第20話 「定例会議」
第20話、お届けします
今回は1話だったものを二分割しました
なので短めです
「それではこれより、第四支部定例会議を始める」
場所は第四支部の会議室。
幾つもの長机が置かれた部屋には、総勢50名ほどの基地の主要人物が集まっていた。
支部では、定期的に総合的な報告会議室が行われる。
月に一度こうして集まり、各部署での状況を報告して細かい予算などを決めるのだ。
基地内のそれぞれの部署の代表たちが、質素な会議室にずらりとならんでいる。
その中には、〔ヴァイツ〕整備班班長の日向さんや、他の小隊の隊長など、見知った顔も多い。
だが、通信室要員や情報部の人達はほとんど判らなかった。
というより初対面だ。
彼らは俺と四ノ宮が配属された日の歓迎会にいなかったから。
「各部署、報告を」
会議を取り仕切っているのは支部長の在原だ。
さほど大きくないのに良く通る声だ。
余計な前置きは一切無い。
効率的で円滑な基地運営をするためには、余計な台詞など要らないのだろう。
在原を頂点として、時計回りに報告がされていく。
通信部、情報部、財務部……
淡々と簡潔的な説明がされ、円滑に会議が進んでいく。
報告だけならばすぐに終わるからだ。
「……というわけで、備品部からはIGの装備関連、主に〔ヴァイツ〕関連の武装を優先的に回してもらうように、本部への要求をお願いしたい。
現在の在庫状況では、そのうち〔ヴァイツ〕の特性を活かせなくなるでしょう。
以上です」
「了解した。
本部の方には私から要求しておこう。
では次、IG部隊の小隊各位からの報告を聞こう」
主力実動部隊であるIG各小隊は、他とは少し異なる報告をする。
「第11陸戦機甲師団所属・第五十二小隊です。
今月の戦果と損害は………」
IG部隊では、月の実績を報告するのだ。
毎回任務の後にはレポートを作成するのだが、これを総合して本部に提出される。
この成績が良い者には昇級が待っているわけだ。
これは給料に直結するため、皆とても真面目にやる。
大抵いつもふざけている佐渡も、レポートの時だけは静かだ。
各部隊の隊長が粛々と報告をしていき、次は俺達第六小隊の番となった。
染谷が起立し、手にした端末を見ながら報告する。
「……我が小隊の、今月の出撃回数は11、撃破数合計は46です」
染谷がそう言った途端、会議室にざわめきが広がった。
それもそうだ。
彼は撃退数では無く、撃破数が46と言ったのだから。
普通は大体撃退数が20前後、撃破数は二桁に行くか行かないかといったくらいだ。
これは支部の中でも抜きん出た数値だ。
この数値は、俺と四ノ宮が小隊に加名し、攻撃戦力が増強したからともいえる。
……だが、俺はこれを素直に喜べない。
なぜなら……
「損害は、〔ヴァイツ〕の肩駆動部の完全破壊。
現在本部技術室へ、修繕のために機体を移送しています」
この戦績に泥を塗ったのも、また俺なのだから。
会議室の温度が一気に冷える。
染谷の後ろに控えていた俺は思わず俯いた。
俺が今晒されているであろう、先程とは異なる皆の驚異の視線。
俺は、目線をあげることがどうしても出来なかった。
「―報告は以上です」
やがて、染谷の報告が終わる。
彼が座るのに合わせて、俺も着席する。
会議室は相変わらず静まり返っている。
それはそうだろう。
期待の新星が一転、調子に乗って大事な試作機を壊したクソ野郎になったのだから。
いや、今じゃ期待されていたことすら疑わしい。
悔しさを通り越して、俺は恥ずかしかった。
そこから先は良く覚えていない。
他の部署や部隊の報告が、右から左に抜けていった。
俺は完全に、あの白けた空気に打ちのめされていた。
気が付けば、定例会議は終わっていた。
その間俺はずっと、俯いたままだった。
ーーーーーー
ーーー
ー
「木崎、何見てるの?」
会議の後、ブリーフィングルームでモニター端末に向かっていた俺に四ノ宮が尋ねてきた。
「あの黒い《エネミス》との戦闘記録を見てる」
俺は今、ヴァイツや第六小隊の九十二式のバトルレコーダーに記録されていた、あの《エネミス》の映像を見ていた。
小隊のためにも、俺はもう奴に負けるわけにはいかない。
たとえ俺が九十一式に乗っていたとしても、奴を倒せるようになる。
意識が覚醒した後、俺はそう決めた。
なによりも、俺は心に刻んだあの四ノ宮の言葉を、二度と無下にしないと固く誓ったのだ。
「対策を考えてるのね、私もいい?」
「いいよ」
そういって隣を勧めると、四ノ宮はそこに座り、備え付けのモニター端末を操作し始める。
さりげなく近くを勧めたのには、別に他意は無い。
話し合うのに近い方が良いからだ。
あの任務の前であれば、内心大はしゃぎするところだが、生憎今はそんな気分になれなかった。
……だが、世の中には不可抗力というものがある。
まぁ、その時に漂ってくるわけだ。
その……女子特有の甘い香りというやつが。
こればかりはしょうが無い。
元気だろうが萎えていようが、俺は健全な男子高校生なのだ。
身体が勝手に反応してしまう。
これは仕方がないので、遠慮無く堪能させてもらおう。
……ん?
