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商店街〜ROUND2

試験的に実在の技名を使っています

後で修整するかも知れません

 奇妙な感覚だった。

俺の身体自体は部屋でコントローラーを握って座っている。

でも同時に商店街であの青年となって戦っている自分もいる。

触覚も再現した超絶リアルなVR体験が一番近いのかも知れない。

しかし自由に動けるのは寧ろ商店街の自分の方で、座っている自分はまるで金縛りみたいに指先以外が上手く動かせない。


指先…指?もしかして必殺技が出せるんじゃないか?

試しにコマンド入力すると本当に波動拳が出せてしまったのだ。


 小鬼に組み付かれていた警官の顔が唖然とした顔で俺を見ている。

出した俺自身びっくりしているので当然だろう。

どうやらこの人には小鬼も俺も見えているらしい。

その隣でもう一人の警官はまるで事態を飲み込めていないらしく懐中電灯を握り締めて辺りをキョロキョロしている。


…この違いは何だ…?


そんな疑問を考える隙も与えず遠くの破壊音に反射的に身構える俺。


そうだまだ敵が残っている筈だ。今はそちらに集中しよう。


 歩みを進めようとすると何故か足が動かない!?

慌てて足元を見ると骨の腕が地面から飛び出し俺の両足首を捕まえていた。


恐怖で口から思わずふぁっ!?と空気が漏れてしまった…が、それをキャンセルする様に「くっ…。」と言い直す。

見えている警官の手前ちょっぴり格好つけたいのだ。


ズビズビッという効果音と共に骸骨剣士が地面から迫り出してくる。


ーあれ?あのゲームにこんな攻撃あったっけ?


足元を掬われる形になり倒れそうになった俺はそのままの体勢から反撃を試みた。


「足なら!これを喰らえ!『幻影脚』!!」


俺の左脚が残像を描きながら猛烈な連続蹴りを繰り出す。

蹴り上げられ地面から引き摺り出された骸骨剣士は、そのまま為す術も無く打ち砕かれていく。


スコーーン!


小気味良い音を立てて右上段蹴りが髑髏を粉砕し、骸骨剣士はドットとなって弾け飛んだ。


 改めて先程の破壊音の方に目をやる。

大男が巨大なハンマーで歩道端にある電気設備の箱を叩いていた。

あと数回で間違い無く破壊されてしまうだろう。

まずい!あれが壊れたらこの町内一帯が停電してしまうんじゃないのか?

…しかし今から走って行っても到底間に合わない…!?



出せるだろうか…超必殺技が!


両腕を眼前でクロスさせて…気力を集中!脇まで引いてそのまま前方へ気を放出する!


「覇王っ翔吼拳!!」


巨大な気の塊が大男のハンマーをはじき飛ばした!

しかしそのせいで決定打を与えるに至らなかった。


しくじったか…でもまだ俺の中にパワーが残っているのを感じる。

そのまま両手を合わせて気を集中させると即座に青白い光が集まって来た。


…溜める。


…勢い良く押し出す!


『真空っ波動けぇーーん!!』


巨大な気がビームの様な軌跡を描いて飛んで行き一閃!!直撃された大男はそのままドットとなって消えてしまった。


 警官隊の中から疎らに歓声が上がる。

恐らく見えている人達だ。

ギャラリーっぽい声のざわめきにかつてのゲームセンターを思い出す。


 状況を察するにこれで全ての敵を倒したらしい。

ほっとした瞬間、全身から力が抜けて意識も遠くなる。

記憶が途切れる瞬間、兄がニコニコしながら9.5点のプラカードを挙げているイメージがして少しムカッとした。


気が付けば自室でテーブルを前に座っていた。

テレビでも観ながら寝落ちしていたのだろうか?

それにしても妙に生々しくて変な夢だったな。


でも…。


「プラカードは別のゲームだろがぁ!」


と何も無い空間にツッコミを入れてみた。


「えっ…?」


ツッコミを入れたその手には古めかしいコントローラーが握られていたのだ。

これはまだ兄と一緒に遊んでいた頃のもの。

もしかして実家から持って来ていたのか?本体なんて何処かに仕舞い込んでしまってここには無いのに?そんな馬鹿な。


 まさかあれが夢じゃ無かったとでも言うのだろうか?

訳がわからない。でもとりあえずそろそろ日常生活も始めなくては。

時間を確かめる為にTVをつけてみると映ったのはお昼のバラエティ番組らしい。

極彩色のセットに司会者と芸能人、生放送らしく大勢の観客が座っている。

ぼんやりしているとTVから歓声が聴こえてきて思わずのぞき込んだ。


 画面に映っているのは確かゲーム好きで有名な女優さんだ。

なにやら興奮して腕をぐるぐる回しながら熱弁を振るっている。


昨夜とある商店街で起こった騒動についてーってあれ?それって俺の事じゃないか?


途中で映像が流れると、やはりあの青年となった俺がはっきりと映っている。

女優さんが話題にしてくれているのだ、嬉しくない訳がない。

少しニヤけていると、余りにはっきり見えていて嬉しさより恥ずかしさが勝ってしまう。

深夜の商店街は案外明るいのだ。


「これ何が起きているか分かる人は挙手ー!」


司会の言葉に合わせてカメラアングルが引くと、観客席からぱらぱらと手があがっていた。


やはり見える人と見えない人が居るのだ。

すかさずあの女優さんが熱っぽく語る。


「何でこれが見えないのぉー?波動拳よ波動拳!」


数人がうんうんと頷き、会場がざわめき出すと芸能人の誰かが叫んだ。


「その波動拳って何なんですか?」


「えっ?気を撃つんですよ!こうして…こんな感じで!」


俺は見てしまった。


一瞬女優さんの手がダブって見えそこから迸った光がセットの端を破壊したのを!!


会場は騒然、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいる女優さんをアップにしたところでCMになってしまった。


一体何が起こっているのだろう?

これはもはや笑っている場合じゃない。

現実が何かに侵食されている、そんな感覚に思わず背筋が寒くなった。

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