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第七十話 それからどうなった

 今後の展開に波紋の一つでも出来そうな約束をしてしまった気がしないでもないが、ともかくも来年の話ながらも商都とそこに住まう者らとのフラグ成立。


 役目を終えたリッチは明日の祭りが終わり俺から約束の証になる書簡を貰い次第帰還するという。


 本格的な冬が到来する前にはと思うのは当然かな。陸路も海路も冬場は厳しめなのは魔法がある世界といえども文明水準的に仕方がない。


 これでようやく今日の仕事を終えた俺は同席してくれたリヒトさんに改めてお礼を述べて会場を後にした。


 何もなければ祭りやってるとこをちょっと見物したいとこだが、明日は明日で大会あるし総責任者が軽々しく席を外すわけにはいかないのよねこれが。


 というわけで俺は関係者用の出入口に事前に停車させてた馬車に乗り込んでそそくさと州都庁にある自室へと戻っていった。


 窓越しにチラッとみた感じだと閉鎖時間ギリギリまで賑わってそうだから何よりだ。


 明日も上手くやれればいいねぇ。





 翌日会場に向かうと昨日と同じく朝から会場内外は人人人と密高めであった。州都内の住民が全員来てるとまでは言わないけど早朝の時点で一割ぐらいは居るんじゃないのかこれ。


 本日の相棒戦の開始は昨日より遅めに設定してるので、俺はマシロとクロエ、そしてターロン他数名の護衛と共にちょっと屋台や舞台を見て回ることにした。


 誰もが思わず振り返ってくるとはいえ、基本的にそれ以上のリアクションを通行人にはされず俺達は周りと同じように人混みの中を歩いていた。


 今更過ぎるが俺は街に出る時含めて外出にそこまで人員を引き連れていかない。


 最早一人で気軽に出歩く身分や立場でないが、あまり大勢引き連れて歩く趣味もなければそれで自尊心や虚栄心満たす事に興味もない。


 けれどまぁ護衛は必要なわけでこうして侍らせてるわけであるけど、それも多くて十人前後。少ない時はマシロとクロエだけ連れて歩いてたりする。


 歴代の節令使は一番少なくても文武官合わせて百人近く引き連れて街中歩いてたという。ここでそうなのだから他所もそんな感じなのだろう多分。


 それが当たり前と思ってた住民からすれば俺が少ない人数で普通に出歩いてる事が奇異に思えるのかもしれん。


 一応権力者だから選挙中の政治家よろしく手あたり次第気さくに声掛けするわけにもいかずだ。精々互いに節度保ちつつ交流続けていきたいものよ。


「今のうちじゃないのー?数年後にはこんなお手軽に出歩けてるか怪しいんじゃないのかにゃー?」


「くくく、見通しの甘さのミステイク。富むべき失うべきのアンバランスゾーン」


「うるせぇよ小さな願望ぐらい持たせろや」


 俺の見通しの甘さを揶揄するド畜生二人に悪態を吐く。そんな俺らを見てターロンが笑い声をあげた。


「どちらの言い分も間違ってないだけに難しい話ですな。いやどちらかといえば私もマシロ嬢クロエ嬢と同意見ですがね。節令使様がこれだけの護衛で白昼堂々練り歩く方が酔狂というもの。常識が後から肩たたきにきますぞ」


「へっ。そんときは護衛のお前らも道連れだ。精々今のうちに軽くで済んでる責任感を満喫してろ」


「えぇえぇぜひそうさせて貰いますよ。近接殺しのリッチのように何気なく大事な用事言いつけられる身分になるまではいつも通り坊ちゃんの護衛を呑気に勤めますので」


「まったく……」


 気負いなく言ってのける昔馴染みの護衛に俺は呆れ気味に溜息を吐くに留めるのだった。


 そうこうしてるうちに俺らがやってきたのはレーワン食料・雑貨店のアンテナショップ的な役目をしてる屋台。そこは既に三、四十人ばかりの人が並んで順番を待っていた。


 屋台では会計係の店員と共に部族の人間らが自分のとこの特産品を説明したり購入品を袋に詰めて手渡してたりと朝から忙しそうにしている。


 その中にはゲンブ族族長の娘であり部族部隊の隊長であるモモとお付きの異世界人平成も居た。


 モモには特に人だかりが出来ている。昨日の試合を見て感じ入る人らが多かったのであろう、買い物しつつも口々に昨日の事を話しかけている。


 パっと見だが女性客の率が高いような気がする。うんまぁ女冒険者とはまた違った物珍しいワイルドさを感じたとかあるのだろうね同性としては。


 客たちの勢いにタジタジになりながらもなんとかそれらに応えつつぎこちない風に接客するモモ。隣に居る平成はスキル発動させつつ彼女よりかは手慣れた感じでこなしている。


 俺達の存在に気づいたのか、モモは自分の方へ回ってきた客らを捌ききると屋台の中に居る部族の若者らに「この場を少し任せるぞ!」と大声で告げてそそくさと離脱してきた。片手で平成の襟首掴んで引きずりながら。


