第17話:旧式コードの整理と、新次元のパッチ適用
第17話:旧式コードの整理と、新次元のパッチ適用
「……ふむ。これまで俺が『世界の理』だと思っていたものは。さらに上位の言語から呼び出された関数の一つに過ぎなかったのか」
「道理で、既存の魔導書には記述漏れ(バグ)が多いわけだ」
上位世界の傲慢な監査官を、存在消去に追いやってから数日が経過した。
あとに残されたのは、巨大な魔力の残滓と。
「神界の高次元魔法」という名の、膨大な実行ログだ。
俺は邸宅の書斎で、空中に浮かべた数千行の黄金のソースコードをスクロールさせていた。
前世のデータアナリストとしての探究心が、心地よい熱を持って疼く。
未知の高次元データを解析し、自分たちのシステムに統合していく。
この作業は、この上なく知的で、かつ背徳的な愉悦を孕んでいた。
これまでの「火球」という魔法は。
「燃焼」という現象を呼び出すだけの、単純なマクロでしかなかった。
だが、神聖構文を用いれば、燃焼という『概念』そのものを再定義できる。
水中であっても、酸素のない真空であっても。
「燃えるという概念すらない空間」であっても、俺の意図通りに燃え続ける。
そんな「絶対的な業火」へと、リファクタリングが可能なのだ。
「 Allen様、またそんな難しい顔をしてデータを睨んで……。休憩の時間ですよ」
「お気に入りの冷製トマトスープと、焼きたてのフォカッチャです」
セシリアが、トレイを持って執務室へ現れた。
「ああ、ありがとうセシリア。……実は、監査官たちが残していった高次元データを解析してね」
「この国の防衛システムを……今、一気に『最新メジャーバージョン』にアップデートしていたんだ」
「最新版、ですか? 今のままでも、十分すぎるほど平和で安全な気がいたしますが……」
「いや、これまでの結界は『不審な魔力を物理的に弾く』という、物理ファイアウォールだった」
「だが新しい高次元パッチを当てれば、『悪意ある意図』そのものを論理的に無効化できるようになる」
「いわば、この空間そのものに『バリデーション(不正入力拒否)』を施したわけだ」
俺はセシリアを伴ってテラスに出た。
眼下に広がる、黄金の稲穂が揺れる街を見下ろす。
新次元のコードをアセティア全域にデプロイ(適用)した瞬間。
世界を包む空気が、一段と澄み渡るのを感じた。
景色が、まるで高解像度モニターのように鮮明に輝き出す。
街の中央にある『浄化の噴水』からは、虹色の輝きを放つ純度百%の魔力水が溢れ。
人々の顔には、生命の活気がみなぎっている。
さらに、街の外側に広がる「元・死の荒野」の境界線。
そこには黄金のグリッド線が、美しき檻のように薄く浮かび上がっていた。
これが、俺が構築した「次世代型・多次元防衛グリッド」だ。
「…… Allen様。見てください……! 噴水の飛沫が、まるで生きた宝石のように空中で輝いています!」
「ここが地上の国だなんて、誰も信じてくれないでしょうね」
「出力設定を少し弄りすぎたかな。……だが、これでいい」
「この【アセティア】は、完全に独立した高次元システムへと進化したんだからな」
セシリアが俺の肩に寄り添い、ハーブティーの香りに目を細める。
至福のひとときだ。だが……。
「……さて。この『あまりに平和で美しいコード』に惹かれて。また不適切な外部データ(邪魔者)がやってきたみたいだ」
俺の網膜には、街の正面ゲートに近づく隠蔽魔法のゆらぎが投影されていた。
俺の国の異常な急成長と技術を盗み出そうとする、近隣諸国の特務工作員たち。
「セシリア。……彼ら、自分たちは完璧に隠れているつもりらしい」
「けど、管理者である俺の目からすれば、空中に『ここにスパイがいます』という真っ赤なサインが点滅しているようなものだよ」
アレンの圧倒的な「論理的守護」の前では、どんな大国の陰謀も無意味だ。
ただの「即座に記述修正されるべきエラー」に過ぎない。
こうして、アセティアのインフラは神の領域へと至った。
「……さて、次は。セシリア。……君を『役立たず』として追放した、腐敗しきった神殿のログでも覗いてみようか」
彼らがセシリアに押し付けた『呪われし聖女』という偽りのラベルの裏側。
その隠されたバックドアを、今から暴き――。
俺の大切なパートナーを傷つけたことへの。
徹底的な復讐を遂行してやるとしよう。
高次元パッチによって、アセティアがさらに美しく、そして強固な「聖域」へと進化しました。
アレンのQOL(生活の質)へのこだわりは、神の技術すらも飲み込んでしまいます。
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次回、いよいよセシリアを苦しめた「教会」へのリベンジ編が始まります。
明日19:00、スカッとする展開をお届けします!




