僕と姉。2
それからだった。
毎週金曜日、僕と姉は逢瀬を重ねていく。
姉は僕に何を求めていたのか。
僕と姉は金曜の夜になると、いつものように一緒にお風呂に入り、どちらからともなく触れ合い、その流れで進んでいく。
ただ、体を重ねているだけ。
お互いの寂しさを埋め合うように、体を温め合っていただけだと思う。
キスは一度だってしたことがなかった。
それからも僕は、姉との関係を持ちながら彼女をとっかえひっかえしていた。
中には、毎週金曜に会えないというのを理由に何か勘繰ってくるものもいた。
そんな女はこっちからお断りだ。
姉と僕の関係に亀裂を入れる可能性がある女はすぐに切り捨てた。
いくら血の繋がりはないといえど、誰かにバレてしまったら一瞬にして噂が広まりこの関係が危ぶまれる可能性がある。
僕は姉との関係を守りたかったのだ。
生まれてきたことを何度も後悔したくらい、家族には恵まれなかったと思う。
そんな僕に、姉は希望を照らしてくれた。
僕の初恋は、姉だったのかもしれない。
僕が幼稚園の頃に初めて出会い、隣の家に住んでいた姉は小さな僕にも頻繁に声をかけてくれ、とても優しかった。
姉と父が関係を持っているということが分かった後も、姉のことを嫌いになるなんて出来なかった。
僕にもしっかりと変態だった父の血が流れているのだろう。
そして、僕と姉の関係は特に変わらないまま、大学生になり、大学3年生の頃に彼女、みゆきに出会うことになった。
最初から突っかかってきて、腹の立つ女だと思った。
初対面はお互いに最悪だっただろう。
それから何度か話す機会があり、どこか姉に面影が似ていると思ってしまった。
それから少し興味を持ち始め、距離が近づいていき、付き合うことになった。
みゆきは、僕が姉に恋をしているということを感じとっていたのだと思う。
『あの人の代わりでいいから』
と言われて告白された時には、つい感情が込み上げてきて抱きしめてしまった。
最初は姉の代わりを探していたのだと思う。
父が亡くなってから、もう何年も経つのに未だに左手の薬指に指輪をつけている姉の代わりを。
みゆきと付き合ってからも、姉との関係に当分変化はなかった。
大学生になってからは、僕が一人暮らしをするアパートに、毎週金曜日姉は尋ねてきた。
そして、翌日の朝に実家に帰省して、1日を過ごす。
今まで姉とのことをみゆきから聞かれたことはなかったが、みゆきは僕と姉との関係に気づいていたのかもしれない。
僕はみゆきを、姉とのことのカモフラージュにしていたのかもしれない。
僕はみゆきと付き合ってからもクズのままだった。