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【完結】私を捨てるなんてとんでもない!流行りの断罪イベントは、私が終わらせます!  作者: 木風


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第一話 私を捨てるなんてとんでもない!

ことの始まりは、数日前にクララが参加したお茶会だった。


近頃、貴族令嬢たちの間では、とある不穏な噂が大流行しているらしい。


「ねえ、聞いた?お隣の侯爵家のお嬢様、卒業パーティーで婚約破棄されたんですって」

「まあ!いわゆる『断罪イベント』ね。今、流行っているらしいわよ。隣国の王太子も真実の愛に目覚めて、悪役の婚約者を突き放したとか」

「うちの旦那も言っていたわ。近頃の社交界は、断罪をやらないと締まらない、なんて」


クララは、手にしたティーカップを落としかけた。


断罪イベント。

それが今、流行り――?


クララは真面目すぎるほど真面目な性格で、フェリクス殿下のことを、指先が触れるだけで心臓が爆発しそうになるほど愛している。


そんな彼女にとって、その噂は死活問題だった。


フェリクス殿下は、常に王国の最先端を行くお方だ。

流行に敏感で、国民の期待を裏切らない。


もし殿下が、

最近は断罪するのがマナーだよね、

などと思っていたらどうしよう。


もし私が知らない間に、どこかの可憐な男爵令嬢と真実の愛を育んでいたら――。


一度そう思ってしまうと、止まらないのがクララの悪い癖だった。


最近、フェリクスが忙しそうにしていたのも、私を捨てる準備をしているからでは。

彼が優しく微笑んでくれるのも、最後くらいは優しくしてやろうという慈悲では。


脳内の不安は、頼んでもいないのに育ちがいい。


捨てられてたまるものですか。

私は殿下の隣にいたい。

殿下の淹れてくださる、ちょっと苦いお茶を一生飲み続けたいの。


こうしてクララは、一つの決意を固めた。


私を捨てないでいただくため、全力でプレゼンしよう、と。


そして今日。

クララは大量の紙束と、指示棒代わりの扇を抱えて、フェリクスの執務室を訪れていた。


突然現れた婚約者の物々しい姿に、フェリクスは書類から顔を上げ、わずかに眉を上げる。


「クララ?どうしたんだ、そんなに気合いの入った顔をして」

「殿下、お時間はありますか。本日は、私の資産価値と将来性について、改めてご説明に参りましたわ」

「……資産価値?」


フェリクスは困惑しつつも、愛しい婚約者のために椅子を勧めた。


「いいよ。君の話なら、いくらでも聞こう」


その言葉を合図にしたように、クララは机の上に大きな図解を広げ始める。


「ではまず第一項目!『クララ・ベルローズを維持することによる経済的メリット』についてです!」


ばさっ、と紙がめくられる。


「私は現在、実家のベルローズ領にて新種の魔力草の栽培を成功させております。これは来期、王国の魔導具産業に約三億ゴールドの利益をもたらす計算です。もし私を追放した場合、特許権の関係上、この利益はすべて私が持ち去ることになります!殿下、三億ゴールドですよ!?騎士団の鎧をすべて金ぴかに新調できる額です!」

「……なるほど。それは確かに痛いね」


フェリクスは頬杖をつき、面白そうに目を細めた。


この時点で、すでに察している。

クララが何か盛大な勘違いをして、全力で空回っていることに。

そして、そんな姿すらたまらなく可愛いことに。


「続きまして第二項目!『精神的安定と健康管理』です!」


クララはさらに身を乗り出した。


「殿下は仕事に熱中すると、すぐ食事を抜く癖があります!私は殿下のお好みの味付け――塩分控えめ、隠し味にハーブ――を完璧に把握しておりますし、殿下が疲れた時にどのツボを押せば一瞬で眠りに落ちるかも熟知しています!私を捨てて、新しい真実の愛の女性をお迎えになったとして、その方が殿下の肝臓の数値を気遣った献立を立てられるでしょうか!?いいえ、断じて否です!」

「確かに、僕の肝臓を守ってくれるのはクララだけかもしれない」

「そうです!健康は宝です!私がいなくなれば、殿下は三か月以内に過労で倒れるか、偏食で肌が荒れるでしょう!荒れた肌の王太子など、国民が悲しみます!」


鼻息も荒く言い募るクララを見ながら、フェリクスの胸の奥には甘い熱がじわじわと広がっていく。


「そして、ここが最重要項目です、殿下!」


勢いよく最後の一枚が開かれる。

そこには、フェリクスとクララの似顔絵が、これでもかというほど仲睦まじく描かれていた。


「第三項目、『愛の持続可能性』について!」

「……持続可能性?」

「はい!私の殿下に対する愛は、過去十年間、右肩上がりの成長を続けております!グラフをご覧くださいませ、この角度!ほぼ垂直です!明日は今日より好き、明後日はさらに好き。このまま行けば、来年には私の愛は成層圏を突破し、太陽系を包み込む計算になります!」


扇でグラフの頂点を、びしっと叩く。


「他の、ぽっと出の男爵令嬢に、これほどの爆発力と安定感を兼ね備えた愛が提供できるでしょうか!?流行の断罪イベントという目先の刺激に惑わされて、優良銘柄である私を手放すのは、投資家として――いえ、王太子としてあまりに無謀な判断です!」

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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