「……なんか仕事の邪魔したみたいで悪いな」


「いや正直助かった。ただでさえ慣れぬ事をしてるのに客が次から次へと私の所へ来るのだ。他に空いてるだろうにまったく」


 屋台から少し離れた場所にある簡易休憩所の一角まで移動した後に俺が告げるとモモは疲れたようにそう言った。


「我らの印象を良くする為の任務と分かってるが、これなら昨日のように戦ってたほうがマシだな。戦士が慣れぬ商いをするものではないと実感した」


「その戦いを見て君に注目してからこその朝からの盛況っぷりだろう?これもまた戦果と考えたら悪いものではあるまいよ」


「そういうものなのか……商いとは中々捉えどころのないものなんだな」


「いやでもお陰でイメージアップにはなってますって」


 歎息するモモに代わって平成が会話に加わってきた。


「店番してくれてる部族の人らも内容承知してるからか笑顔張り付かせて根気強く接客してますし、ちょっとマズイことあれば僕や会計係の人がフォローしてますから今のとこトラブルないですよ」


「そんなこと出来るとか、なんだ日本居た頃接客のバイトしてたのか?」


「えぇまぁコンビニとアパレルでちょっと。合わせて四、五年ぐらいやってたんですけど、まさかこんなとこで役立つことになるとは」


「魅了のスキルといい本当に地味に役立つことばかりだな。この調子でこれからも頑張ってくれよ」


「ファンタジー世界なのにちっともそれっぽくない事で期待されるのもなぁ……」


 平成のもっともな嘆きに苦笑を禁じえなかった。でもそれっぽい事で活躍出来たら出来たでボヤくでしょうお前さんは。


 しかしなんだな、こうして現場を見て当事者から話を聞く限りだと距離を縮めるキッカケぐらいにはなってくれたかね今回のは。


 無論これだけでめでたしめでたしではない。人付き合い、特に民族的なものが絡んでると仲良しこよしは容易ではないのだどの世界でも。


 これから長い付き合いしていくとすればトラブルなんて出てくるに決まってる。もしかしたら終わった後に揉め事の一つでも上がれば内容次第で台無しになる可能性も残ってる。


 俺の思い付きで始まったこの企画はあくまで道の一つを舗装したに過ぎない。自分のやったことを過大評価なぞせんよ。


 終わった後にでもモモらに改めて節度ある言動を命じるつもりだがそれはこちらとて同じ事。当面はまだまだ贔屓と誹られようとも俺が進んで気を配っていかないと駄目なわけだよ。


 苦労した分の見返りに期待したいとこだが目に見えてくるのはいつになるのやら。


 っと、イカンイカン。朝から黄昏気味な気分に浸るのはよろしくないな。まだ二日目始まったばかりだし、そういうのは夜一人で居る時にでもやろう。


 気を取り直した俺はモモらに引き続きの交流兼ねた物品販売を頑張るように檄を飛ばしつつ屋台を後にした。


 会場へと足を向けつつ、俺らは他の屋台を見て回りそこで幾つかの飲食物を購入していく。今日もこれから会場でお仕事だろうから食べれるときに食べとかないと。


 あー、やっぱ屋台かたの買い食いしてると祭りしてるって感じしますなー。


 串焼きにかぶりつきつつその瞬間だけ俺の中の日本人魂が実感篭ったつぶやきを内心するのであった。





 会場入りする直前、ふと思い出して方向転換。向かった先は野外舞台のある広場であった。


 まだ開始前なので人は差ほど居ない。けれども昨日の舞台ウケがよかったのかこんな時間から最前列と思われるスペースには敷物をひいて陣取ってる人々の姿が見られた。


 それを横目に見つつ俺らは更に進んでいき、野外舞台の裏側にある控室兼舞台用道具置き場になってる仮設された小屋へと辿り着く。


 小屋の前では既に出演予定のダンサーらが衣装姿で雑談をしたり独りイメトレしたりと思い思いの過ごし方をして本番を待っている。


 俺の姿を見るやダンサーの一人が小屋の中へ入っていき、一分と経過せずにダンスの責任者であるバンを引っ張り出してきた。


「これは節令使様。朝早くからこのような所にお越しいただきまして大変恐縮でございます」


「いや気にせずともよい。昨日今日とそちらの成果をゆっくり見物出来ずだからせめて励ましの言葉の一つでもかけようかと立ち寄った次第だ。それにしても昨日は盛り上がったそうでなによりだ」


