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立ち向かえ

 地球に突如として出現したダンジョンとモンスター。


 人類に与えられたレベルとスキル。


 思い返してみれば違和感は常にどこかであったように思う。



「まあこんな冗談はさておき……貴方にこの提案が断れるはずがありませんよ、城本剣太郎さん」



 "チャンネルが合う人間"が増えるにつれて、世界中に増えていったダンジョン。


 保持者(ホルダー)となった人間の成長に合わせるように、時が経つにつれて徐々にレベルが上がっていったモンスター。


 ダンジョンの中に入ってしまえば時間的制約もなくほぼ無限に強くなれるシステム。


 さらなる強い力を求めるホルダーに対して【魔境】の門扉は常に開いていた。



「この【魔境】に集まったモンスターの総数は一万を優に超え、その全てがレベル150の大台を上回っています」



『技』をあれほど気安く使えたのもそう、あまりにも、何もかもが人間にとって都合が良すぎだ。


 ダンジョン攻略とモンスター討伐に際し莫大な報酬が得られることを知らしめ、その後モンスターの脅威を見せつけ、全ての人間がホルダーとなり、ホルダーとして成長を促すように仕向けられていた。


 その結果、人間はモンスターとあのバケモノ共にとって都合の良い餌となったんだ。



「半分は私の私兵。残りはすべて【白騎士】殿の分身です」



 それは、まるで人間の都合の良いように肥え太らされた家畜みたいに。


 そして家畜(エサ)は知ることはない。

 

 自分たちがいずれ食われる(・・・・)運命にあるということを。



「わかっているでしょう? この物量を一度に相手をするには流石の貴方一人でも難しいはずだ……」



 まさに、このモンスターの人を食ったような軽薄な姿勢は、そんな厳しい現実を表している。


 漆黒の翼と共に広げられた【バロン】の両手の背後にはおぞましい笑顔を貼り付けた悪魔の群衆と白い甲冑の軍団が地上から空中まで『ところせまし』とひしめいていた。



「特に……そこにいる妹さんを庇いながらではねぇ? 」



 実際、悪魔の言うことは正しかった。戦況を大きく左右する『技』を以前のようには使えない現在、一対一ならいざ知らず、レベルが100しか離れていない非数値化技能に大きく長けたモンスターを複数体、同時に相手をするのは辛すぎる。


 ああ。やっと【白騎士】が何を待っていたかのかが分かった。まさに、この状況を実現するため――かき集めた多勢で俺を追い詰め、自分たちの意のままにしようとしていたんだ。


 でも気づいたところで、現実は変わらない。この厳しい実情はどう足搔いてもひっくり返らない。



「……っ!」


「大丈夫……大丈夫だよ……。梨沙には兄ちゃんがいる」



 ここは言う通りにするべきなのか?


 だけど従ったところでなんになる? 


 結局のところ人質が爺ちゃんから梨沙に変わるだけだ。


 それとも……まだ何か別の手段があるっていうのか?



「そうですねぇ……もしも我々を貴方一人が倒すことが出来るとするならば……【スキル】の極地である『技』を連発でも出来なければ――」


「え? 」


「ん? 」


「『技』を連発? 」


「ん? ああ……コレはもちろん"仮定の話"ですよ? 『技』を連発するなんて、そんな"無法"……【スキル】の根本原理を否定し、摂理に反した絶対にありえな――」




 ――そこからはもう、モンスターの言葉なんて一言だって耳に入ってこなかった。




 世界に起こった巨大な変革を認識できたのは【四方の魔王】本人に乗っ取られた【獣の戦士】と【劇毒の魔女】だけかもしれないと思っていた。


 けれど、【四方の魔王】の起こした変化を知覚できているのはやはり、この変革後の世界では俺だけだった。


 地上で俺達の戦いを知覚していたはずの【白騎士】も、ずっとそばにいたはずの梨沙も、自らを最高幹部とまで称した悪魔でさえも気づけていなかった。


【四方の魔王】の権能と力とはそれだけ絶対的で、奴らが好き勝手に創り出すルールは奴ら以外にとってはそれが当たり前、変化を変化したとも察知することはできない。




 ――それじゃあなんで俺だけは"変化"を認識できているのか。




 俺が特別だからか? 


 俺のレベルがこの中で一番あの超越者たちに近いから?




 ――いいや、違う。




 他ならぬ"爺ちゃん"が俺にだけ見せてくれたからだ。


 絶対的恐怖との向き合い方を。


 人間では敵いようがない【四方の魔王】(カイブツ)にどうやって抵抗するのかを。



「いやはや失礼! 私も妙なことを口走ってしまいました。人類最強である貴方が我らの軍門に下るという祝福すべき瞬間に似つかわしくな――」


「どうしてお前らはそんなに必死に俺を味方に付けようとしているんだ? 」



【魔王】(恐怖)との立ち向かい方を爺ちゃんが示した一方で、俺はどうだ?


 たかだか一万体の下っ端相手に怯えて、固まっている。


 そんなんでいいのか?


 俺は【四方の魔王】を超えるんじゃなかったのか?



「ひ、必死……ですか? まったく……貴方が何を言いたいのか……。私には到底わかりかね――」


「とぼけるなよ。バロン。お前は確かに、この【魔境】を東西二つの陣営が創ったと言っていた。そして【魔境】(ここ)を脱出するには『どちらかの陣営の味方をする』――というのが条件だった」


「……」



 いいや。それで良いはずが無い。


 もしも超越者たるバケモノ共から見て人類(おれたち)がただの家畜なら、コイツ等はただの()超越者(プレイヤー)にとってはいつでも使い捨てることができる存在だ。


 それを相手に【四方の魔王】を倒すと決意した俺が――



「まだ何か俺に隠してることがあるんだろ? ここまでネタバラシしたんだったらいい加減、もっと正直に成ったらどうなんだ? 」


「世迷言を……。私に影響されて、貴方も頓珍漢なことを言いだしたみたいですねえ。そんな事実はどこにも――」


「そうだな。例えば……俺を一時的にでも味方に付けること――つまり服従させることこそが、お前等の【魔王】にとって何らかの利がある条件だったとか……? 」



 ――苦戦していい訳が無い。



「……」


「……」


「……」



 俺の問いかけ呼応して、モンスター達がその動きをピタリ止めてから、流れた沈黙の時間が長いと感じた瞬間。



「”勘が鋭い”っていうのも……困りもの……なんですねぇ」


「――バロン」


「はい……見ての通り計画は失敗しました。ですから【白騎士】殿、我々に残された手段は最早――」



 震える声で呟いて、その翼を大きく広げた悪魔の始めて見せる表情は、明らかに――



「――強硬手段(・・・・)に他ならない!! 」



 ――追い詰めらた被捕食者(人間)のソレだった。



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