エピローグ いつか時が流れても
あれから約1年。
昼は会社、夜はこの世界という生活は今のところ順調だ。
特に怪しまれる事もない。
会社では付き合いの悪い奴とは思われているだろうけれど、
行き来に便利なように俺のマンションとこの家とを魔法で直結してある。
あのマンションは今では単なる出入口。
俺が住んでいるのは専らこの家だ。
「老後資金、どれ位貯まったんだ」
俺はシチュー風のスープをつつきながら松戸に聞く。
「そうだね、2人暮らしで100年分位かな」
「ってそれならもう充分だろ」
彼女は首を横に振る。
「甘いね。魔法使いは寿命が長いんだ。せめて500年分位は貯めたいな」
おいおい。
「俺が死んでしまうがな」
チイチイと彼女は人差し指を横に振る。
「君は僕のパートナーだからね。既に寿命は強化済みさ。だから下手に向こうで事故にあったりするなよな。車に轢かれた程度なら生き返るけれど」
いつの間にそんな事を。
「だから絶対事故るなよ。生き返るシーンを見られたらもう実験生物か化け物扱いだ。まあそうなったらここに逃げてくればいいけどな」
「家を見張られたらどうするんだ」
「その時は迎えにいってやるよ」
まあその辺は信頼しているけれど。
「それとも僕がパートナーじゃ不満かい」
俺を覗き込むようにして彼女は言う。
「それは無いさ」
「なら良かった」
彼女は軽く頷き、食事の姿勢に戻る。
そう、俺もかなりこの生活は気に入っているのだ。
今の関係のままでも、もう少し彼女との間が近くなっても楽しくやっていける。
それこそ寿命が500年あろうとも。
そう、彼女となら、きっと。