「えぇえぇ。これも私に今まで付いてきてくれた同士達やそれを支えてくれたパーティーメンバーらのお陰です。まだ今日が残ってますので終わるまでは歓喜を爆発させるのは抑えておりますが」


 と言いつつも頬を紅潮させて満ち足りたような笑みを自然と浮かべてしまうバン。周りのダンサーらもそんなリーダーに感化されてか一様に生き生きとした顔をしている。


 この場で例外なのはバンの所属先であるサンダーショットティームの面々であった。


 皆等しく目が死んでおり顔色も青白いというか生気がない。俺の声掛けに応えはするものの声に力もなく「はい」「えぇ」と最低限の単語しか呟かない。しかもたまに発作的に乾いた笑いが口端から漏れてるし。


 連日理解し難いテンション高い世界へ首つっこみすぎて精神やられ気味らしいな。まぁ無理もないか。


 俺はさり気ない視線をバンらダンサーチームに向けた。


 この時代にしては男女ともに胸や足を肌部分を強調した露出の多めの動きやすい服に羽根飾りなどの装飾品を軽快に動けるギリギリのところまで身に着けてる。中には絵の具などで顔や体に紋様をつけてる者も居た。


 そう、いわゆるサンバ衣装でありダンスや音楽もも聞き及ぶところだとほぼサンバっぽいものだというのだ。


 バンが言うには、昔々旅をしてる最中で出会ったという海を越えた遥か南にある大陸の出である楽士が奏でた曲をヒントに考案したものだとか。


 その海を越えた先にある遥か南にある国とやらは推測するに現代地球でいうアフリカか南米辺りみたいなとこかもしれない。


 この時代の移動手段の少なさや大陸間の断絶具合考えたら奇跡みたいな出会いだな。しかも職業的にも踊り子と楽士とか運命すら感じるぞ。


 しかしその奇跡のお陰でこうして名物になりえる催し物が出来そうではあるので、俺としては恩恵貰ってるからあまり気にしないでおこうと思う。


 著作権とかオリジナル問題は未来に丸投げするとして俺は精々深入りしない程度にはこのサンバもどきの普及を支援するとしようかね。ここでは斬新かつ先鋭的な音楽としてウケつつあるんだから。


