第9話 複合魔法
翌日フランツ達は帰ってこなかった。
どうやらギルドによると5日程度の討伐を予定しているらしい。
そこでリュカは自分の実力向上を図るため師匠であるルーネに相談をしていた。
「ルーネ様。」
「せっかく師弟関係を結んだんだ。これからはお師匠さまと読んでくれないかい?」
「分かりました。お師匠さま。」
「うーん。リュカ君は可愛なぁ。男というのが信じられないよ。」
「僕は男です!後サラッと尻を撫でないでください!」
リュカの師匠となった魔法使いルーネは腕こそ一流ではあったが性格に少し難があった。
手癖が悪いのである。
隙があればリュカの身体中を撫でまわし、特にリュカの尻を気に入っているようであった。
リュカは師弟関係を結んだんだのが間違いだったんじゃないかと思ったが、気を取り直して実力向上について相談した。
「お師匠さま。強くなりたいですんが具体的にどうすればいいのでしょうか?」
「そうだね。今日は良いものを持ってきたんだ。」
そう言うとルーネは水晶を取りだした。
「これは何ですか?水晶?」
「そう。これは魔力の質を図る魔法具なんだ。手をかざしてごらん。」
リュカが手をかざすと水晶が緑色に輝いた。
「ほう。これは風の属性だね。どうやらリュカくんは風の魔法が向いているようだ。」
「風ですか?」
「そうだね。確かうーん風の魔法は覚えていなかったよね?まずウインドを覚えようか。まぁウインド自体初級魔法だからそんなに覚えるのは難しくないだろう。とりあえず訓練所に行こうか。」
ギルドの訓練所に着き、ルーネはリュカに実際にウインドを使って見せた。
「ウインド!」
訓練用の藁人形にウインドを放つと藁人形は真っ二つになった。
「こんな感じだね。切り裂くような風イメージすれば出来るはずだよ。」
「切り裂くような……ウインド!」
藁人形は真っ二つになった。
「さすがエルフ!魔法のセンスがいいね。初級だけど一発で成功させるとは。」
「ありがとうございます」
「よし。じゃあ次のステップに行こうか。次は初級魔法を応用してみよう。」
「応用……ですか?」
「そう。初級魔法と侮ることなかれ。使い方によっては中級魔法とも張り合えるんだよ。」
「中級魔法と!?」
魔法はクラス分けすると初級、中級、上級、神級と分かれている。
初級が使えて一人前の魔法使いクラス、中級で王宮お抱えの魔法使いクラス、上級で英雄クラス、神級で神クラスとなっている。
「そうだよ。まぁ見ててごらん。ファイア!ウインド!そしてこれを混ぜる!」
ルーネは左手でファイアを出し右手でウインドを出した。
それを放たずに言葉通りに手をくっつけて混ぜた。
そしてそれをさっき真っ二つにした藁人形にぶつけると藁人形は粉々になった後燃え尽きた。
「ええー……」
リュカはあまりの光景にドン引きした。
藁人形とはいえ耐魔術用のコーティングは施されており初級魔法程度じゃ何発当てても壊れたりしないはずであった。
それが目の前で一瞬にして灰になったのである。
リュカがドン引きするのも仕方がなかった。
「こんなもんかな。名付けて複合魔法さ。いきなりはこんなことできないと思うから両手から魔力を同時に放出する練習をしようか。」
サラッと言ったが、今リュカの目の前で起きたことは世界中の著名な魔法使いが白目を向いて倒れるほどの光景である。
リュカは複合魔法なんて名前は勿論、理論も聞いたことも考えたこともなかったのである。
ルーネがどれだけデタラメな存在ということが分かったリュカはこれでギルドランクがSならSSSはどんだけデタラメなんだと気が遠くなった。
考えたところで自分の想像もつかないぐらいすごいのだろうと、とりあえず深く考えることはやめて練習をすることにした。
ちなみに魔力を同時に放出なんて芸当をすぐに会得できるわけもなくリュカが魔力を同時に放出出来るようになったのはこの日から三日後のことである。
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