 俺は剣を振り回すタイプじゃないから大丈夫なんだよ」


 ……そう、今までの戦闘から気付いたこと。

 それは、俺が剣を使うのに慣れていない、ということだ。


 これまではヴァイツの膂力と、アストレアというバカみたいに威力のある剣でゴリ押ししていたからなんとかなっていた。

 ゲーム初心者でも、当てれば勝ちというチート装備があれば、ある程度のランクまでは行けるのと同じことだ。

 …まぁ、それでも本当の実力者には敵わないのだが。


 それはさておき……問題はそのチート装備(ヴァイツ)が今は使えないということだ。

 ただでさえ性能面において九十二式はエネミスに後れを取っている。

 エネミスの機動性や反応速度は、ヴァイツにこそ及ばないが、九十二式よりは断然速いのだ。

 当然、接近戦では分が悪い。

 その上パイロットが近接戦に不慣れとなれば……その結果は前回の敗北が示している。


『じゃあ、最近ずっとシュミレーターを陣取ってたのは……』

「ああ、これを考え出すためだ」


 俺はずっと、正攻法で勝とうとしていた。

 真正面から敵をねじ伏せる、そんな戦い方で。


 でも、今の実力ではどうしたって無理がある。


『そっか…。

 ならそれが、木崎が見つけた答え(戦い方)なのね』

「そうだ――」


 だから、考え方の転換だ。


 接近戦では火力が足りず、能力も劣っている。

 かといって距離をとれば、銃撃が翼に阻まれて十分にその威力を伝えることができない。


 なら、()()()()()()()()()()()



 ニヤリと笑い、俺は四ノ宮に言い放った。



「これが……俺の戦い方(MY STYLE)だ!!」




 ――そして、戦いが始まる。




ずいぶん久しぶりな投稿となってしまいました

お待たせして申し訳ない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