 内心勝手に納得した俺はバンらに本日も励み成功を期待すると激励をして舞台場を後にした。ゴウロウらの縋る様な視線を華麗に無視してそそくさと立ち去った。


 来年もやるなら次はちゃんと舞台を見物したいものだ。出来次第では娯楽の多様化に一石投じる存在と見なして応援してもいいしな。


 少なくとも祭りに来てる人たちに喜んで貰えてるなら合格ではあるけどね。






 格闘技大会二日目は相棒戦――現代地球風に言うならタッグマッチである。


 最初ということで慎重に堅実にという考えで行った故に個人戦がメインとなり相棒戦はおまけみたいになってしまった。


 なにせ参加者が個人戦本選に出れなかった予選参加者の敗者復活戦経由かつ組む相手見つけられないと勝ち上がっても参加出来ずなので大体急造コンビといういい加減さ。


 開始時間が遅めなのも最初からベスト8から始めるからこその遅さだ。


 次回以降はちゃんと別枠としてキチンと予選を行うなど個人戦と同じ扱いにしようと反省しきりである。


 だが試合は試合だ。しかも賞金も個人戦よりかは少ないがちゃんと出す。優勝した組には金貨五十枚。準優勝した組には金貨十五枚だ。


 二人で分ければ更に賞金としては減るんだが金貨は金貨。普段手にする機会ない奴も多いから力は入る事だろうよ。


 そう考えてた俺の考えは当たっていた。


 大まかな話は既に出回ってるだろうに昨日と同じぐらいに席は埋まっており、皆があれこれ語り合いつつ開始を待ち構えてる。


 昨日の試合模様が余程刺激になったのだろう。会場の出入口付近に構えてる臨時賭場も始まる前から大勢詰めかけて熱が高まってると報告を受けた。


 係員からも選手らの士気も決して低くはないと聞いている。うむうむ実にありがたいことだね。


 運営者として胸中安堵しつつ俺は昨日と同じく解説者席へ座る。実況は引き続きシャー・ベリンだ。


「はぁい皆さん!!大変お待たせ致しましたぁぁ!!ただいまより格闘技大会相棒戦を開始したいと思いまぁぁぁぁすぅ!!」


 シャー・ベリンの朝からハイテンションな絶叫じみた宣言に会場も盛り上がる。


 その熱気に誘われるかのように、選手たちが花道から現れてきた。


 個人戦と同じく様々な人種や職業の面々が優勝狙ってギラギラした空気出しつつリングへと向かっている。やる気があるのはイイ事ではあるがな。


 ただまぁ幾つかの場面ではそれが空回りしてしまうのは避けられなかったわけで。


 予選の時を含めて三、四回は念を押してタッグマッチのルールを説明はしている。それも細々としたものでなく最低限守ってもらいたいのを幾つかだ。


 反則行為に関しては個人戦と同じなので省略するとして、タッグマッチ独自の規定としては相方と交代するときはレフリーに見えるように相手の身体のどこでもいいからタッチすることは絶対守って欲しいといってある試合形式的にも。


 けれどいざ勝負になると目先の対戦者を倒すことに熱中して頭真っ白になってるのか視野狭窄にでも陥ってるのか、相方がピンチになるやタッチもされてないのにリング内に乱入して攻撃するのだ。


 それが呼び水となって「あっちがやるならこっちもだ!」と対戦者の相方も加わって格闘技大会というより乱闘騒ぎみたいなものに成ってしまう。


 流石にタッグマッチそのもの理解せずに相方すら倒してしまうような阿呆は居ないけど、居てもおかしくないぐらいにルール理解せずやりあってる奴の多いことよ。


 不幸中の幸いは観客が面白がってくれてることか。真面目寄りなのは昨日堪能したから今日はドタバタしたのを観たいとでも思ってくれてるようで。


 中には昨日の同じクオリティ期待してガッカリしてる客も当然居るだろう。しかし始まってしまうと軌道修正不可能なので来年以降に期待してもらいたい。と、心の中で詫びるしかないですはい。


 ほぼ急造コンビなので連携もロクに練られておらず、相棒戦とは名ばかりで個人戦を一度で二回消化してるかのような戦い方だ。リングが狭くなってる分選手どころかレフリーすらも居心地悪い事だろう。


 というような個人戦以上に今後の課題を残してしまうような有様ではある。


 それでも順当に勝ち上がりはしていくし観客もそれなりに盛り上がって楽しんでいる。


 連携の荒さが目立つがその分上手く連携がとれたり技が噛み合って見事な一撃となったときなど会場は沸いた。


 やってる当人らもそういうのもあって実感しだしてからは意識して動くようにもなっていた。決勝戦での段階ではスタートのときのぐだぐだな印象薄れるぐらいのプロレスを披露させれてた。


 こうして優勝したのは冒険者二人組。ハーフエルフと人間の急造コンビであった。


 対戦相手に個人戦優勝者のガーゼルの親戚という魔族が居たのだが、彼ほどの巨体やパワーがあるわけでもない上に相方との連携が上手くとれずに自爆して隙を生じさせてしまって敗北してしまった。


 優勝者二人は今回の件で意気投合したのか、大会終わったら互いの所属するパーティーと合同でどこかでクエストしようなどと固い握手を交わし合いながら語り合っていたという。


 うむうむそういうのイイねー。勢いでやらせてみた急かした上でのコンビ結成の成功例だ。来年はちゃんと期限設けたりするけどこういう良い意味での出会いなんかも出て欲しいとこだね。


 危なっかしいとこもあったがなんとか相棒戦も優勝決定まで漕ぎつけれた。


 祭りも盛況だし部族の顔見世と少なからずのイメージ改善の最低限の目標は達せれたと思う。明日以降の報告や計算次第で変わる可能性もまだあるとはいえ概ね成功といえるだろう。


 前々からの構造でなく思い付きからのものとはいえやってみるもんだな。


 こういうのが必ずしも成功するわけではなく寧ろ失敗例のが多いのは承知してる。計画性など数々の予め用意された要素があればこそ成功率高い企画は成立するのであって。


 それを踏まえてだ。皆の為にもなってるわけだし俺も得る物は一応あったしでもう一度言おう。「やってみるものだな」と。


 今後もこんなちょいと緩いぐらいのノリでやっていけたら楽なんだろうけど、世の中そんなに甘くはないよね絶対。


 うんまぁそういうなるべく甘い世の中を俺の目の届く範囲内ぐらいではまかり通るよう頑張れって話だけどさ。

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