第5話 なぜ、魔法科の生徒は女子しかいないんだ?
生徒に魔法を教えてほしいと頼む校長の清野蓮。どんな魔法を教えればいいのか?
そう尋ねると――
「攻撃魔法と防御魔法」と清野は答えるのだった。
「それは物騒だな。理由は?」
「現在、魔法科のクラスがある高校はわが校を含め三校ありまして、年に三回、魔法競技の対抗戦を行っています」
ナタリア女学院、横浜羽鳥女子、それと清蓮学園。その三校が魔法の技量向上のため、魔法を使った競技の定期戦を行っている。敵陣にあるゴールボードを魔法で攻撃し、当たった数を競うというシンプルな競技。守備側は相手の攻撃を魔法障壁で防ぐのだが、相手のカラダを直接攻撃することも許されている荒っぽい競技でもある。
清蓮学園は対抗戦でまだ一度も勝利がない。というのも、ナタリア女学院は保護者である政界、財界の有力者から多額な寄付を受け、潤沢な設備を有して生徒へ魔法指導を行っていた。公立校である横浜羽鳥女子は、そもそも県内屈指の進学校であり、優秀な生徒が入学している。
それに対し、売り文句が何ひとつない清蓮学園は魔法適性を持つ少女たちのうち、もっともデキの悪い生徒の受け皿になってしまっていた。そのため、学園を支援している行政や地域団体、保護者会からこの学園に魔法科がある意義を常に問われている――そんな状況らしい。
「そこで、生徒を指導していただき、少なくとも今年中に競技会で勝ち星をあげてほしいと考えています」
学校のお荷物と言われる魔法科のレベルアップ、それを期待しているようだ。
春季大会は四月に終了した。今年は七月の夏季大会と十月の秋季大会が残っている。その二つでなんとかして結果を残してほしい――そう彼女は頼むのであった。
「なるほど、理解した。最後にもう一つ聞いていいか?」
「何なりと」
「なぜ、魔法科の生徒は女子しかいないんだ?」
先ほど、演習場で召喚魔法の実習を行っていた顔ぶれは全員女子。しかし見たところ、この学校には男子生徒もいるようだ。なぜ、魔法科の生徒は女子だけなのか?
当然の疑問だが、それについて清野は説明する。
「現在、この世界で魔法の才能を持つ人類は女性、しかも日本人しかいません」
「……………………」
十年前、アメリカのジョンズホプキンス大学教授、ハルムラ・ダイゴ博士は、日本人女性から魔力につながる遺伝子を発見し、全世界が驚愕した。それは日本政府をすぐに動かし、ある法律が制定される。それが、『魔法遺伝子覚醒に関する法律』である。
第二次成長期直前、具体的には十歳になった日本人の少女に覚醒因子を投与する。そして、因子が陽性となった女子に魔法の教育を施すという法律。
現在は本人、家族の同意を得て覚醒因子の投与が行われている。ただし、投与しても覚醒する確率は数千人に一人ほど。まだ、魔法の才能を持つ者は極めて少ないのだ。
そのため、魔法の才能を持つ日本人女性を全世界の研究機関、企業が欲していた。
つまり、魔法遺伝子が覚醒すれば、それだけで将来が約束される。そういった状況もあり、覚醒因子投与を希望する割合は日本人女子の七割ほどに上るらしい。
「ハルムラ・ダイゴ……ね。オレのいた世界でも、誰もが魔法を使える――というわけではなかったが、特定人種で、しかも女性だけなんてことはなかった。いろいろと腑に落ちない部分はあるが、それについてはいずれ調べることにしよう」
聞きたいことはもうないと立ち上がるダグラスに、「私からも一つお聞きしてもいいですか?」と清野が声をかける。
「なんだ?」
「大賢者様はなぜ、お若い姿なのですか?」
ダグラスは自分の年齢を三百十五歳と言った。しかし、とてもそうは見えない――
「ああ――これは若いころに犯した過ちで、呪われたんだ」
「――?」