さっきまであんな負のオーラを出してたのに、あっさりし過ぎじゃないかって?
バカ言うな。
いつまでもウジウジなんてしていられるかよ。
悔しさも恥ずかしさも後悔も、全部乗り越えてこそ人は強くなれる。
落ち込んでいる時間なんて、ただの人生の浪費だ。
そんなことをしている暇なんて俺には無い。
それよりも……
それよりも、もっと俺に美少女とのふれ合いを!!
「……ど、どうしたの木崎?」
すると、こちらの視線に気が付いたのか、四ノ宮がこちらを向いた。
少し訝しげな表情だ。
どうやら俺に変な疑いを持っているようだ。
彼女の疑いを解くためにもここは一つ、爽やかな笑顔でもプレゼントしてあげよう。
「いや、なんでもないよ四ノ宮」
「……」
より警戒した目線になった。
そんな怪しんだ目で見ないで欲しい。
身体が悦んでしまう。
……グリッ
「あの……四ノ宮さん?」
「何かしら?」
「その……足が」
「あら、ごめんなさい」
四ノ宮が俺の足をグリグリと踏みつけてきた。
変なこと考えていたのが顔に出ていたようだ。
心なしか、彼女の口調が戦闘時のようになっている。
いや、これはこれでまたそそるものが……
「もう一度踏むわよ」
「ごめんなさい」
怒られた。
流石にこれ以上は軽蔑されてしまいそうだ。
もう手遅れかもしれないが。
「それで、どこまで進んだの?」
「あ、うん。これを見てくれ」
おふざけはもうお終いといった感じで、四ノ宮が俺の分析について訊いてきた。
ここからは真面目モードだ。
「まず奴のパターンから考えてみたんだ。
この状況でなら奴は……」
「なるほど、ならそこは私単独で対応したほうがいいね」
「ああ。
それでな、すると奴は………」
モニターを見ながら、解析を進める。
どんどん意見を出していき、再び奴と相まみえた時のための作戦を組み立てていく。
三人寄れば文殊の知恵と言うが、二人でも十分に知恵は搾れるものだ。
互いの意見を聞いて、指摘し、改良していく。
その繰り返しだ。
話しているうちにどんどん発想が湧き出てくる。
こうしていると、絶望的に思えたあの《エネミス》の存在が、倒すことができるような気がしてくるから不思議だ。
なんだが手が届くように思えてくる。
自信が、希望が生まれてくる。
やがて、自然と俺は小隊の皆が常に言っている台詞を思い出していた。
そうだ……俺達ならば大丈夫。
大丈夫なんだ。
だって俺達は―――チームなんだから。
ーーー
時間は飛ぶように過ぎていった。
そして日が傾き始めた頃。
俺達のモニターには、希望の芽が描かれていた。
というわけで、シリアスなのかコメディなのかよくわからない間話でした
そしてお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、木崎はバカです
前書きの通り、今回は短めです
なので次話も早く投稿できると思います
ご意見ご感想等お待ちしております




