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変身のトリガー

 足の裏から地面に触れているという感覚が消えていく。



 指先から熱と触覚が失われていく。



 眼球から全ての光が去っていく。



 全身から力と[魔力]が同時に抜けていく。








 そして……呼吸が――――止まる――――――。








「――――――――はぁ……っ! 」




 無酸素状態になっていた脳に思考するためのエネルギーを送ろうとして、大きく息を吸う。 


 いつからだ? どのタイミングから“東”と“西”の概念(・・)は逆転した? 



『俺は【()】の魔王が配下、第二侵攻軍・軍団長の【白騎士】だ』


『新たな【西()】の急先鋒”と謳われて名高い第二侵攻軍・軍団長の、あの【白騎士】サマが……』



 ……そうだ。


 思い出した。


 変化が起こり始めたのは全部、この【魔境】に侵入した時からだ。


【夢の支配者】イケロースとの夢の世界での戦いを終えたころからだ。


 あの時から既に、俺の中の……世界の……『東西』の“概念”は歪まされて反転(・・)し始めていた……!!



「その様子から鑑みるに……気付けたようですね。認識できたようですね。我が『王』の力の一端(・・)に」


「っ! 」


「凄まじいでしょう? こんな小手先の力だけでも効力は絶大です。どれだけ注意深くても、感覚が鋭敏でも、勘が鋭くても言われなければ気づけやしないのです。もちろん人類最強であるアナタも。王と同じモンスターであるはずの私達も」


「なんで……わざわざこんなことを? 」


「さぁ……なんなんでしょう? 手慰み? 気まぐれ? 力の誇示? 私如きの矮小なる存在には千年を生きる深淵なる王の考えなど到底理解することも、推論することさえもできません。それに……勘違いしているようなので言っておきますが……王の歪めた“概念”は『東西の逆転』だけじゃありませんよ? 」


「……!? 」


「城本剣太郎さん。再びアナタにお聞きしましょう。人間であるアナタが認識している【魔境】が共通して持つ特徴はいったいなんですか? 」



【魔境】の……共通点だと?



「そんなの決まってる。それは、ステータスが……ステー……タス、が……」



 え? あれ……? 


 おい……嘘だろ……?



「どうですか? いくら頭を絞っても……記憶を巡ろうとしても……記憶に()がかかったように思い出せないでしょう? 」


「ありえない、そんな……そんなはずが……」


「答えは『モンスターの全ステータスが10倍』です。正確には”だった”と言うべきでしょうか。この【魔境】では先ほどから全く別のルールが適用されるようになりましたから」


「……全く別のルール」


「さて、そろそろお見せしましょうか。これこそ、私たちが手に入れた……”手に入れてしまった(・・・・・・・・・・)”……『新たなる力』! 」



 大仰な宣言が廃墟の街に轟いた後。


 元・【獣の戦士】は右手でつくった手刀を――



「ぐお”ぉ”お”お”お”お”お”おおおッ! 」



 ――自身(・・)の黒い胸の中心に向かって深く、強く突き入れた。


 痛ましい苦悶の声を上げるのと共に。


 静謐だった[魔力]を荒ぶらせると共に。


 真っ赤な血反吐を口から吐き出すのと共に。



「まさか――……!? 」



 自死(・・)を選んだ怪物の漆黒の肉体が『黒い灰』へと変換され、風に巻かれて中心へと集まり、変身(・・)を開始したのは――――その直後のことだった。


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