3話:ハーワーユー?
『田中さんって、どこから引っ越して来たの?』
「私が住んでいたのは田舎の方でした。だから、このような都会に住むのが初めてで緊張しますね」
『そうなんだー! 今日の帰りでみんなで寄り道がてら田中さんを町案内しようよ!』
『『『賛成っ!!』』』
朝礼が終わって俺とショージがトイレに行って数分の間に田中さんの周囲には人だかりができていた。
「うわぁ、すげー人が集まってるな。他のクラスの奴も廊下から覗いてるぞ」
「そりゃ、あんな美少女が転校してきたら話題になるって、俺もあわよくばお近づきになりたいもん」
「もんって言うなよ。でも、こんな人が集まってたら俺たち席に座れないな」
人が密集しているせいで俺と庄司は席に座れない。
というか誰かが勝手に座ってぞ。
「ミアー、この状況なんとかしてくれよ。学級委員長だろ?」
周りが騒いでいるのにも関わらず、ミアは読書に勤しんでいた。
「え、あたしが? しょうがないわね」
ミアは渋々立ち上がり人だかりの方へ近づいて行った。
「こらーっ!! 田中さんにまとわりついて困るでしょ!! 早く解散しなさーい!!」
ミアの一言で蜘蛛の子を散らすように人だかりが居なくなった。
「流石はミアだな。鬼の学級委員長の名は伊達じゃないぜ!」
「そんなあだ名は要らないわよ! あたしは読書に戻るわ」
ミアは自分の席に戻って行った。
「田中さんも大変だね、いっぱい人が集まって大変だったでしょ?」
「いえいえ、皆さん良い人ばかりで私も嬉しいです」
「俺の名前は平良庄司。ただの学年1位の天才さ」
ショージはカッコつけて自分の事を自慢していた。
非常に残念な事だが、コイツが学年1位である事は事実である。
因みに学年2位はミアである。
「は、はぁ、よろしくお願いします?」
田中さんもどう反応すればいいのか困った表情をしていた。
「因みに隣にいるこれが京田琢郎。ごく平凡な人畜無害の生物だ」
「おい、俺の紹介が適当すぎるだろ」
「京田琢郎……そうですか」
何故か田中さんは意味深な表情を浮かべていた。
そんな俺の名前で気になることがあるのか?
「えっと、ハーワーユー田中さん。俺の事は気軽にタクローって呼んでくれ!」
「??? 分かりましたタクローさん」
ちょっとした冗談で挨拶をしたのだが、困惑させてしまったようだ。
「ずるいぞタクロー! 俺の事ショージって呼んでね!」
「あんた達黙って聞いていたけど、何田中さんを困らせているのよ」
呆れた表情をしたミアがこっちに近づいてきた。
「出たっ!! コイツは鬼の学級委員長ミア。悪い事をしたら粛清されりから田中さんも気をつけて!」
「間違った情報を伝えるな! あたしは古木美亜、この2人からはミアって呼ばれているわ」
「ほ、本当に怖い方ではないのですよね?」
田中さんは怯えた表情をしていた。
「大丈夫だ。ミアの逆鱗に触れない限りは粛清される事はないから」
「そうだな。ペチャパイとか言わない限りは大丈夫だ!」
「ショージくーん、ちょっとこちらにいらっしゃい」
勿論、ショージは粛清された。
「……まぁ、分からない事があればいつでもミアに聞いたらいいぞ。とりあえず力にはなってくれるから」
「あの、タクローさんに分からない事を聞くのは大丈夫ですか?」
「別に構わんけど、力になれる事は少ないぞ?」
何だかんだで頼りになるミアではなく、ごく平凡な俺に分からない事を聞くなんて……
「ここから始まる俺と田中さんのラブロマンスである」
「勝手にナレーションすんな。あと、ラブロマンスなんか始まらんからな!」
ショージは意味の分からん事を言っているが、俺としてはまだそんな事は望んでいない。
強いてあげるなら、見た目外国の方で、さっきから俺の方をチラチラ見てくる田中さんが何を考えているのか気になる程度だ。
勿論、一目惚れとかはない。
「そんな事言ってると一生彼女とか出来んで、妹の月菜ちゃんが彼女代わりになっちゃうよー」
「月菜は妹だろ、流石に妹を異性として見てたらヤバい奴だろ」
「月菜……。タクローさんは妹さんがいらっしゃるんですか?」
「そうだよ。月菜っていうタクローに全く似てない美少女の妹が居るんだよね。神様は残酷だわー」
「お前、本人を前にして失礼な事を言い過ぎな」
とりあえずショージに肩パンをお見舞いしておいた。
「はいはい、そろそろ授業が始まるからさっさと席に着きなさい!」
ミアに促され俺とショージは席に着いた。
ところで田中さんは月菜に反応したけど気になる事でもあったのか?




