第57話 お越しいただきありがとうございます
一週間後――
ダグラスたちはナタリア女学院にやってきた。もちろん、授業見学のためである。
「ねえ、私たちで良かったの?」
ダグラスは同行する生徒にメグミと亜紀を指名した。二人も他校を見たいという気持ちがあったので、すぐに了承した。だが、いまさらなぜ自分が? と考えるようになる。
「まあ、見学をするメンバーという意味では誰でもよかったんだ」
「なによ、それ?」
ただ、別の理由があって二人にしたという。
「別の理由って?」
「いや、自分の取り越し苦労かもしれないし、それに……」
そう話しかけた時、別の人物から声をかけられる。
「マグナマル先生、お越しいただきありがとうございます」
ナタリア女学院魔法科主任の今居だった。
「なぜか、直々の指名だったらしいからな」
「ええ。ぜひ、マグナマル先生から私たちの練習についてご意見をいただきたいと思いまして」
大賢者の目からどのように見えるのか、それに大変興味があると彼は言う。
なるほど、そういう「言い訳」もあるんだ……なんて考える。
「それではどうぞこちらへ」
清蓮学園の応接室も大変立派だが、ナタリアのそれは、「もはや学校の中なのか?」と疑いたくなるほどの華やかさである。まるで、中世欧州の王宮に招かれたような錯覚に陥ってしまう。メグミにいたってはソワソワして落ち着かない様子だ。
それからは、ナタリア女学院の紹介や取り組みなどの説明を受け、ようやく授業の時間となる。
「それでは、競技場へ案内いたします」
そこまでの進行役を全て担っていた今居が、清蓮学園の見学者全員を引き連れて移動し、競技場へ案内した。
「うわぁ――」
そう声をあげたのは、メグミと亜紀だった。とにかく大きい!
魔法競技、ウィッチシュートのコートが三面取れるのは清蓮学園と同じだが、二階の観客席が非常に大きく、まるでサッカースタジアムを屋根付きにしたような広さである。
ここは、年三回行われる三校対抗の競技会場にもなる。なので、二、三年の生徒は何度か訪れていたのだが、一年生のメグミと亜紀は初めてだった。
二人が驚いているので、笑みを見せた今居が、「競技会の時には左右のコートに仮設の客席も用意して、五千人が収容可能です」などと説明するので、メグミは再び驚く。
「競技会は国内外からお客様が来ますからね」
滅多に見られない魔法が見られるとあって、高校生の競技会としてはかなり注目されているようだ。一般客も多いのだが、政府関係者や企業からも観戦者が来るらしい。
いまさらながら、魔法の注目度は高いのだと実感するのだった。
一度、コートに下りてナタリア女学院の生徒の前で挨拶すると、二階席に上がり、練習を見学することになった。ダグラス、メグミ、亜紀は一年生のコートへ向かう。最初に行われたのはシュート・ガード。やり方は清蓮学園で行われているのと同じなのだが――
「こらっ! 乱れているぞ! しっかり合わせろ!」
「ハイッ!」
男性教師の怒鳴り声がいきなり響き渡る。一年生は三十人。十五組でシュート・ガードを行っているのだが、全員が一糸乱れず同じタイミングで魔法を放っている。少しでも遅れたり、早かったりすると、さっきのような怒号が飛び出すのだ。そんな緊張感ある練習風景にメグミと亜紀は面食らう。
続いて、ステップワーク。こちらも清蓮で行っていることと同じだが、やはり緊張感がまったく違う。生徒全員が真剣そのもので、誰ひとり無駄口を開かない。少しでも動きが乱れた生徒がいると、すぐに教師の前に呼び出される。
「何度、言ったらわかる! 気合が足らん!」
「すみません!」
生徒は直立不動で教師に叱られている。そして最後に――
ピシャーン!
(――えっ?)




