第二十二話「サルアの村へ」
三人のジェデクの部下達から、俺は二つのことを聞きだした。一つはジェデク以外にバルドゥ、ザーハというリーボアお抱えの傭兵達が王女達を追跡していることだ。リデアは王女が生きていると確信しているようだが、合流地点にさっさと急いだ方がいいかもしれない。
そしてもう一つは、リーボアは女の死体を王女の死体と偽装して用意しているということだ。奴はその死体を利用して王女の葬儀を執り行うつもりのようだ。これで本物の王女が生きていようがいまいが、このままでは王女はアーメイルにおいて死人として扱われることになる。そうすることで、次期指導者の必要性を国民に促すつもりなのだろう。そしてこれは今眺めていたフォーラムを見る限り、実際その通りになりそうだ。
だがまあフォーラムを過信するのも危険か。フォーラムは正直くだらない書き込みも多いが、情報の宝庫だと思っていた。だからこそ俺はできるだけフォーラムをチェックし、世の流れを把握しようとしていたのだ。だが、それでも俺は先ほどまでバルタイアのような新興国家について何も知らなかった。フォーラムは所詮は人口に膾炙するような出来事にしか注目が集まらないのかもしれない。
情報提供はしてくれたので、武器と装備を取り上げて三人は解放してやった。丸腰でも全員密偵がメインクラスだし、インビジブルさえあれば生きて町に帰れるだろう。まあ、彼らがどうなろうがどうでもいいんだけど、これはジェデクが元々アーメイルの諜報部の隊長で、その仕事のために集めた人材だからなんだと。情報部に裏切られてたんじゃ、暗殺を未然に防げなかったのは仕方が無いのかもな。まあそんな奴に仕事を任せる辺りがどうかと思うが。
「どうするんだリデア。このままじゃ王女を保護した所で、アーメイルはリーボアの物になってしまうだろう」
「・・・とにかくサルアの村へ行こう。」
「わかった。・・・そうだ、その前にマップデータを貰ってもいいか。」
「構わん、アーメイル領内のデータでよければだが」
彼女から受け取ったデータをブレイドに反映させると地図アプリ内にアーメイル領の地図が表示された。規模は想像していたよりもバカでかい。さすが大国と言われるだけあるな。ソルディアの位置はわからないが、現在位置から考えればおそらく北西の方角だろう。まあ、しばらく戻るつもりはないがな。サルアの村は南だ。
「サルアの村までは結構距離があるな」
「ああ、それに馬が無いし徒歩だ。三日はかかるかもしれない」
「ならこいつを使おう。」
腰にあるデッキケースからヘイストのカードを取り出す。
「何だそれは」
「ヘイストのカードさ。これを使えば今から出発しても明日の昼には着くはずだ。」
「それは・・・凄いな。助かるよ。カード使いとは、随分便利なクラスなんだな。」
「まあ、スキルや魔法を封印する必要があるけどな。アンタやアンタの部下のロゼルやアシートの有用なスキルなんかも、カードにさせてもらえるとありがたいんだがな。」
「考えておこう。だがまず先にやることがあるということを忘れてもらっては困るぞ、らんまる」
「それはわかってるよ。とりあえずは王女の無事が確認できてからでいいさ。さあ、そろそろ出発しよう」
「ああ」
俺達はサルアの村へ出発した。もちろん死体から装備は回収したよ。いくつかの装備は血が付着したままだけどしかたない。装備自体は良い物なので、これでもそれなりの値段にはなるだろう。剣を使うようになってから大分重たいものも持てるようになってきたのだが、さすがに10人分の装備となると重いので、リーンにも持ってもらった。元々そうだったが、今の彼女の能力は俺よりはるかに高い。ユニークモンスターだからなのか、呪いに打ち勝った存在だからなのか、それはわからないが・・・。
遭遇するモンスターは蹴散らしたり蹴散らさなかったり。基本的には障害になる奴だけを取り除いた。素材の採取をしてる暇もないしな。
三人を新たに交えて五人になった俺達のチームワークはそれなりだった。さすがに国防騎士団長と名乗るだけあってリデアの戦闘センスは高いし、部下の二人もなかなかいい動きをする。ロゼルはサブクラスに魔法使いを選択し、炎系の魔法を取得したナイトで、剣に炎をエンチャントして戦う姿は見てるだけで結構かっこいいし、火力も高い。アシートはサブの狩人の隠密と索敵能力を活かし、メインのアーチャーの弓さばきで戦うかなり本格的な感じだ。だがロゼルに少し素人臭さが漂うのに対して、アシータは戦いに慣れている感じがする。何か理由があるのだろうか。
その日の晩はリデア達の簡易テントで寝た。消費型の簡易テントは快適で、今までは寝袋にくるまって野宿をしていたから新鮮だった。 同じ男キャラ同士なのにロゼルは俺と寝るのを嫌がったので結局3つも使ってしまった。勿体ない。これだからボンボンは・・・。
飯は彼らの携帯食糧とかいう干し肉とセラの持たせてくれた保存食を五人で分けたが、セラの料理のがうまかった。当たり前か。サルアの村へ行けばまた食糧も買いたせるので、セラに貰った分は全て食べてしまっても大丈夫だろう。といっても、まだまだ量はあるのだが。随分たくさん持たせてくれたんだなあ。
朝も早く起き、同じように朝食をとり、早い時間に出発した。おそらく昼にはサルアの村に着くだろう。




