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神璽の魔法使いたち  作者: トータカロク
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終章




 黎人は学校の教室で呻いていた。

 あれから五日後の放課後、体に走る激痛に襲われ帰ろうにも身動きが出来ない状態でいた。

 あの夜、気を失った黎人は丞山におんぶされて店に戻った。それから丸二日眼が覚めなかったが、三日目の朝に起きると丞山は元気になったじゃろうと学校に行かさせられた。

 激痛に苛まれながらも、学校に通ったが五日目には次の日が休みという言うこともあって体を動かす気力が尽きていた。


「そんなことより、あの日から汐先輩に会ってないな」


 二日間は仕方がないにしても、学校に出てきてから汐に会ってはいない。学校には来ているようなので生徒会の仕事が大変なんだろうかと思うが、昼休みに来ることもあったので疑問に思っていたが、店に顔を見せに来ているという話も聞いていなかった。

 契印章の使い方をマスターしたら会いに来なくなったということは、そういうことなのかと思いあっさりと縁が切れたことに落胆した。


「まぁ、最初の出会いから良い印象もたれてなかったからなぁ。それでも仲良くなれてたと思ったけど。

 この前にあれが駄目だったかなぁ」


 向地を殺そうとして汐に止められたことを思い出す。


「ハァ……」

「何溜息吐いているのよ。さっさと帰るわよ」


 いつの間にかいなほがいた。


「今日はお店に行くんでしょ? 私も行くわ。未莱と明日の予定をたてたいからね」

「なら先に行ってろよ。俺はもう少し体を休めるから」

「ったく、未練ったらしい奴ね。汐さんはもう帰ったって生徒会所属のクラスの友達が言ってたけど」

「なっ……! いや、何を勘違いしてるだお前は」

「勘違いならその方が私もいいんだけどねー。

 とにかく学校にいても痛みが消えるわけじゃないんだから、さっさ立つ」


 いなほに強引に立たされそうになって、仕方がなく黎人は立った。

 そして二人は教室から出た。

 二人はお店の扉を開けると、お客と仕事の話をするためのテーブルに未莱が腰掛けていた。


「どうしたんだ、そんなとこに座って」


 黎人が声を掛けると未莱は緊張した面持ちで黎人達を見た。


「いや、それがえっとね?」


 未莱が何か言いづらそうにしていると店の奥から人が現れた。


「じじい、ただい――」


 黎人は丞山と思って挨拶しながら見ると止まってしまい。いなほも絶句してしてしまった。


「あら、お帰りなさいクロ君。いなほちゃんはいらっしゃいませね」


 いしかわ、と刺繍されたエプロンを制服の上から着けた汐がお茶を持ってそこにいた。


「えっと……。何してるんですか汐先輩」

「見て分からないかしら、アルバイトよ?」


 おかしい所があるのかと、自分の姿を見渡しながら汐は言った。


「そんなことより、今何か飲み物を持ってくるわね」

「いらないんで待ってください。

 とりあえず、何で汐先輩がここでバイトしてるんですか?」


 呼び止めた黎人は今一番聞きたいことを質問した。


「まだ料金を払っていなかったから。

 おじい様にエリオンの加工代を聞いたら、かなりの金だったから、バイトして少しずつ返していくことにしたの。

 契印章の練習も出来るから丁度良かったわ」

「じじい!」


 理由を聞いた黎人は丞山を大声で呼んだ。


「なんじゃ騒がしい」

「騒がしいじゃない。なんで俺が篆刻した料金を取ろうとしてるんだよ。

 篆刻師でもない俺が彫ったんだから料金はどう考えてもタダだろ」

「未熟者とはいえ、職人が作ったものを安売りしてはいかん。

 それに若い娘がいると店の中が華やぐからのう」


 そう言った丞山を黎人は冷たい眼差しで見た。


「そんな眼で見るんじゃない、わしとて本当は――」

「おじい様、お茶飲みますか?」


 丞山の言葉を遮って汐が聞くと、丞山は黙った。


「それともクロ君は私がここでアルバイトをするのが嫌なのかしら?

 ここ五日間、学校からアルバイトの許可を取るために頑張ったのよ?」


 黎人は最近汐と会えなかった理由が分かった。


「だとしても……」

「何かしら?」


 黎人がなんと言おうか悩んでいると、汐は生徒会長モードで聞いてきた。


「汐先輩、一緒に頑張りましょう!」

「ええ、よろしくね」


 コールドビューティになっている汐に逆らえるわけもなく、黎人は折れた。


「兄さん?」

「黎人?」


 未莱といなほはジト目なり、丞山は情けないというように溜息を吐いた。

 黎人自身も情けないとは思うが、これはこれで良いと思う。これから騒がしくも明るく楽しい日々になると予想できるからだ。



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