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妹は魔法少女になりましたか?  作者: 吉本優


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2/28

1話:やっぱあの衣装は恥ずかしいのかな?





―――――




 とまぁ、こんな感じで俺は妹の秘密を知ってしまった。

 普段はしっかり者の月菜だが、割と天然な一面もあり、日常生活で身バレしそうになることが多々ある。


 例えば、家族と夕食を食べているとき……。


「ちょっと、おトイレ行ってくるね」


 そう言って席を立つのだが、戻ってくるのは小一時間後。

 流石にトイレで1時間は長すぎるだろうと、両親も首を傾げる。

 そんなときは俺がなんとか誤魔化さなくてはいけない。


「大変だな……平和のために戦ってるのは分かるけど、親には一応友達と遊びに行ったってことにしておくか」


 月菜の魔法少女としての活動を隠し通すのも、兄としての役割なんだろう。


―――――


「ただいまー!」


「おかえり。今日は帰りが遅かったけど、友達と何してたの?」


「えっと……おしゃべり、かな?」


 月菜がちらりと俺を見るのはやめてくれ。

 俺の助け舟を期待しているのがバレバレだ。


「まぁ、月菜も中学生なんだし、友達付き合いだってあるだろ。そっとしておきなよ」


「でも、うちの可愛い月菜に悪い虫がついたらどうするの? 琢郎、ちゃんと監視しなさいよ!」


「俺は高等部、月菜は中等部だから、そこまで目が届かないよ」


 しかも、そんなに付き纏ったらシスコン認定されるだけだ。


「あれ? 父さんは?」


「お父さんなら、また海外出張だよ」


「もう、すぐ仕事ばっかり! 家族のことも考えてほしいわよね!」


「それを言うなら職場に訴えるべきじゃないか?」


 こうして家族団欒だんらんは進んでいくが、ふと母さんが真顔になった。


「そういえば、今月テストがあるわよね? ちゃんと勉強してるんでしょうね?」


「まぁ、ぼちぼちな」


「うっ……」


 月菜が黙り込む。どうやら魔法少女の活動が忙しくて勉強どころではないらしい。


「お兄ちゃん、ご飯の後で英語教えてくれる?」


「いいよ」


「琢郎、しっかり教えなさいよ! 満点取れるようにね!」


 月菜の頭を考えると満点は無理そうだが、まあやるだけやってみるか。




―――――




「だから、これをこうして……ほら、そうするとこうなる」


「おぉっ! お兄ちゃん、教え方が上手だよね!」


 夕食後、俺の部屋で月菜に勉強を教えていた。

 月菜は不器用なところもあるが、真面目で頑張り屋だ。教え甲斐がある。

 ところで、さっきから妙に近づいてくる気がするのだが……気のせいか?


「これくらいなら学校の先生でも教えてくれるだろ?」


「先生が英語の授業で所々英単語を挟んで喋るのが気になっちゃって……」


 どこのTogetheなやつだよ、と心の中でツッコミを入れた。


「はっ、ごめんお兄ちゃん! 急用ができたから勉強はここまで!」


 何かを感じ取ったのか、月菜は慌てて片付けをすると部屋を飛び出していった。


「ふむ、事件でも起きたのか?」


 こんな夜遅くに大変なもんだな。




―――――




「せっかくお兄ちゃんに勉強を教わってたのに……」


 月菜は事件の匂いを察知して現場へ向かっていたが、その表情は浮かない。


「もう少しでお兄ちゃんの膝に座るチャンスだったのに……」


 どうやら、月菜は兄大好きなブラコンらしい。


「月菜、遅い」


 現場には月菜のクラスメイトで、ポーカーフェイスが特徴の桑原陽菜(くわはらような)がいた。


「ごめんね、お兄ちゃんに勉強教えてもらってたら遅れちゃった」


「またお兄ちゃん? 月菜はいつもお兄ちゃんお兄ちゃんばかり」


 陽那は呆れた様子でため息をつく。


「むぅ、そんなことないもん!」


「話は後。まずはこれを片付けるよ」


 2人の目の前には、人型の黒い影が立ちはだかっていた。


「いくよ、月菜」


「うん、陽那ちゃん」


「「シャイニーパワー・オン!」」


 2人の腕のアンクルが輝き、魔法少女の衣装に変わる。


「星の雫は返してもらうよ!」


 こうして、2人は黒い影に立ち向かっていった。



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