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スライム退治

不快な表現があるかもしれません。苦手な方はご注意を。

 早々に冒険者ギルドに戻りクエストを確認したが、結果から言って、護衛クエストは見つからなかった。

 流石にそこまで都合よくはいかなかったようだ。仕方なしに討伐系のクエストを探す。ゴブリンにも飽きてきたし、そろそろ別の魔物が良いなー、なんて探していたらこんなのが見つかった。


『スライム退治:報酬 輝石三個 銀貨三枚 達成条件:スライムを五匹退治する 受注条件:三ツ星以上』


 スライムの事を考えていた矢先にこれか。報酬はゴブリンロードと比べると、同じ討伐数で三倍と良い感じだ。ただ気になるのがこの受注条件。ゴブリンには条件は課せられていなかった。条件が上がる分難易度も高くなるとは思うが、スライムってそんなに強いのだろうか……


「なあ、このクエストどう思う?」


 判断できずイロリナに尋ねる。


「スライムかぁ……ユウゴなら楽に勝てるかもね。良いんじゃないの?」


 どうやら想像通り、直接攻撃が入りにくいのがスライムの特徴のようだ。魔法なんかで遠距離から高火力で焼き切るのが通例らしい。だが、『百花繚乱』の威力なら簡単にやっつけられるだろう、と言われた。


 まあ、これなら美味しいのかもしれないな。俺はスライム退治のクエストを受注し、その日は早めに宿に戻って休むことにした。ちなみに、イロリナは、昼間に踊ったから今日は休み、とすぐに自室に戻った。


 眠る前にスライムについて考えてみる。日本人に馴染みのある言葉なのは、RPGの雑魚敵としてよく出現するからだろう。そういうスライムはデザイン化されており、醜悪な外見をしていることは少なかった。しかし、ここは現実だ。そして俺の想像通りなら、たぶんスライムはグロい。粘液うじゃうじゃでにじり寄ってくる感じなんだろう。


 あー嫌だ。気持ち悪くなってきた。

 出来るだけ直接攻撃したくないが、今の俺に魔法は使えない。『紅蓮の煙管』による炎がどれだけ威力があるかが、明日のスライム攻略の鍵になりそうだな。



 翌朝、宿の食堂でイロリナと再会する。ちなみに、今止まっている宿は初日と同じ宿を延泊してもらった。今日しっかりスライムを倒したとしても、そこから道具を揃えて出発するには時間が遅すぎる。シーボの町に出発できるのは最短で明日だ。だから、宿の方には昨日、今日の二日分を延泊としてもらっている。それと、パーシェスの村の雑貨屋で体を拭くものはぼろ布しかなくて、買うには少し躊躇われたので、一昨日同様に借りる事にしていた。

 従って、銅貨が四十枚一枚減っている。あと銀貨一枚、銅貨四十六枚だ。


「おはよう。今日はスライム退治だな。また森に行くのか?」


「はい、おはよ。そうだね、ゴブリンもついでに狩れれば討伐報酬がでるだろうし、その方が良いんじゃない」


 クエストの達成報酬とは別に、魔物の討伐報酬もギルドでは貰えることになっている。別のクエスト進行中に大口の魔物を討伐したとしても、体に刻まれた星の記憶が倒したことを証明してくれるのだ。魔物がいなくなることで周囲の治安が良くなるのが理由だとか。まるで自警団だな。こちらはボランティアではないが。

 もっとも、クエストでの達成報酬で討伐した魔物は報酬が重複しない。二重請求はできないようになっている。ギルドの資金繰りにも関わってくる部分だけに、こういったところはしっかりしている。昨日のゴブリンは達成報酬しか貰えなかったが、今日はゴブリン関連の依頼を受けなければ討伐報酬もしっかりでるだろう。


「わかった。じゃ、これ食ったら行くか」


「そうね」


 固いパンと申し訳程度についているサラダを食べて森に向かうことにした。もう少し食糧事情も良い物にしたいものだ。




「ところで、スライムにはあたし何にもしないからね?」


 森への道中、イロリナはそんなことを言い出した。


「え?」


「だって、あたしの武器二ツ星のショートソードだもん。スライムなんかにダメージ与えられないわよ」


 まあ、そうかもしれないけど……それ以前に今までもゴブリンを退治してたのは俺だったような……


「索敵と危険な時の援護はするけど、直接の対峙は控えさせてね」


 ま、いいか。いざとなったら援護してくれるって言ってるし、無理そうなら避難しよう。


「そういえば、イロリナは索敵が早いよな。何で?」


「ん? ああ、舞姫になったらね、なんだか気配に敏感になったのよ。だからそれなりに索敵は得意なの」


「それも、スキルか?」


「んー、たぶん。周りに舞姫っていなかったから、スキルかどうかも曖昧なのよね」


 ふーん……気配に敏感って、周囲の視線がどうなってるかわかるってことなのかな。まあ、注目を浴びる仕事だし、なんとなーく言いたいことはわかるけど、もっと他に索敵能力が上がるようなJobもあると思う。


