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ゲームセンターさがし

カーテンの隙間から赤味を帯びた光が溢れノートを照らしている。


「そうだ…これだ…あいつだ…って一体なんなんだ…。」


これは兄のノート。

10年以上前の話になるが、要らないと言うので俺が貰って落書きをしていたものだ。


当時、俺たち兄弟はよく連れ立って何軒かゲームセンター巡りをしていた。

というか半ば強制的に兄からの「行くぞー」という声でついて行っただけなのだが、俺もちょっぴりドキドキしながら夜のゲームセンターの雰囲気を楽しんでいたので兄弟として良い関係性だったと思う。

ただもう社会人だった兄に対してまだ学生の俺との財力の違いだけは不満だった。


 そしてこの青年の絵は俺が遊んでいた様々な格闘ゲームの技を作品を越えて使えるキャラクターが居たらどうなるか?という落書きだった。

あの作品のこの技、こっちのあの技と描いていたらそこに兄も乗ってきて2人でげらげら描き込みながら笑った想い出のノートなのだ。


しかし今はもう兄もこの家には居らず俺から様子を見に行く事もほぼ無くなってしまった。


でも、ただただあの頃が懐かしい。

そしてこの絵そのままに現れたあの青年は一体何者なのだろうか。


 実家で丸一日のんびりした後、少し早いがマンションに帰る事にした。

道すがらゲームセンターに寄るためだ。

相変わらず横になっている父に対して母は少し寂しそうに玄関まで見送ってくれて正直、後ろ髪を引かれる思いがする。


…兄と共に一番よく通ったゲームセンターは更地になっていた。

もう建物があった痕跡すら無い。

林檎のマークが目印だったお店はコインパーキングに、宇宙人マークのお店はぬいぐるみキャッチャー専門店になっていた。

他にも数軒寄ってみたのだが何処も中身が空っぽのまま不動産会社の管理標が貼られていた。


 無理も無い、今は外出しなくても家庭用ゲーム機のオンライン機能で対戦が出来る時代。

自宅で殆ど事足りてしまうのだ。

そういえば俺も最近ゲームセンターに行った覚えが無い。

だが夜遅くまで人で賑わっていたあの頃あの場所の熱量は今でもしっかりと覚えている。

よく見かける常連さん達の笑い声、友人同士やカップルらしき人達…。

対戦台には必ず誰かが座っていたし、レースゲームは乱暴にガチャガチャと操作音を立て、ぬいぐるみキャッチャーも独特なBGMと大きさでかなりの存在感があった。


「次で最後か…。」


そこは商店街の端でひっそり、でも中に入ればいつも対戦で活気に溢れていた特別な場所。

この町に住むゲーム好きなら誰しも知っている様なお店だ。


…昔と変わらない『イーグル』という看板が見える!

はやる気持ちを抑えつつ入り口まで走ると目の前にあったのは照明の消えた真っ暗な店内だった。


「おや?お客さんかい?ごめんねぇここ去年で閉めてしまってね…。」

お店の中からひょっこり初老の男性が顔を出す。

頭髪には白いものが混ざり目尻もしわしわだが見覚えがある!ここの店長いやオーナーさんに間違い無い。

俺の事を何となく覚えているからと店内に招き入れてくれ、昔話が始まった。


 土地を遊ばせているよりは良いと副業で始めたこのゲームセンターイーグルは、格闘ゲームブームの波に乗って一時期そこそこの収益があったらしい。

しかし加齢や建物の老朽化、そして近年の不景気も重なりリース筐体の期日を持って閉店の決断をしたのだそう。

がらんとした店内にはカウンターと積まれたイス、そして趣味で集めたという数台の筐体が静かに置かれていた。


 オーナーさんにお礼を言って帰宅した俺だったが、正直ショックの方が大きくてため息交じりにぼんやり。

青年の事はすっかり頭から消え、いつの間にか寝てしまったらしく以降の記憶が途切れている。


その夜ブレーカーの落とされたイーグル店内で、残された筐体の1台に鈍い明かりが灯っていた。

実際のゲームの名前とか技名とか出したら怒られますよねぇ?

でもそれ以前に誰にも気が付かれないでお話が終わるかも知れませんねw

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