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刹那の情動

「…………――() 」



 その刹那”沢山の出来事(・・・・・・)”が、1マイクロ秒のズレもなく世界で、【大和魔境】の上空で、モンスタが―蔓延る島の上で、元は大和町だった廃墟の街の中で、1秒を何万倍にも引き延ばした時が流れる俺の脳内で同時に起こった。



――なんの脈絡もなく背後で新たに噴出し、湧き上がった[魔力]と殺意。



――瞬間的に泡立ち、鳥肌を立てる俺の全感覚器官。



――次なる戦闘の開始を悟り、皮膚が破れてしまうぐらい強く握りしめた金属バット。



――与えられた"後ろ"という情報に対してなんの疑いも、躊躇いもなく条件反射で前方へと大きく踏み出した右足。



――脳内で瞬時に噛み砕いた"避けて"という指示に対して、間髪を入れずに反応し、何らかの『技』の発動の準備と単純利用を開始した【疾走】スキル。



 そして、ずっと守りたいと思っていて



 でも、ずっとすれ違ってしまっていて



 ずっと安否を心配していて



 ずっと会いたくて



 ずっとずっとその行方を探し続けていて



 ずっとずっとずっと聞きたくてたまらなかった『声』を久しぶりに耳にした。



「…………――!!(・・) 」 



 瞬間、胸中にいくつもの感情が去来する。


 恐怖。


 警戒。


 絶望。


 希望。


 安堵。


 歓喜。


 ぐちゃぐちゃに複雑にほどけないほど絡み合いつつも心をかき乱して大きく揺さぶった、そられらの"情動の坩堝"で胸がいっぱいになってしまった俺は、体内で膨れ上がり爆発しそうになっている全エネルギーを一気に放出するため叫ぶ。



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 」



 がむしゃらに。


 ひたすらに。


 喉が枯れそうになるほど。


 抱えきれないほど多くの想いを胸に。


 一直線に前だけを見て。



「……とても残念です。今の一撃を……まんまと避けられてしまいましたか……」



 さらに、その力の発露は俺に絶対回避不能なタイミングでの”奇襲”を回避させるのを成功させた。


 気配を直前まで察知できないまま後ろから聞こえてきた、またどこかで聞き覚えのある(・・・・・・・)"慇懃無礼な丁寧語"に向かって俺は一切のタイムラグを挟まずに振り返る。



「お前は……!? 」



 そこに居たのは……――――


明日(12月19日)は二話投稿

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