『紅蓮の煙管』
「なあ、コレどうすれば良いと思う?」
俺は『紅蓮の煙管』を手にイロリナに尋ねてみる。というか、キセルって武器なのか?
「まあ、今までみたいに斬りつけたりは出来ないわね。叩いたりじゃない?」
叩く、か。素材が何でできているかわからないけど、何かの金属でできている。思いっきり叩きつければダメージにはなるだろう。
「うーん、でも、打撃武器ってなんかイメージがなぁ……」
「それは勝手なイメージでしょ……魔物相手にするなら色々使えた方が有利よ?」
「そうなのか?」
「ええ、ゴブリンみたいな魔物はあまり苦手な攻撃ってないけど……骸骨とか虫とか、ああいうのって斬るより叩いた方が効果が高いのよね。逆にスライムは打撃が通りにくいけど」
ふむ。骨だから斬るよりも粉砕した方が効果的ってことか?
人の骨を折ったことは無いが、刀なんかでも骨を断つのには熟練の技がいるとかって、なんかの漫画で読んだような気がする。それよりは殴打した方が骨は破壊出来そうだよな。
虫は……甲殻を破壊するのに圧力の方が適しているってことなんだろうけど……会いたくないなぁ……
「じゃ、とりあえずはこれをメインで戦ってみるよ」
「ええ、早くレベルを上げてあたしに『百花繚乱』を使わせてね」
しかし、ほんっとにぶれないよな。口を開けば『百花繚乱』の事を言っている気がする。
「……なあ、何でそんなに『百花繚乱』にこだわるんだ? 今の武器でも十分戦えるんだろ?」
「まあ、それなりにはね。正直に言うと、一目惚れよ。七ツ星の装備に憧れもあるけど、その剣は見た目も綺麗じゃない?」
その言葉に俺は、『百花繚乱』を鞘から取り出し剣先から眺めてみる。
刀身は純白、反りが入っておらず両刃のようだ。その割に細身な剣でごついという印象は無い。
そのまま鍔の辺りへ視線を落としていく。以前気になった花が象られた彫刻、それでも装備として邪魔にならない程度に抑えられている。見た感じ百合の花だろうか。
柄の部分は滑りにくいようにしてあるのだろう。ただの筒上でなく螺旋状に彫りが入れられている。柄頭には花のチャームが可愛らしく揺れていた。あれ、こんなのあったっけ……
まあ、綺麗、か?
ただ少なくとも男向けじゃない気はする。チャームが無ければもう少し中性的だったのに。
「綺麗だけど、男が持つにはこの花がねぇ……」
「あ、それ、あたしの。目印に付けといたんだ」
何勝手にやってるんじゃい。ってか、弾かれなかったの?
「盗もうとしなければ大丈夫よ。じゃないと、危ないときにフォローできないじゃない?」
それもそうか。でもこれは外してほしい……
「いいじゃない、レベルが上がったらくれるんでしょ?」
渋々、了承した。主にCHRの差で、イロリナにはこの先ずっと頭が上がらない気がする。
その後、サントスの元に行きゴブリンロード討伐の報酬を貰う。今回は星を貰えなかった。
それと、確認事項だ。ギルドを出る前にもう一度識石に触れステータスを確認する。
「ステータスオープン」
ずらっとステータスが表示されLUKを確認する。あった。
LUK:1092
ガチャ後の為か、やはり下がっている。それでも前回よりは多い。七ツ星じゃない分貧乏神様の恩恵は残っているようだ。それか、イロリナの舞がそれだけ効果的だったのか。
その他のステータスには変化がない、と思う。正直、覚えきれない。今度メモも買っておこう。
ギルドを出て、今日の予定についてイロリナと話し合う。
「ま、今日は取り立ててやることもないし。これで宿に戻っても良いよ?」
「うーん、ちょっとこの『紅蓮の煙管』も試してみたいんだよな。実際にキセルとしても使えるって言ってたよな?」
「ああ、そんなこと言ってたね。煙草があれば使えるんじゃない?」
あたしは吸わないからわからないけど、と付け加えられる。別に俺も愛煙家ってほどじゃない。酒の席で友人に勧められて吸ったことがある程度だ。だが、こういう道具ってのは何となく試してみたくなるじゃないか。
「煙草は売ってるのか?」
「雑貨屋に行けばあったと思うよ」
言われるがままに雑貨屋へ向かう。今朝も来たんだけどな。物色していると案外簡単に見つけることが出来た。紙煙草ではなく、葉っぱの集まりが箱に詰められている。この葉っぱをキセルに入れて火を付ければ、キセルが使えるかどうかわかるのか。
「おっちゃん、これちょうだい」
「あいよ、銀貨一枚だ」
たかっ!!
煙草高くない!? この間の買い物と同じ値段だぞ!?
何でも嗜好品は税金を多く取るのだとか。日本でもそうだったけどさー、高すぎんよ……
今更出した手を引っ込めることも出来ず、泣く泣く銀貨を渡す。
ちなみに、今日の稼ぎはゴブリンロード討伐で銀貨一枚だった。今日の稼ぎが無くなっちまったよ。
「兄ちゃん、キセルを使ったことあんのか?」
煙草を受け取るときに雑貨屋の店主に尋ねられる。
「いや、無いけど……ここに葉っぱを詰めて火を付ければ良いんだろ?」
「ああ、わかってんのな。なら良いんだけどよ。吸いながらじゃないと火は付かねえからな。それと、その箱で大体十回分だからな。ゆっくり楽しみな」
あー、空気を入れてやらないと火がしっかり通らないんだよな。
わかった、ありがとう、と店主に礼を言い外に出てきた。イロリナは「無駄使いでしょー」と目を細めている。無言の圧力も辛いもんだ……
「なあ、早速使っても良いか?」
「うーん……火種に気を付けて、ちゃんと灰皿のある場所で吸うなら文句は言われないと思うよ……でも、ちゃんとお金貯めとかないと宿代なくなっちゃうよ?」
おっと、それは気を付けなくちゃな。昨日と同じ金額、銀貨一枚と銅貨八十七枚が残っている。とりあえず、今日は現状維持で良かったじゃないか。
それと近くに灰皿は……あった、あった。高い気がするけど、案外この雑貨屋で煙草を買う人間も多いのかもな。買ったらすぐ使いたくなるのも人間の心理か。そんなことを考えながらキセルに煙草を詰める。 灰皿の近くに移動し、キセルにしっかり葉っぱが詰まっているのを確認して、マッチで火を付けた。もちろん、息を吸いながらだ。
すぐにキセルに火が灯り、紫煙が漂い始めた。ちゃんと使えるな……ってなんか口が熱いな、なんだろ?
吸った空気を吐き出すと勢いよく火が出た。
イロリナは呆然としており、目が点になっている。
あ、また口が半開きだ。ちゃんと口を閉じなさいってば。
いかんな、俺も現実逃避してる気がする。冷静に、落ち着いて考えてみよう。
しかし、考えても考えても答えは変わらない。今、口から出たのは火で、俺はもちろん人間だ。
あれー?
キセルって煙を吐くはずじゃなかったっけー?




