第八十四話 永遠の棺
「こ、これはお前用の棺だ! お前を倒したら、こいつの中で眠らせてやる」
リッチは京也に棺のことを指摘され、なぜか焦る。
「あの棺……どこかで見た覚えが……」
アンナは棺の装飾の模様を過去に見た記憶があった。
「キ、キョウヤ! その棺です! その棺からカーナの魔力を感じます!」
「何っ!」
「ちっ、気付かれたか」
ハクレイの頭の虹色に光る角は、戦闘状態でないカーナの魔力でもはっきりと感じ取ることができた。
「お前、何で嘘をついた?」
「ふん、あのエルフは我の物だ! 貴様には渡さん!」
「というかおかしいだろう。棺は死者を入れるものだ。なんでカーナを……」
「あっ、そうだ! 永遠の棺だ、それ!」
「くっ、知っていたか」
「アンナ、永遠の棺ってなんだ?」
「その棺の中の時間が止まっていて、永遠にそのままの状態で生物を保存できる魔法の棺だよ」
「ということは、カーナを永遠に自分の物にするために棺に入れてるのか。うわー、引くわー」
「ほんとよね、キモっ」
「なっ! ち、違……」
「何が違うんだ?」
「いや……」
(何か隠してるな)
リッチが焦ってるのを見て京也はそう感じる。
「うるさい! うるさい!」
リッチは全身から膨大な魔力を放出し、それを闇に変換する。
「凄い魔力量だ! 変態でもMPだけは侮れない」
「我が闇の最上級魔法を食らえ! カオスフレア!」
「……」
「……えっ?」
リッチは闇系最上級魔法を発動しようとしたが、いきなり魔力で作り出した闇が消えてしまった。
「なっ、何で……」
「あっ、魔力発動妨害か!」
アンナはこの状況を見て、京也が使ったスキルが何なのか気付いた。
「そういうことだ」
(俺の持つ最上級魔法とは違うみたいだから見てみたい気もするが、最上級魔法は危険だからな)
京也はエンシェントドラゴンから入手した魔法発動妨害を発動して、リッチの魔法をかき消したのである。
「魔法発動妨害だと! そんな伝説のスキルをお前が……」
(これではエルフから得た魔力が意味がなくなるではないか)
リッチは永遠の棺にいるカーナから魔力を奪っていた。その魔力を使い常時魔法障壁を展開し、同時に複数の魔法を発動できていたのである。
(奴の魔法は封じた。後は倒すだけだが、サンダーブレイズで奴の魂を攻撃するか、アンナの光魔法に頼るか。ああ、ラグナヴァリスの光の力を使うという手もあるか。よし)
「ラグナヴァリス、槍モード!」
京也がそう叫ぶと神剣ラグナヴァリスの柄が伸びて槍のような形状に変化した。彼はその部分を逆手で持って投擲するような構えを取り、神剣ラグナヴァリスに螺旋状の魔力をまとわせる。さらに神剣ラグナヴァリスの能力を発動し剣身が輝きだす。
「シャイニング・スパイラルクラッシュ!」
京也は全力で光り輝く神剣ラグナヴァリスを投げつけた。
「!」
次の瞬間、リッチの上半身が粉々に砕け散った。超高速の攻撃を受けたリッチは断末魔の叫びを上げる間もなかった。残った骸骨の下半身が床に倒れる。さらに投げた神剣ラグナヴァリスがいつの間にか京也の手元に戻っていた。
「わ、我ながら、凄い威力だ」
「アンデッドモンスターの中で最強と呼ばれるリッチを一撃か。でも不死というくらいだから、まだ死んでないんじゃないの?」
「いえ、リッチからもう魔力を感じません。魔力を自分で消して死んだふりをしてるのかもしれませんが」
「ふふふ、ラグナヴァリスは闇属性のモンスターの魂を浄化する光の力を持っている。魂を浄化されたら不死の体を持ってても、もう復活できないだろう」
不死のモンスターであるリッチは物理攻撃で体を破壊されても自動で復活する能力を持っていた。だがリッチの魂は今の京也の必殺技で一瞬で浄化され完全に消滅していた。
「よし、カーナを助けるぞ」
京也、ニャオウ、アンナ、ハクレイは部屋の奥にある永遠の棺のそばに移動する。
「これは普通に開ければいいのか?」
「私もそこまではわからないよ。一応、ディスペルだけしとく?」
「ああ、頼む」
「まかせて……ディスペル!」
アンナは永遠の棺に呪い解除の魔法をかける。だが永遠の棺に何も変化はなかった。
「何も起きないね」
「このまま持って帰るわけにもいかないし、開けてみるか」
「早く開けるニャ! カーナを助けるニャ!」
ニャオウはハクレイの頭の上に乗って京也をせかす。そして京也は永遠の棺のふたを持ってずらす。すると中にカーナが目を閉じて横たわっているのが見えた。
「カーナ!」
京也は棺のふたを床に置いて、カーナに声をかける。すると彼女のまぶたが少しだけ動いた。
「今、まぶたが動いたよ!」
「カーナ! 起きるニャ!」
「カーナ!」
みんながカーナを呼ぶ。するとカーナの目がゆっくりと開く。
「ん……ここは……」
「カーナ! 気が付いたか」
「やったニャ!」
「うーん。体が重い……」
カーナは起き上がろうとしたが、うまく動かなかった。
「回復魔法をかけてあげる」
「アンナ、頼んだ」
「パーフェクトヒール!」
アンナが棺の中にいるカーナに完全回復魔法をかける。すると彼女の体がやさしい光に包まれた。
「……んっ、体が……」
光が消えるとカーナは動けるようになり上半身を起こす。
「えっ? これって棺?」
「カーナは自分に何が起きていたのか知らないのか」
「うん……転移トラップに引っかかったところまでは覚えてるんだけど……」
そう言いながらカーナは棺から出て自分の足で立つ。京也は彼女に今までの経緯を説明する。
「そうだったの。みんなが助けてくれたのね。ありがとう」
「カーナが無事で良かったニャ!」
「ニャオウもありがとね」
「ニャア!」
「さてと、帰る前に……」
カーナは倒れているリッチの下半身をにらみつける。
「マジックボム!」
カーナはリッチの下半身に魔力の球を放つ。それがリッチの下半身に命中して爆発し、ローブと骨が粉々になった。
「はー、すっきりした」
(怖っ)
京也はカーナだけは怒らせないようにしようと心に誓った。
「ん? 奴の杖か。戦利品としてもらっておくか」
「その杖、呪いがかかってたりして」
「確かにその可能性があるな」
「とりあえずディスペルっとく?」
「ああ、頼む」
アンナが落ちている杖にディスペルをかけて、京也はアイテム画面を開いて収納する。
闇夜の杖
闇属性魔法の威力を強化する杖
「普通の魔法の杖のようだな。後はスキルか」
老化無効
体の老化が止まる
常時発動スキル オンオフ設定可能
「老化無効だった」
「それって京也はもう年をとらないってこと?」
「オンにすればそうだな」
「私も老化無効は持ってるよ。これで京也は人間を越えた存在になったんじゃない?」
妖精のアンナも老化無効のスキルを持っていて長い年月を生きていた。
「そんな実感はないが」
「エルフの私は老化耐性は持ってるけど、無効はうらやましいわね」
「ニャら、京也にもらえばいいニャ」
「ああ、仲間になれば、京也のスキルをひとつもらえるってやつか……」
次回 王家の指輪 に続く




