第38話 疫病神
フランツに子爵という爵位が授与されてから一週間が経った。
その間特に問題は起こらず、リュカ達は本来の職業である冒険者として活動していた。
「はあ。男爵をすっ飛ばしていきなり子爵とは王も思い切ったことをするね……よく重臣達がそんな暴挙に近いことを許したね……」
「いえ、相当揉めたようですよ。リュカ様。」
「ん?なんでユーリがそんな事分かるんだい?」
「王都にいる知り合いから手紙を貰いました。なんでも男爵からならともかくいきなり子爵に任命したというのが納得できない貴族が多いのだとか。貴族派が反発し、騎士派は王の考えに賛同しているらしいです。さらにここ最近中央では魔王軍の侵攻をうまく止めることに成功しています。その結果余裕が出来たのか一旦は協力をしていた騎士派と貴族派での対立が大きくなっているらしいです。」
ユーリの知り合いは何者なのか疑問に思ったリュカであったが、すこし聞くのが怖かったのでそれには触れないことにした。
「ところで騎士派と貴族派ってのは何なの?」
「簡単に言うと王の弟であり騎士団のトップであるライド・バルドル将軍と貴族筆頭であり宰相のフォード・ラティセル公爵による権力争いですね。まあライド将軍は特にラティセル公爵を含むところはないようですが昔からライド将軍に文武の両方で及ばないことから相当ライバル意識を持っているようですね。」
「貴族の争いごとか……まさかフランツが火種じゃないだろうね!?」
リュカはここ最近のフランツの行動、特に王都でやらかしてきたことの数々を考えるとフランツもラティセル公爵に睨まれているのではないかと不安になった。
「いえ。フランツ団長は宰相閣下の命を救ったことがあるのですごく気に入られています。恐らく真面目な方なので単に例外を作るのが許せないだけでしょう。事実この町に帰還するにあたって護衛を付けてくれたのも宰相ですし。」
「命を救った?何があったんだよ……」
「はい。王宮でのパーティに参加した際、賊が入り込み宰相を狙ったのですがフランツ様がその賊を撃退しました。」
「本当にあの男は厄介ごとに巻き込まれやすいな。」
「私は慣れてきましたよ。」
リュカはその後一時間に渡ってユーリに愚痴を言い続けた。
「リュカ!ギルドから依頼だ!」
フランツがいきなり執務室に飛び込んできた。
「落ち着け。依頼?」
「ああ!エマさんが俺たちに森の巡回に行ってほしいらしい。」
「なんだ。いつものことじゃないか。なにをそんなにあわてているんだよ。」
「実は森の魔物たちが群れを作り出しているらしい。前回の襲撃のこともあるから早急に調査してほしいらしい。」
「なるほどね。ユーリ!すまないんだけど現在屋敷にいる人を集めてくれないか?」
「了解です。」
そしてルーネ、アース、ユーリが集まった。
エミリアとカイル、アイリ、ラスクは現在隣町に依頼を受けに行っていた。
ゼノビア王女は風邪を引いておりロスさんが看病をしていた。
そしてマリーは書類をソウケンに届けに町に出ていた。
「今回はフランツ、お師匠様、アースさん、ユーリ、僕で行くのか。戦力的には十分だろう。」
「ワン!」
「ああ、そうだねシグルスもいたね。コレなら大丈夫だ。」
「森でござるか。拙者あまりあそこが好きでないでござる。特にフランツとは行きたくない場所でござる。」
「どういうことだよ兄貴!」
過去フランツとともに森に行きアースは何回も気絶するはめにあってたり、リュカに至っては大怪我をしてばかりだった。
先日に森に行ったに時も寝ていたミノタウロスの尻尾をフランツが踏み、怒り狂ったミノタウロスに大きな斧で真っ二つにされかけるというまるでコントのような事態に陥ったばかりだった。
他にもフランツが何気なく投げた石がたまたまランドドラゴンに当たり、危うくブレスで昇天する羽目になるところであった。
そのためアンダンテの面々にとってフランツと森にはあまり行きたくないという空気が漂っていた。
「文字通りでござる。お前と行くと九割近い確立で面倒なことになるでござる!」
「確かにフランツ君と森に行くとリュカくんもアースも無事では帰ってこないね。」
「確かに……あのランドドラゴンのときは死ぬかと思った。」
リュカとルーネは真剣な表情でうなづいた。
「ひどいぜお前ら……」
「別に拙者たちは嘘は言ってないでござるよ。」
「まあまあ。みなさんそんなに何度もひどい目になんかあいませんよ。あまりフランツ様をいじめないであげてください。」
「アイリ……お前良いやつだな。」
フランツはユーリの一言に感動していた。
「いえいえ。その代わりお給金アップ期待してますわね。」
「調子の良いやつだな。まあいい!お前ら見てろよ。俺を疫病神みたいに言いやがって絶対に何もおこらずに無事に帰ってきてやるからな。それに今回は討伐じゃなく偵察だ。無理する必要なんかないぜ。」
フランツは自信満々でそう言ったがそんなフランツの発言をどうも信用できない一同であった。
次の日リュカたちは戦闘力のないマリーに言付けて森へと出発するのであった。
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