三人
テーブルに置かれたエコバッグがバランスを崩しボテッと鈍い音を立てる。
「やれやれ…。」
キッチンでお湯を沸かしていた俺は足早にテーブルへ駆け寄ると、バッグの中からパンや弁当を取り出しテーブルの上に並べた。
今日は疲労で頭がくらくらする。
仕事も忙しかったけれど、遠藤のあの一言がずっと頭から離れないからだ。
ーーーここで一度整理してみるか。
名前は確か遠藤纏だ。
あれは確か高校一年の夏休みの事。
その日俺は同じく大学の休みで帰宅していた兄に誘われ中心街にある大きなゲームショップに来ていた。
そして偶然そこに来ていた関を発見。
三人で一緒にショップを回って買い物をしたのだが、それを期に関が俺の家へ遊びに来る様になったんだ。
ーーーでも、なんていうか。
関は俺の兄を「紳一にいさん」と呼んでずっと話しかけていた。
取り残されちょっぴり居心地の悪さを感じていた俺だったが、関もそれを察したらしい。
「ごめんな。うちさ…姉が二人と妹が一人でさ。ずっと兄弟に憧れがあって。」
ーーーなるほどわからん。
それを証明する訳では無いのだろうが、今度は俺が関の家に呼ばれた。
外観は小綺麗な洋風二階建ての戸建て住宅だ。
そして室内は暖色系の壁紙やカーテンに白を基調とした家具類で統一されている。
拘りのコーディネートというやつだ。
「うちなんてテキトーにカラーボックス買って来て雑に並べてるだけなのに、こりゃ凄いな。」
そう言うと関は「いや、それが良いんじゃないか。」と笑っていた。
リビングに座るお姉さんへ軽く挨拶をすりと、そこに見慣れた顔があった。
ーーーあれ?遠藤だ。
聞き耳を立てるつもりは無かった。
だが俺達は聴いてしまった。
遠藤纏がクラスや部活の人間関係に馴染めずに居る事、そして関の姉=部活の先輩に相談しに来ていた事を。
関と俺は顔を見合わせて、話が終わるタイミングで遠藤纏をゲームに誘った。
驚く遠藤纏だったが、すぐに笑顔で。
「あたしシューティングゲームとか得意だよ?」
ショートカットの下にある目がいたずらっぽく笑っていた。
それから週末になると俺達三人で集まってはゲームを遊んでいたのだけれど、約束もせずに何となく集まっていたのは今思うと少し不思議かも知れない。
遠藤纏はいつも落ち着いた、言葉を選ばずに言うと地味な衣服でボーイッシュな感じだったので異性を意識せずに済んで楽だった。
ーーーそれが良い事なのかそうでは無かったのかは分からないけれど、今の遠藤纏が身なりに気をつけているのを思うと少し申し訳無く思う。
そんな関係は二年生の春まで。
あとは勉強の傍らLINEで新作ゲームや配信者の話程度になっていた。
なので例のコメントはやはり遠藤纏の可能性が高い。
因みに関はその後も夏休み冬休みになると「勉強会」と言っては家にやって来て兄にべったりだった。
そしてその夜、再び兄が夢に現れた。




