第八十五話 王家の指輪
ニャオウに仲間になればいいと誘われ、カーナは少し考える。
(前にカーナは仲間になる時は自分から話すって言ってたから、ここは待った方がいいかな)
京也はドキドキしながらカーナの言葉を待っている。
「えーと、仲間になる前に、みんなに話しておきた……つっ」
カーナは話の途中、めまいがしてふらついた。それを見た京也はカーナに急いで近寄り、彼女の体を支える。
「大丈夫か?」
「う、うん。ちょっと気分が悪いかも」
「永遠の棺のせいかもしれないよ」
「ハクレイ、こっちに来てくれ」
「はい」
京也は呼んだハクレイの背中にカーナを乗せる。彼女は意識はしっかりしてるが、顔色が悪く体調が悪そうだった。
「とりあえず、ここから出よう。この階にあったトランスポーターの所まで行くぞ」
「早く地上に出て、安全な所でカーナを休ませましょ」
京也達は急いで不死迷宮地下五十階のトランスポーターのある部屋に向かい、そこから不死迷宮の一階のトランスポーターに転移する。
「カーナ、大丈夫か?」
「そんなに心配しなくても大丈夫……ちょっと体がだるい……だけだから」
「キョウヤ、どこに向かいますか?」
「そうだな。空を飛んでくなら、森の街ベルトより水の街セレスのセレナ王女の所に行った方がいいか」
「わかりました」
ハクレイは京也、カーナ、ニャオウ、アンナを乗せて水の街セレスに向かって空を駆ける。ハクレイは加速のスキルを使えばもっと速く走れるのだが、カーナに負担がかからないように加速を使わなかった。そして水の街セレスが見える場所まで来る。
「キョウヤ、街の入り口に降りますか?」
「いや、このまま空から直接、領主の館に向かおう。緊急事態だから大丈夫だろう」
空を飛べる者でも街の入り口から入らないと不法侵入になってしまうのをハクレイは心配していた。
「よし、ハクレイ。領主の館の門の前に降りてくれ」
京也達は水の街セレスの上空を飛んで、セレナ王女のいる領主の館の門の前に着地した。そこには門番の兵士が二人いて、彼等はセレナ王女が京也にカーナの捜索依頼を出してることを知っていた。
「カーナさん、無事でしたか。キョウヤさん。お疲れ様でした」
「カーナが気分が悪いみたいなんだ。セレナ王女はいるか?」
「は、はい。すぐに知らせます。さあ、カーナさんを中へ」
京也達はカーナを領主の館の貴賓室に連れていき、ベッドに寝かせる。すると貴賓室にセレナ王女がやってきた。
「カーナ! 大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと気分が悪いだけ。MPが枯渇した時と同じ感じ」
「そうなの?」
「でもおかしいの。私のMPは減ってないのに」
カーナは自分のステータス画面を見てそう答える。
「リッチの呪いとかじゃないのか?」
「リッチというのは不死迷宮にいるというSランクモンスターのことですか?」
「そうです。実は……」
京也はカーナを助けた時の状況をセレナ王女に説明する。
「なるほど、それでリッチの呪いですか」
「私が棺ごとディスペルしてるから呪いとは思えないけど、念のためもう一度使ってみる?」
「ううん、私はこれを持ってるから呪いじゃないよ」
そう言ってカーナは服の中から十字架の首飾りを取り出して皆に見せる。
「それはミカエルのロザリオか」
「キョウヤも持ってるよね。すべての状態異常を無効化するやつ」
「ああ、確かにこれを持ってれば呪いも無効化できるはずだ」
京也もミカエルのロザリオを取り出して皆に見せる。
「すべての状態異常を無効化って国宝級の装飾品ですよね。それがこの場に二つも」
ふたつのミカエルのロザリオを見たセレナ王女が驚いている。
「では呪いではないとしたら、カーナの状態は何なんだ?」
「たぶんカーナはリッチにMPを奪われてたんだと思う」
アンナが自分の仮説を皆に話す。
「MPを?」
「永遠の棺でカーナの時間を止めて、さらにカーナからMPを奪えば永久機関が完成するでしょ」
「なるほど、カーナからMPを奪っていたから、あんなにリッチの魔法が凄かったのか」
「時間を止めてそこから魔力を奪うなんて普通の事じゃないから、今その負担が来てるんだと思う」
「それが正解だとして、どうやったら治るんだ?」
「考えられるのは、奪われたMP分が自然回復するのを待つとかかな。ああ、マジックポーションを飲みまくるのもいいかもしれない。確証はないけど」
「マジックポーションですね。手配しておきます」
マジックポーションとはMPを回復する液体の薬である。高価な薬だが、セレナ王女ならいくらでも用意できるだろう。
「あとは、しばらく様子をみるしかないか」
「京也さん。カーナのことは私達が看るので、みなさんは休んでください。不死迷宮の五十階まで攻略したのなら疲れてるはずです」
「わかりました。カーナのこと、よろしく頼みます。それとここに来る時、街の入り口を通らないでここまで来てしまったんですが」
「ああ、今回は緊急事態ということで領主権限で不問とします。そうだ!」
セレナ王女は何かを思いつき、側近に何かの指示をしてその側近が部屋を出ていく。
「帰る前にキョウヤさんに渡す物があります。ちょっと待ってください」
その後、セレナ王女の側近が指輪を持ってきて彼女に渡す。
「これは王家の紋章の入った指輪です。これを持ってると王族待遇を受けることができます。ですのでこれからは街の門を通らなくてもよくなります」
「王族待遇って、いいんですか?」
「はい。元々京也さんはSランク冒険者で公爵と同等の扱いですから、それが一段階上に上がっただけですよ。それに今回の指名依頼の報酬をどうするか悩んでいたので、受け取ってもらえれば悩みがなくなります」
「わかりました。そういうことなら遠慮なく」
京也は差し出されたフルーレ王家の指輪を手にとる。
「では俺達は帰ります。カーナ、ゆっくり休んでくれ」
「うん。ありがと」
京也達は領主の館から出て自分の家に帰り、戦いの疲れをいやすため風呂に入ってその日はそのまま就寝した。そして次の日からしばらくの間は休日にすることにした。その間、何度かカーナのお見舞いに行き、カーナの状態は少しずつ良くなっていたが、まだ完全には治っていなかった。
そしてカーナを救出してから五日目の朝になり、京也が自宅で朝ご飯のかたずけをしてる時、玄関のチャイムがなる。
「ん? 客か?」
私服姿の京也は玄関に行き扉を開ける。するとそこには元気な姿のカーナが立っていた。
「おはよう!」
次回 神炎の剣 に続く