「さて、もうすぐ森よ。準備は良い?」


 俺は『百花繚乱』と『紅蓮の煙管』に手を掛けて、こくりと頷いた。




 森を入ってから小一時間。ゴブリンとは何度もやりあったがスライムとはまだ遭遇していなかった。ゴブリン程度であれば問題無く対応でき、露払いには丁度良かった。時々ゴブリンロードも出てくるが特に変わりない。『百花繚乱』を一振りするだけで仕留めることが出来ていた。


 イロリナに言わせると、森では索敵能力が低いと話にならないそうだ。木々に遮られて視界が悪い上に、魔物も動いている。急襲に遭った時に対応できず大怪我を負った冒険者も多いとか。


「ちょっとは感謝しなさいよね」


「確かに、有難く思ってるよ。イロリナがいなかったら間違いなくやられてただろうから」


 素直に感謝の意を伝える。異世界にきてここまで親切にしてくれなかったら間違いなく死んでいただろう。いくら貧乏神の加護があった所で、それはガチャが出来て初めて発揮されたようなもんだ。その前に石を集める段階で詰んでいたと思う。


「ま、まあ、ちゃんと有難く思ってるなら良いのよ。も、もっと普段から態度で示しなさいよね!!」


 俺、ちゃんと伝えていると思ったけど……考えてみればあまり直接言ったことは無いか。


「じゃ、改めて。いつもありがとうイロリナ。お前のおかげで野垂れ死ぬこともなく今も生きていられる。早くレベルを上げて『百花繚乱』を渡せるよう頑張るから、もう少し面倒をみてくれるか?」


 そう告げると、彼女は耳まで真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。照れる要素は無かったと思うけど……というか、俺の方が恥ずかしくなってきた……


「は、早くレベル上げてよね……」


「お、おう……」


 何で森の中でこんな恥ずかしくなってるんだよ。ああ、もう! やっぱ可愛いな!!



「あ、そっちの方、いつもと感じが違う気がする」


 そう声が上がったのはそれから数分後だった。ようやく恥ずかしさもとれ、あたりを警戒していたらイロリナが違う雰囲気を感じ取ったらしい。


「スライムか?」


「どうだろう……でも、ゴブリンとかとは違って、なんか無機質な感じ。そこにいるんだけど視線とかは感じないの」


 ビンゴっぽいな。指摘された方向を見て気配を探る。すると、確かにそこには無機質な何かがいた。

 ジュルジュルと音を立てながら動いており、目も鼻も口も、それどころか体と言った物が無い。アメーバみたいな見た目で巨大な物体といったらわかりやすいか。それが動いていると思うと、気持ちが悪い。直接攻撃が入る、入らない、以前に近寄りたくない。ここは最初の考え通り、『紅蓮の煙管』の火で燃えて貰おう。


「それ、本当に使うの?」


 キセルに煙草を詰めている様子を見てイロリナに尋ねられる。当然だ。せっかく高レアリティの武器で特殊攻撃ができるんだ。試さずしてどうする。それに、煙草を詰める分これには時間がかかる。先に詰めておけば、動き回っている間に落ちてしまうし、向こうが気づいていない今が試し打ちに丁度いい。


 しっかりと煙草を詰めて火を灯す。マッチを買っておいて良かったな。神事もどきだけじゃなく、こういう事にも使えるとは思わなかった。

 マッチを擦る音と煙でスライムも気が付いたようだ。進行方向を変えてこちらに向かってきた。ジュルジュルと音が出ているし、逆方向に動いていたのにそのままの体勢でこちらに動いてくる、ってのがまた気持ち悪い。早いところ焼き払おう。


 大きく紫煙を吸い込んで一息にスライムに向けて吐き出す。村でやった時はここまで大きく吸い込みはしなかった。恐らく、もう少し火力のある炎が出るはずだ。

 口から吐き出されるはずであった煙は、炎に姿を変えてスライムに向かっていく。が、炎が大きすぎた。村でやった時は、ちょっと火柱が上がる程度だった。なのに、今は直径にして二メートルはありそうな火球が一直線にスライムに向かっている。

 火球はスライムに避けられることもなく直撃した。炎はそのままスライムにまとわりつき、やがて火が消えるとそこには何も残っていなかった。

 スライムの真上で炎が上がってくれたので、森には燃え広がらなかったのはラッキーだったな。


「すご……」


 またしてもイロリナは呆然と口を半開きにしている。まあ、ここまで火力が出るのは俺も想定外だったが、これなら大成功だろう。

 しばらく森を散策していると、すぐにスライムを見つけることが出来たのでその都度焼き払った。

 いずれも火球で一発だ。何度か火力調整に手こずってイロリナに文句を言われたが、森林火災にはなっていないし、これくらいなら良いだろ?

 ゴブリンもいくらか狩ったし、今回は報酬もいくらか期待できそうだ。

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