第二十話「王女暗殺計画」
「昨夜リーボアは配下を引き連れ、サクラ王女を暗殺しようと襲いかかった。私達はどうにかそれを阻止したが、奴は今もなおジェデクのような裏切り者や傭兵の連中に王女の後を追わせている」
「ならお前たちがここにいて、王女は大丈夫なのか?」
「ああ、王女の護衛は他の隊が務めている。殿を務めた我々も、南のサルアの村にて落ち合うことになっている。」
「なるほどな。しかしなぜリーボアはそんなことをするんだ。大国の大臣だ。かなりの地位だろう」
「それなんだがな・・・、おそらくリーボアは王女を暗殺し、自分がアーメイルの王になるつもりだったのだろうと思う。奴は隣国のバルタイアに戦争を仕掛けたがっていた。それを頑なに許可しない王女を嫌ったのだろう」
「バルタイア。聞いたことのない国だな」
フォーラムでは見かけたことが無い名前だ。まあ俺も常にフォーラムを確認してるわけではないから、知らないことがあっても不思議じゃない。
「アーメイルに比べて規模が小さい国だからな。知らないのも無理はない。バルタイアはアーメイルとリシド、二つの大国を行き来する商人達が、両国間で儲けた財を資本にして築こうとしている新興国家だ。」
「なるほど。規模は小さいが金は持っている、というわけか。戦争を仕掛ける相手には好条件だな。」
「そうだ、奴もそう主張していた。だが、リーボアの場合はそれだけではないだろう。奴もまた商人なのだ。商売敵には退場して貰い、自分達の商隊の販路を確保したいという狙いもあるのだと思う。」
「なるほどな。商人としてのリーボアのそういう気持ちもわからないでもないな。だが、それならばなぜ王女は許可しないんだ。」
「元々難民キャンプのリーダーだった女王は、人同士の争いを望んでいない。戦争になれば血が流れるしな。やっとモンスターの脅威から解放され、国の庇護の下、安心を手に入れ始めている人々に、そのような負担を強いたくはないと彼女は望んでいるのだ。」
「・・・ご立派な考えだな」
「ああ、私もそう思う。だからこそ彼女はアーメイルの王女に選ばれたのだ。しかし、だからこそリーボアに・・・。一刻も早く、王女の無事を確認したい。そろそろ準備しよう」
「待て、急ぐな。とりあえず話はわかったが、まだすることがある」
「なんだ」
「捕虜への尋問さ」
先ほどの戦闘で拘束された四人は未だにキャッチャーネットがほどけていない。どうやらこのレベルになると抵抗さえ少なければ拘束が20分近くは持つみたいだ。
「さあて、何か言うことはあるか?」
「へっ・・・お前に話すことなんてねえよ!」
一人がツバを吐きかけてきた。俺の頬にかかった。それを見て他の三人もにやついている。
「そうか・・・ならお前は用済みだな」
俺は腰の剣を抜き奴を拘束している糸を切ってやった。「えっ」っと驚いた顔をする男。しかしそれも束の間、俺はそのまま露出した左腕を肩から斬り落とす。男の悲鳴が聞こえるが無視して同じように右腕、右足、左足と、同じように斬り落とした。
そうすると男は血を流した達磨のような形になった。声にならない悲鳴を出して騒いでいる。うるさいので喉も切った。まあこいつはそのうち出血多量で死ぬだろう。
俺は他の三人に向き直って尋ねる。
「お前らもこうなりたいか?」
「冗談じゃない!何考えてんだお前!」
「おいおい、暗殺者集団が何言ってるんだ?まさか捕虜として丁重に扱ってもらえるとでも思ったのか?バカだなー、そんなわけないだろ」
「だからって・・・」
泣き顔になる男たち。
「おい!何をしているんだらんまる!」
リデアが凄い顔で睨んでくる。
「何って、尋問さ。このまま連れていくわけにもいかないだろ。有益な情報を提供してくれた奴は解放するし、そうじゃなきゃああなるってことを示してやらないとな。」
「しかしこれは・・・やりすぎだ」
「俺が助けなきゃお前らもこうなってたんじゃないのか?まあジェデクはお前を愛妾にするつもりだったんだっけか。まあどっちでもいい。俺が捕まえた情報源なんだ。お前は黙っててくれ」
「くッ・・・」
リデアは苦虫を噛み潰したような顔すると振り向いて歩いて行く。アシートもロゼルもそれに付いていく。ロゼルはずっと俺を睨んで来ている気がするが。リーンはその姿をぼーっと眺めている。
まあ騎士気取りの連中にとって、こういうのは邪道なのかな。だが俺はアーメイルの騎士なんかじゃないし、俺のやり方でやらせてもらう。
向き直って、
「さあ、何か知っていることがあるなら話してくれ。まあ話さなくても別に俺はおもちゃが増えて楽しいんだが」
「話す!話すよ!何が知りたいんだ」
顔を真っ青に染めた男が即答する。
「おい!お前、正気かよ」
「お前の方が正気かよ。俺はあんな風に殺されて死ぬなんてゴメンだ!・・・いいさ、お前は黙ってジドルの野郎と同じ目に合えばいいさ。俺はゴメンだがな!」
「お、俺もだ。アーメイルから離れれば、リーボアが王になった所で俺を殺すことなんてないだろう。だが目の前のこの男は・・・」
「わ、わかったよ・・・。俺だって、別に話さないって言ったわけじゃないんだ。俺だって死にたくないし」
ジドルというのは俺にツバを吐きかけて来た男のことのようだな。連中は奴の扱いにビビったのか本当にあっさり陥落した。
ちょろいぜ。




