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貧乏神の特性

「ねぇ、LUK下がってるわよね?」


 イロリナは不審そうに識石を見ていたがふとこちらに確認を取るように絞り出してきた。


「ああ、下がってるな……」


 彼女も見間違いかと思ったのだろう。あれだけ桁外れな数値だったのだから、印象深く覚えている。一瞬、先程が間違っていたのかと思ったが、それだと手にした『百花繚乱』の説明がつかない。


「あ、もしかしてそれ当てたから運使い果たしちゃったとか?」


「あー……一生分の運を使って七ツ星って? ありえねー……もうちょっと長続きしてくれよ……」


 でもあながち間違いでもないかもしれない。イロリナに出会って、ガチャ産最高峰のランクである七ツ星を引き当てている。今までの人生の中では間違いなくナンバーワンに入る幸運が続いていた。そういう意味で言えば、運を使い果たしていたと言われても納得してしまう。


「ま、まあ今日はこれで戻ろうよ。初討伐で疲れもあるでしょ? 一度ゆっくり眠れば頭も冴えるって」


 ……それもそうだな。転移初日に色々ありすぎた。祭壇作って、イロリナに会って、冒険者になって、ゴブリン討伐か。ちょっと休んでも罰は当たらないだろう。

 俺は彼女の提案に素直に頷き、宿に戻ることにした。


「じゃ、また明日。夜ご飯食べるならここの一階が食堂になってるって。疲れてるなら眠っても良いけど、どうする?」


「そうだなぁ……でも何も食べてないし、軽く頂こうかな。イロリナは?」


「あたしは仕事があるからさ、悪いけど一人で食べてくれる? 見てもらっても良かったんだけど、また今度でも別に良いしね」


 そうか、踊り子の本業があるって言ってたな。彼女を入り口まで見送った後、食堂で軽くつまんで自室に戻った。

 ちなみに、食事の味はそんなに悪くもなく良くもなく、オーソドックスなパンとスープ(多分コンソメだと思う)、それに簡易なサラダが付いたものだった。ディナーでこれだとあまり豪勢な食事はここでは見込めないかもな……


 自室に戻り、ベッドに腰かけて休んでいると自然と瞼が重くなる。思っていた以上に疲れていたらしい。せめて体ぐらい拭き取って眠りたかったが……駄目だ、寝ちまおう……明日、朝拭こう……



「どうもー、貴方のエンジェル、貧乏神様よー」


 抑揚のない、棒読みの声で起こされた。ハッと辺りを見回すと転移直前に貧乏神と邂逅した広間に立っていることに気付いた。ま、また死んだのか?


「あー、死んでない、死んでない。まずは転生初日無事に乗り切ったみたいだからねー、お疲れさん。どう、転生先は? 楽しんでる?」


 とっても軽いノリで話してくる神様。まあ、貧乏神なのだが……


「ああ、イロリナにも会ったし、ガチャまで実装されてる世界なんて思ってもみなかったよ」


「そうでしょ、そうでしょ」


 クフフ、と楽し気に笑う貧乏神。あ、めんどくさそうにしてない所初めて見た気がする。素材が良いだけに笑うとやっぱり可愛いな。


「それで、今回キミを呼んだのはだねぇ、私の祀り方についてなのだよ」


 ほう、祀り方とな。


「そう。というか、あの祀り方はなに? 石を並べて中に石の御神体? 小気味悪いダンスもそうだし、私を馬鹿にしてるの? もっと豪華に、絢爛に、華麗に祀りなさいよ」


「いや、貧乏神なんだろう?」


「私自身が貧乏なわけじゃないからね? あくまで、貧乏になるのはキミ。その分、私が満足すればキミにも恩恵があるんだから」


「ひょっとして……LUKが下がっていたのは……」


「そうよー、私の恩恵が無くなったから。というか、あの祀り方で恩恵を上げただけ感謝しなさいよ」


 あ、ありえん……つまり、何か?

 貧乏神様を称え崇めることで俺のLUKが上がるのがチート内容ってことか?


「せいかーい。今回はやり方がよく分かっていなかったから、特別に守護ってあげたけど……次あんなのしたら許さないわよ」


 ギロリ、と睨まれる。流石、神様。見た目は残念美少女でも迫力が違う。本気で怒られたら天罰とか言って雷が落とされそうだ。出来るだけ穏便に済ませよう。


「そ、わかれば良いのよ」


 さっきから心の声に反応されてる気がする。俺そんなに顔に出る方だったかな……あ! もしかして読心なんかもできて……


「それもせいかーい。神様だからね、下々の心の動きくらいは読めるのよ。それと、私は寛容な方だから許してるけど、残念とかなんとか失礼極まりない事言ってると、その内本当に天罰下すからね」


 貧乏神はニッコリと笑いながら恐ろしいことを言ってくれた。

 や、やばいやつだ……気を付けよう……


「それから、私はキミの守護神だからこうやって出てきたけど。そう何度も出てくるわけじゃ無いからね。出来るだけ自分の事は自分で決めること。今回は私にも関りがあるから、だるいけど出てきたんだから。感謝しなさいよ?」


「あ、はい。ありがとうございます」


「うん、わかればいいの。それじゃ、ちゃんと祀りなさいよ?」



 目が覚めると、土埃で汚れた体とローブが目に入った。そういや、荒野を歩いてたんだよな。疲れ切って寝ちまったし、まずは体を清潔にしよう……


 しかし、さっきのは夢にしてはやけにリアルだったな……

 おそらく、本気で祀らないと天罰が下るのも嘘じゃなさそうだ。

 当面の方針は、貧乏神様を奉ることから、かな。

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