極めし者
こんなの書いて怒られませんように…
地平まで広がる大草原からは生命の息吹が感じられ、離れた高台まで草木の香りが届いている。
青空の下では緑色をした巨大な飛竜と狩人達が一進一退の攻防を繰り広げていた。
まず盾斧と呼ばれる武器を持った若い女性の狩人が飛竜の足元に斬りかかりバキンという小気味の良い音を立てて力を溜めている。
渾身の連撃を叩き込もうというのだ。
しかし緑色の飛竜はその巨大な体躯を捻ると驚きの素速さで長い棘の生えた尻尾を振り回し、いとも容易く盾斧の狩人を弾き飛ばしてしまった。
少し離れた所から弓を射っていた猫の面を被った狩人がここぞとばかりにその緑色の背中目掛けて矢を乱射する。
流石に姿勢を崩す飛竜だったが、攻撃に気を取られて近付き過ぎてしまった弓使いの狩人をひと睨みするとそのまま突進して押し倒してしまった。
ーーーその間たった数秒の出来事。
「やれやれ…。」
二人の戦いを遠巻きに見ていたベテランらしい狩人がそう呟き、ぱっと辺りに回復効果のある粉塵を振り撒いたかと思うと飛竜に向かって突進した。
小さめの盾と片手剣で翻弄しつつ、一見地味に見えるが小刻みな立ち回りで飛竜を誘導するベテラン狩人。
間違い無い、倒れている二人の狩人が体勢を整えるためだ。
「さて、うぬはこれをどう見る?」
俺は極めし者に連れられて高台の上から一部始終を見せられていたのだが、この突然の問いかけに不意を突かれてしまった。
思わず頭を抱えてしゃがみそうになるのを、すんでのところで踏みとどまり必至になって返答を考える。
「そ、そうですね…。」
まずは盾斧の狩人が無闇に大技を繰り出そうとして失敗した事、次に弓の狩人が攻め過ぎて逃げ場を失った事。
最後に片手剣の狩人は全体を把握して他の二人が立て直せる様に上手く立ち回っていた事。
気になったそれらを伝えてみた。
「うむ。それだけか?」
「えっ…。」
何かが足りないのだろうか?
な、何だ?あああああと何かあるか?何だ?何の事だ?他には…。
ーーーそうか!そっちか。
「飛竜も狩人達の隙を見逃さず、的確なカウンターで対抗していた…でしょうか?」
「ふむ…。では実戦にて直接その身で覚えるが良い。我について参れ!」
滑る様に走る極めし者の後を必死で追いかける。
それにしても、どうしたらこんなに早く走れるんだ。
いやよく見たらあの人飛んでないか?ズルくないか?
草原の先は起伏の大きな砂漠になっていて、少し歩き難い程度で足を取られたりはしないが、長時間居ると平衡感覚がおかしくなる。
ここに来るまでにすっかり日は落ち、辺りはもう闇の中。
しかし立ち止まった極めし者の指し示す先で、何やら怪しい光が繰り返し明滅していた。
「あれは…!?」
それは金と青の色をした鱗を持つ飛竜だった。
全身に纏った雷がバチバチと音を立てている。
「では逝くぞ!」
極めし者は見事なフットワークで飛竜の攻撃をいなすと的確に急所を突いていく。
俺も負けずに間合いへ飛び込んで行くと、小技からの連携で攻め立てる。
こうして俺達がこの飛竜との戦いを繰り広げていると、先程のベテランと盾斧の狩人達が駆け付け一緒に戦ってくれた。
今回ベテラン狩人は巨大なハンマーを振り回し、無駄無く的確に飛竜の頭を捉えて殴りかかっている。
やがて飛竜は甲高い断末魔の叫びをあげると、崩れ落ち動きを止めた。
「ありがとう助かったよ!」
俺は狩人達に声をかけてその後を狩人達に任せると、既に歩き始めていた極めし者を追いかけた。
ーーー俺に足りない何かを知りたいのだ。
「さて…うぬはここまでに多くの学びを得ているはずだ。それは例え今自覚が無かったとしても、必要な時が訪れればいずれ思い出し改めて理解する事もあるであろう。」
「は、はい!ありがとうございます。」
「では征け!そして楽しんで来い。」
俺は深く一礼をすると狩りの世界からログアウトした。




