第八十三話 死霊の王
「ディスペル!」
アンナは呪いを解く魔法ディスペルをドラゴンゾンビに向けて発動する。するとドラゴンゾンビの全身が光に包まれ、ドラゴンゾンビの体と魂にかけられた呪いが消滅した。
「おお、呪いを解く魔法か!」
「さらに……ライトフィールド!」
アンナは光系上級魔法ライトフィールドを発動する。するとドラゴンゾンビがいる場所の床から聖なる光があふれ、その場が浄化された。それによってドラゴンゾンビの魂はゾンビとなった体から解き放たれ、腐った体と共に光に溶け込むように消滅した。
「浄化の光魔法か。レジェンドワールドでもアンデッドモンスターに効果絶大の光魔法だった」
「ドラゴンゾンビはどうなったのニャ?」
「あのドラゴンの魂は、ゾンビの体から解放されて自由になったのよ。でもこれからあの魂がどうなるのかは私もわかならいよ」
「天国に行くとかですか」
「うーん、あのドラゴンは元は破滅の竜ザインだから、天国はどうかな?」
「破滅の竜?」
「邪神ベルと一緒にこの世界で暴れまくってた黒竜のことよ。邪神ベルが封印される前に倒されたって聞いてたけど、その体をリッチがゾンビ化して迷宮の番人として使ってたんでしょうね」
「さっき何者かがゾンビにして呪いをかけたって言ってたのは、リッチのことか」
「たぶんね。ちなみに破滅の竜は、六色いるエンシェントドラゴンの一体なの」
「ん? エンシェントドラゴンが六色?」
「そう、ニャオウが倒したのは白竜で、破滅の竜が黒竜で、ほかにあと四色の竜がいるの」
「マジか。それは初めて聞いたな。ん、そうだ。スキルを確認するのを忘れてた」
京也はスキル画面を表示する。
腐食のブレス
物を腐らせる息を吐き出す
消費MP 50
「こ、これは使いづらそうなスキルだな」
「キ、キョウヤ! カーナの魔力が!」
「何っ!」
「カーナの魔力を下の方から感じます。今までドラゴンゾンビの魔力が強くて気付かなかったんですが、消滅したので感知できたみたいです」
「よかった。やっと見つけられたか」
「ニャら、早く先に進むニャ!」
「おお!」
京也達はこの大きな部屋の奥にある扉を開き、地下へ続く階段を見つけて降りていく。そして彼等は地下五十階に到着した。
「カーナの魔力はこの通路の先の方から感じます。もうすぐです」
「わかった」
京也達は地下五十階の通路を進み、ハクレイがカーナの魔力を感知した部屋の前に到着した。
「キョウヤ、この先です」
「ああ、だがカーナと違う強い魔力を感じないか?」
「私も感じる」
「ニャオウもニャ!」
「邪悪な魔力を感じます。この先にいるのがリッチだと思います」
「だろうな。俺が先に入るから、みんなは入り口付近で待機しててくれ」
京也は腰の神剣ラグナヴァリスを抜いて部屋に突入する。すると広い部屋の奥の方に豪華なローブと杖を持ったスケルトンが椅子に座っていた。
「来たか」
豪華なローブを着たスケルトンは椅子から立ち上がり、京也と対峙する。
「お前がリッチか」
「そうだ。我こそが不死にて死霊の王、リッチである」
Sランクモンスターリッチは、元は人間の魔法使いだったが、人の体を捨てて永遠の命を得て魔法の研究に時間を使い、魔法の奥義を極めた最上位のスケルトンである。人間達を滅ぼすため、この不死迷宮を作り冒険者を狩って魔法の実験をしていた凶悪なアンデッドモンスターだった。
「お前達が初めてだよ。この場所まで来れた侵入者は」
「嘘をつくな。ここにカーナが来てるはずだ!」
「ああ、あのエルフか。彼女は自力でここまで来たわけではない。転移トラップによって、ここまで転移してきたのだ」
「転移トラップだと! カーナはどこにいる!」
「クックックッ。敵であるお前に教えるわけないだろ。彼女に会いたいなら我を倒し、自分で探すんだな」
リッチはそこまで言うと全身から凄まじい魔力を放出する。すると京也は、リッチが魔法を発動する前にいきなり魔法を放つ。
「サンダーボルト!」
京也はリッチに向けて発動の早い雷系下級魔法を放ったが、リッチは全身にまとっている球状の魔法障壁でその雷を防いだ。
「ほう、なかなかの魔法だ。だが常時展開している我の魔法障壁を突破するほどではないな」
「さすがに、これまでのモンスターとは違うか」
「今度はこちらの番だ」
リッチは全身にまとっていた魔力を使い、球状の闇を四個作り出し体の周りに浮遊させる。
「食らえ、ダークスマッシャー!」
リッチは四個の球状の闇を同時に京也に向けて放つ。
「魔法障壁!」
それに対し京也は前方に壁状に魔法障壁を展開し、飛んできた四個の球状の闇をすべて防ぐ。
「ふん。かなりの障壁の強度だな。中級魔法では突破できんか」
「キョウヤ、魔法障壁を常時展開しながら、四個の中級魔法を同時に使うなんて普通はしないよ。余程、自分のMPに自信がないと」
「フハハハ! 我をそこら辺の魔法使いと一緒にされては困るな! 何百年魔法の研究をしてると思ってるんだ!」
「キョウヤ、手伝うかニャ?」
「いや、大丈夫だ」
「ほう、我を前にまだ余裕を見せるか。なら次は我が上級魔法を見せてやろう」
リッチは全身から膨大な魔力を放出してそれを闇に変換し、長さが二メートルくらいの闇の槍を六本作り出した。
(あれが闇の上級魔法? 俺のシャドウフォールとは違う魔法か)
京也が習得してる闇系上級魔法はシャドウフォールだが、リッチが使おうとしているのは別の闇系上級魔法だった。それはゲームのレジェンドワールドには存在してないものだった。
「アークジャベリン!」
六本の闇の槍が同時に京也に向かって飛んでいく。それは先ほどのダークスマッシャーより速く、さらに威力も数倍強かった。
「魔法障壁!」
京也は先ほどと同じように魔法障壁を壁状に展開して闇の槍を防ぐ。だが六本の闇の槍のうちの一本が、壁状の魔法障壁を迂回するように飛んで京也に迫ってきた。
「はっ!」
京也はその闇の槍を神剣ラグナヴァリスを振るって破壊した。京也には六本の闇の槍の動きがすべて見えていた。
「こいつは驚いた。今のを防ぐとはな。我が人間の時、地上にお前ほど強い者はいなかった。何者だ?」
「さあな。ああ、お前を倒す冒険者ってのは教えておこう」
「ふん、こしゃくなガキめ!」
(異世界から来たゲーマーって言ってもわからんだろ。さて、こいつをどう倒すか。不死というくらいだから、体を普通に攻撃しても倒せないんだろうな)
京也はリッチを倒す作戦を考えるため、リッチとその周囲を観察する。
「ん? その棺は何だ?」
京也はリッチの後ろの台座の上に乗っている洋風の棺を見つける。
次回 永遠の棺 に続く




