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第二十三話「サクラ」

 サルアの村に着いた。村の門前に立つ男にリデアが声を掛けると、男は待っていましたとばかりに喜んで門を開けてくれた。国防騎士団とやらの隊長の肩書は、伊達じゃないな。デレデレと鼻の下を伸ばす男の様子を見ていると、どうやらそれだけでもないようだが。

 村に入ってまず、サルアの村の規模が俺のいたソルディアよりもはるかに大きいことに気がついた。少なくとも数百人規模の村であることは間違いないだろう。三、四十人程度だったソルディアと比べると活気が違う。村自体の豊かさではソルディアも負けてないと思うが、人の数による活気の差だけはどうにもならない。さすがに大国アーメイル領内の村という所か。リデアに貰ったように、既にこの場所は地図にも載っているわけだから、行商に来る者もいるだろうしなあ。

 そう思いながら眺め歩き、俺達は村で一番大きいと思われる家を探す。そこが村長の家であり、王女が匿われている場所だと門番が言っていたのだ。既に昼時で腹もすいているが、飯の前にまずは王女に会わなければな。リデア達は職務としてだろうが、俺には王女により高い値段で傭兵として雇ってもらおうという目論見がある。旅をするための軍資金をアーメイルで流通する通貨で揃えることができれば、しばらくは安泰になるだろうからな。これから先、命の危険と隣り合わせの展開になりそうだってのに、タダで協力してやるほど俺はバカじゃないんだ。

 村長の家に入ると、奥の部屋へ案内された。はたしてそこには、王女と言われるにはまだ幼さの残る、黒髪でボブカットの美少女がいた。また、その傍らに「銀の乙女」と呼ばれる女騎士、ラクロメイアが控えている。銀髪と銀の鎧から来たあだ名らしい。ちなみにリデアは「金の乙女」だ。まあ彼女も鎧は銀製だけど。


「サクラ様!」

「リデア!それにロゼル、アシートも。無事だったのね!他のみんなは・・・?」

「・・・私の部隊で生き残ったのは私達三人だけです」

「そう・・・なんだ。ごめんなさい、不躾に聞くことじゃなかったよね。殿なんて危険な事を任せたのは私なのに」

「いえ、そんな・・・。私達はここにいるらんまるとリーン、二人のおかげで追っ手のジェデクを倒し、ここに来ることができました。」


 王女というにはやや噛み砕いた物言いをするんだな、この子は。まあ元はただの日本人の女子高生って話だ。担ぎあげられただけならこんなもんか。

 サクラが俺の方を見ている。目があってしまった。女王と見つめ合うというのはそれこそ礼儀に欠けるものなのかも知れないが、そんなものは知るか。むしろ堂々と無作法でもジロジロ眺めてやる。俺は生来反抗的な人間なのだ。サクラ王女は散々フォーラムの雑談スレで崇められていただけあって、かなりカワイイ女の子ではあるな。


「あなたたちが・・・」

「そうだ。俺はらんまる。こっちは部下のリーンだ。アンタの部下が悪党に襲われてたんでな、助けてやったのさ」

「そうですか・・・ありがとうらんまる、リーン」

「礼を言われるほどのことじゃないの」


 リーンは嬉しそうだが、俺はそれだけでは満足しない。


「礼なら形よりも物の方がいいんだがな」

「らんまる!女王になんてことを言うんだ!」


 リデアが諌めてくる。うるせーな。俺には俺のビジネスがあるんだ。


「これから先のこともそうだ。俺は相応の報酬さえ貰えるなら何だって引き受けるつもりだ。なんならリーボアとかいう奴を暗殺してきたっていい。まあ、それで全て解決するとも思えんが、俺ならそれも行えるだろう。」

「随分と自信家なんですね」

「可能なことを言っただけだ。俺のインビジブルは、今の所はおそらく誰も破れない」


 これは神であるンデ・ギオガを除いては・・・だが。今奴が何をしているのか知らんが、奴ならば俺程度容易いだろう。なんせ、この世界の神だからな。


「そうですか。そして報酬さえ頼めば何を頼んでもいいと、そうですね?」

「ああ、好きにしろ」

「では一つ、頼みたいことがあります」

「なんだ、言ってみろ。王女様」


 彼女は一度深呼吸する。その後真剣な顔で言った。


「らんまる、リーン、あなた達にお願いがあります。私達と共に竜退治に行きましょう」


「・・・は?」

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