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夕陽が沈む国のレプセント  作者: violet
モードリン・レプセント
20/91

再会

アンセルムは鳩の足に付けられた手紙に、怒りが爆発した。

『モードリン・レプセント辺境侯爵令嬢が、王太子暗殺未遂犯として拘束されている。

王国軍がレプセント辺境侯爵邸を急襲するも、家人は逃走済であった』


「こんなことの為に、送り出したのではない」

2年以上経っても忘れえぬ令嬢。

幸せになると言ったではないか。

今夜にでも密かに処刑されるのでは、という不安にかられる。


優秀な軍人を忍ばせているのだ、モードリンを助けるために動くだろう。

レプセント邸をイグデニエル軍が急襲するも逃げられたのなら、威信にかけて逃走者捕獲網をしいてくるだろう。

アンセルムは、モードリンを助けて直接ガイザーン帝国に向かわず、隣国を経由するように手紙を書いて鳩に付けた。

この鳩は、魔核の粉末を混ぜた餌で育てた結果、どんなに広範囲でも、同じ餌がある所を見つけれるようになった。

アンセルムとシャードが魔核を混ぜた餌を持っていれば、どんなに遠く場所が分からなくとも、アンセルムとシャードの間を飛ぶのだ。

魔核を粉末にして利用しているガイザーン帝国で、薬効を高める以外にも様々な実験をした結果の一つである。


そして、何度目かの手紙のやり取りで、モードリンを助け出し、隣国に向かっているシャード達と落ち合ったのは、モードリンを助けてから二日後、隣国との国境の町であった。


「よくやった。モードリンは馬車の中なのだな」

アンセルムは、シャードとゲーリックを(ねぎら)い、馬車の扉をノックする。


ノックはシャードかゲーリックだと思っているモードリンは、開いた扉から入ってきた人物に驚く。

「アンセルム殿下? どうして、ここに?」


アンセルムはモードリンの痛々しい姿を見て、怒りをあらたにした。

投薬をしていたが、腫れも引いておらず、傷も完治していない。


アンセルムは、モードリンを抱きしめた。

二年前には、触れる事も許されなかった二人である。

「会えて嬉しい。よく頑張ったな」

アンセルムに抱きしめられ、声を聞くと、モードリンの緊張も解けてくる。


ゆっくり伝わる体温に、モードリンは生きていると実感する。

アンセルムにしがみつくと涙が止まらない。

「お父様が!」


アンセルムは自分にしがみついて泣くモードリンに、愛しさが込み上げてくる。

痛々しい身体は、モードリンの抵抗の証。

早くガイザーン帝国に連れ帰り、治療に専念させたい。

だが、今はモードリンが気の済むまで泣かせたい。

「モードリン、もう大丈夫だ。私がずっと側にいる」


「あぁぁ・・・

私を逃がすためにお父様が!」

モードリンが、ずっと言えなかった言葉。

苦しくって、心が痛くって、悲しくって。

「絶対にイグデニエル王家を許さない」


アンセルムは、モードリンが泣きつかれて眠るまで抱きしめていたが、モードリンが眠ると膝に乗せて横抱きにした。

そして、腫れている頬にそっと触れる。

「痛かったろう、怖かったろう、だが、生きていてくれてありがとう」

これからは絶対に守る、と心の中で誓う。


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