第四十六話 英雄召喚
「は?」
「えっ?」
「ここは……どこだ?」
二人の若い男性と一人の若い女性が、白い壁と白い床の部屋で自分達の状況がわからず動揺している。
「ん? 鎧? なんで私、こんなの着ているの?」
「この剣は……本物か?」
「この剣は見覚えがあるような」
三人は同じ豪華な剣と豪華な鎧を身に着けている。
「みなさん初めまして。私はこの世界を管理している女神です」
三人の前にいきなり赤い髪の女神が現れる。
「女神?」
「まさか、これは……」
「い、異世界召喚!」
三人は生粋のゲーマーであり、異世界ものの漫画や小説を読んだことがあるので、今の状況を瞬時に理解できた。
「理解が早くて助かります。そうです。あなた達は別の世界から、この世界に転移して来たのです」
「異世界転生じゃなくて異世界転移なのか」
「はい。あなた達はあちらの世界で死んだわけではありません。帰ろうと思うなら、いつでも私が向こうへ送ることができます」
「いつでも帰れるんですか」
「はい」
「それで俺達は何で呼ばれたんでしょうか?」
「あなた達には邪神ベルザインを倒して欲しいのです。世界を滅ぼす邪神を」
「俺達が邪神を?」
「はい。そのための武器をすでにあなた達は持っています」
男性の一人が持っていた剣をじっと見ている。
「思い出した! この剣はラグナヴァリス、この鎧は光の鎧。レジェンドワールドの武器と防具だ」
「そのとおりです。あなた達はレジェンドワールドというゲームで作り出したキャラクターの体と装備品とスキルを持ってこの世界に来たのです」
「キャラクターの体?」
三人は自分の顔や髪をさわっている。
「違う。俺の顔じゃない」
「私、こんな髪型じゃないし、顔も違うような……」
「なるほど。ゲームで作り出したキャラになって、この世界に転移したわけだ」
「はい。その体はゲームで成長したレベルとステータスを再現しています。その特別製の体なら、必ず邪神ベルザインを倒せます」
赤い髪の女神は、こちらの世界で死んでも元の世界に戻るだけだということと、邪神ベルザインを倒したら戻るか残るか選べるということを説明する。三人はだいたいの事情を理解した。
「もしかして……ステータス!」
男がそう言うと目の前にステータス画面が表示される。
シンヤ 18歳 人間
称号
召喚された英雄
レベル 75
HP 6547/6547
MP 547/547
攻撃力 625
防御力 614
魔力 588
速さ 524
経験値 624725
「おお! 確かに俺の育てたキャラだ」
「これはラスボスを倒した時のデータだな」
「私もクリアした時のデータ通りよ」
三人は自分のステータスを確認したが、だいたい同じくらいの強さだった。
「あなた達ならこちらの世界で経験を積めば、さら強くなれるでしょう。その力を使って邪神ベルザインを倒して欲しいのです」
「最初からこれだけ強ければ、こっちの世界での戦いは楽勝だろ」
「強くてニューゲームって奴だ」
「それなら私、やってもいいかな」
「俺もやろう」
「俺もやる。死んでも元に戻るだけだし、超リアルVRゲームをプレイしてると思えばいいだろ」
三人は邪神ベルザインを倒すことを承諾する。
「ではあなた達を地上に送ります。必ずこの世界を救ってください」
場面はフルーレ国の京也の家の庭に変わる。
「やっと着いたニャ!」
「さすがに今日は疲れたな」
「そりゃ、魔王を倒してきたんだからね。私は見てただけだけど、精神的に疲れたよ」
京也達は魔族国アスラから無事帰って来ることができた。京也の自宅の庭の木陰でフェンリルが、気持ちよさそうに昼寝している。
「さて、スキルとステータスを確認するか」
ハクレイから降りた京也がステータス画面とスキル画面を表示する。
キョウヤ 16歳 人間
称号
竜殺し 魔物使い 邪神殺し
レベル 208
HP 39350/39350
MP 4157/4157
攻撃力 3681
防御力 3541
魔力 3794
速さ 3694
パワーブースト
仲間全員の攻撃力を強化する
消費MP15
鑑定阻害
自分よりレベルが低い者の能力鑑定を阻止する
常時発動スキル オンオフ設定可能
「スキルは二つ覚えてるな。パワーブースト、鑑定阻害の二つだ」
「結構倒したはずなのに二つって少なくない?」
「倒した敵、全部からもらえるわけじゃないからな。それに暗殺者達は人間だからスキルは入手できないし」
京也とアンナがスキルについて話していると、ニャオウが会話に加わる。
「そうニャ! キョウヤ! ニャオウは邪神化が欲しいニャ!」
「ああ、確かに邪神化は凄かったから、ニャオウも強くなれるかもな」
「闇をまとったキョウヤ、かっこよかったのニャ! ニャオウも闇をまとってドヤ顔するニャ!」
「強さより、かっこよさかよ!」
その会話を聞いてカーナが疑問を持つ。
「さっきニャオウがスキルが欲しいって言ってたけど、スキルはもらえるものじゃないでしょ」
「ふふふ、俺は『王の施し』っていうスキルを持っててな。仲間にひとつだけ俺のスキルをコピーして渡すことができるんだ」
「マジで? じゃあ、私も仲間になれば、キョウヤのスキルをもらえるの?」
「そうですよ。私も加速のスキルをもらいました」
「私も限界突破をもらって強くなったよ」
「!」
ハクレイとアンナの言葉を聞いてカーナは考えている。
「キョウヤ、あの邪神化は強かったけど、まだ私には届いてないかな」
「ああ、俺もそう思う」
「あとちょっとね。あとちょっとで、私と一緒に戦えるくらいになれると思う」
「ああ、必ずカーナの強さに追いついてみせるぞ」
「うん。その時を楽しみにしてるわ。それと暗殺組織の方はもう大丈夫だと思うから、私は家に帰るわね。今日まで泊めてくれてありがと」
「えー、カーナ。帰っちゃうの?」
「カーナが居なくなると寂しいニャ」
アンナとニャオウが、カーナを引き留めようとしている。
「別に一生の別れじゃないし、いつでも会えるわよ。それにキョウヤが強くなるのはすぐだろうし」
「ならキョウヤ! 早く強くなるニャ。ニャオウはカーナの膝の上で眠りたいのニャ」
「お前はそれが目的か」
(うらやましい)
「キョウヤもカーナの膝の上で眠りたかったら、ニャオウくらい可愛くなるニャ」
「なれるか!」
「賑やかでいいわねー」
京也とニャオウのやりとりをカーナがうらやましそうに見ている。カーナはその強さから仲間を作る必要がなかった。それでずっとソロで活動してたので、京也達のやりとりがうらやましかったのである。
そして次の日。フルーレ国の水の街セレスの冒険者ギルドに、同じ豪華な剣と鎧を身に着けた三人の若者が現れた。
「冒険者登録をしたいんだが」
「はい。ではこちらに必要事項を記入してください」
三人は必要事項を記入し受付嬢に渡す。
「シンヤさん。ゴウさん。エリさんですね。全員、魔法剣士ですか。パーティ全員が同じ職業なんて珍しいですね」
次回 出会った邪神と英雄 に続く




