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23/23

コンビニにて。

加筆修正しました(8/3 0:50頃)

 仕事帰りにいつものコンビニに立ち寄ると見慣れない貼り紙が目に止まった。

手描きのイラストが効いていて絶妙なレイアウトなのど。


なになに?『熊出没注意』だって!?


ここはよくある地方都市なのでそれなりに自然もあるが、流石に熊の生息域とは違う気がする。

それでも最近は意外な場所で野生動物の目撃談があったりニュースにもなっているからあり得ない話では無いのかも知れない。


顔見知りの店員さんが居たので少し聞いてみた。


「ああ、熊の事なんだけどね。バイトの子が何人か目撃したらしいの。でもね、熊じゃなくてパンダを見たって子も居てね。こんな場所に野良パンダは居ないでしょ?って言ったんだけど…その子、間違い無くパンダだって言い張るのよ。」


ーーーなんか怪しいぞ?


「それでね、警察にも来て貰ったんだけど、パンダの話をしたら怒って帰っちゃったのよ。」


そりゃそうだ。


とはいえ熊か、それに似た動物が徘徊している可能性もある。

そうだ!もしかしたらゲームキャラの力を借りて熊?を追い返す事が出来るかも知れない!

修行にもなるし案外面白そうじゃないか?


熊とか牛とかサンドバッグとかと戦ってみたいと思うのはある種格闘ゲーマーの性なのだ。


 レジを済ませて帰ろうとした瞬間、出入口の向こうから強烈な視線を感じた。

恐る恐る振り返ると、薄闇の中にぼんやりと赤く光る二つの点があった。


「えっ…?」


そう、それは巨大な顔、熊が店内を覗いていたのだ。


俺はひゅううう…っと変な声を出しながらその場にへたり込んでしまった。


目線の先、ガラスドアのすぐ向こう側には恐ろしく尖った巨大な爪と腹…にある男の顔。

俺と目が合った瞬間、その男は照れ笑いを浮かべ痩せてやや骨張った頬を赤らめた。


よく見るとそれは熊では無くモンスター◯ンターに出てくるウルク◯スの着ぐるみを着た男だった。


困惑している俺を他所に店員は冷静そのもの。

俺がただ転んだと思って心配してくれている。

というよりこの着ぐるみ男の事が見えていないのだ。


ーーーあっまたこのパターンか。


 俺は店員にお礼を述べると乱暴にドアを開けた。

ドアに弾かれて転倒する着ぐるみ男。

ガッと無造作にそいつの首根っこを掴むと店舗裏駐車場の人目のつかなそうな所まで引きずって行き、指で指示して地面に正座をさせた。


20代前半といったところだろうか?大人しそうな着ぐるみ男の顔は血の気が引いて顔面蒼白。

赤くなったり白くなったり、なかなか忙しい。


「おい君さ!あんな所で何やってたんだ?」


「あっ…あの…散歩ですゥ」


「いや店内を覗いてたでしょ?しかも誰にも気付かれてないと思ってガン見してたよね?」


「あっ…イヤ…お言葉ですが、あ…あなたに気付かれていたですシィ」


ーーーそういう事じゃない。


 話を聞くと、あのコンビニの店員の中にゲームフレンドが居るのでどんな人か探りに来ていたのだそうだ。

しかし女性の店員ばかりで声をかけるのが恥ずかしい。

でも丁度ゲームキャラになる特殊能力を身につけたばかりだったので、それを使ってこっそりと探りに来ていたそうなのだ。

しかも極度のコミュ障でフレンドとは聞き専のボイスチャットのみでこちらからは文字のみで通話はしていない。

フレンドは若そうでやや高い声という事以外どんな相手なのか見当が付かないので暇を見ては度々覗きに来ていたらしい。


「それでさ、このキャラクターになるチカラなんだけど、どうやって手に入れたの?」


「あの…ゲームしていて寝落ちを繰り返していたら自然とこうなりまシタ」


ーーーなるほど、そういう事もあり得るのか。


本気で変身すればウルク◯スそのものになれるが、何となく本気を出すのは照れ臭いのと、この方が店内を覗き易かったので本人の顔を出して着ぐるみ状態にしているのだそうだ。


「フレンドさんはここに居るから来てよって言ってくれたんでしょ?何で普通に来ないの?」


「いやっ…あのっ…ハズカチィ…ノデ。」


気持ちは解らなくも無いけど盗み見みたいな事をするのはどうなのか。

そして俺も少し手荒な真似をしてしまった事を謝った。


「お詫びじゃないけどさ、俺はこのコンビニよく来るからフレンドさん探すの手伝ってあげるよ。」


「マジスカ!…アッ…ありがとうゴジャいます」


「じゃあまずは君の垢とかプレイヤー名とか教えてくれるかな?」


「そ、そうですな…ワ、ワタクシは…動物系のキャラを…こよなく愛するプレイヤーでフッ…。」

「な、なので“ケモナーの宅”という名前で遊んでいるでスヨ。…フレンドからはケモタクと呼ばれておりマス。」


ーーー口が裂けても『ちょ、まてよ』とかは言ってはやらんからな。


「ふむふむ…あっもしかしてパンダの姿でコンビニ覗いたりしていたのか?」


「ヤリマシタ!」


「ちょ、まてよ!」

応援よろしくお願いいたします。

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