第四十五話 魔王ヘルロード VS 邪神キョウヤ
京也と対峙している魔王ヘルロードは、全身に魔力をまとって戦闘態勢になる。
(魔王がまとっている魔力は俺より弱い。それなのにこの余裕は……)
京也は不利なはずの魔王ヘルロードの態度に違和感を感じた。
「かかったな!」
魔王ヘルロードが右手を床に向けてかざす。すると京也の足元に魔法陣が現れた。
「!」
その魔法陣が発動し、京也の全身が魔法陣の光に包まれる。そしてその光が消えると京也が身にまとっていた闇が弱まっていた。
「フハハハハ!」
(業火のエルフ用に仕掛けておいた魔力半減の魔法陣が役に立った!)
京也の魔力が半減し、魔王ヘルロードが身にまとっている魔力のほうが強くなる。
(そういうことか)
京也は魔王ヘルロードに余裕があった理由を理解した。
「喰らえ! 紅蓮剣!」
魔王ヘルロードは弱体化した京也に向かって突撃し、持っていた赤い剣の剣身に火をまとわせて斬りかかる。
「はっ!」
京也はその火の魔法剣の斬撃を暗黒神の魔剣で切り払う。
「くっ!」
斬撃を切り払われた魔王ヘルロードは、後方に飛んで京也と距離をとる。
(くっ、手がしびれる……魔力は半減したが、この男、腕力も強い……)
魔王ヘルロードは京也の斬撃を受け、手がしびれて剣を強く握れなくなった。
(いや、魔力を半減させたんだから魔力で勝負しないと駄目だろ)
京也は心の中でそう突っ込む。
「ふん! ならこれでどうだ!」
魔王ヘルロードは全身にまとった魔力を火に変換する。すると魔王ヘルロードの体の周りに高温で大量の火が発生する。
「バーストフレア!」
魔王ヘルロードは、その火を鳥の形に変化させ、京也に向けて放つ。
「フハハハハ! 半減された貴様の魔力ではこれは防げまい!」
火の鳥に飲み込まれた京也を見て、魔王ヘルロードは勝利を確信する。
「ん?」
その燃え盛る火の中で、京也は魔法障壁を展開して魔王ヘルロードの火系上級魔法を防いでいた。
「馬鹿な!」
魔力が弱体化したはずの京也が無事なことを知り、魔王ヘルロードは動揺する。その後、京也の周りの火が消滅し、彼は魔法障壁を解く。
「そんなはずはない。確かに奴の魔力は半減したはず」
魔王ヘルロードは魔力で劣る京也が、なぜ自分の火系上級魔法を防げたのか理解できなかった。
「はっ!」
京也は全身から全力の魔力を放出して闇に変換して身にまとう。それは魔力半減の魔法陣の効果を受ける前より、遥かに強い闇の魔力だった。
「なっ、なぜ魔力半減の魔法陣が効かぬのだ! あれは一時間は効果があるはず」
「いや、確かに俺の魔力は半減してる。俺の全力の魔力が半減してこの強さだということだ」
「バカな……さっきまで魔力は、全力じゃなかったということか……」
(このくらいの魔力で驚いていたら、カーナの魔力の強さを知ったらどうするんだろうな)
魔王ヘルロードは京也との力の差を見せつけられ、恐怖を感じ始める。
「ま、まさか、貴様は……邪神なのか?」
「ほう、わかるか。この邪神の闇の力が」
「!」
魔族国アスラにも世界を滅ぼす力を持つ邪神の伝説が存在し、それを魔王ヘルロードも知っていた。
「くっ、魔法が駄目なら……紅蓮剣!」
魔王ヘルロードは手のしびれが和らいだので、今度は両手で赤い剣を構え、剣身に火をまとわせる。
「黒炎剣!」
それに対し京也は暗黒神の魔剣に闇の火をまとわせる。その闇の火は以前に黒炎剣を使った時とは比較にならないほど深く濃い闇の火だった。
「!」
魔王ヘルロードは自分の火と、京也の闇の火の圧倒的な力の差を感じ、絶句する。
「うおりゃあ!」
京也は魔王ヘルロードに接近して暗黒神の魔剣を振るい、剣身にまとっている闇の火を放つ。
「ギャアアアアアアア!」
魔王ヘルロードの全身が闇の火に包まれ、その闇の火に焼かれた魔王ヘルロードはこの場に何も残さず完全に消滅した。
(凄まじい威力だ。邪神化も凄いが、この暗黒神の魔剣の力も凄い)
京也は魔王ヘルロードを圧倒する邪神の力と暗黒神の魔剣の力を実感していた。
「さてと、そっちも終わったか」
この場にいた五人の将軍達は闇のモンスター軍団によって倒されていた。戦いが終わったので、京也は全身にまとっていた闇を消す。
「私も少し手伝ったわよ」
この場に敵が誰もいなくなったのでカーナが透明化を解く。
「確かにオーガキング達だけでは、手こずったかもしれないな」
透明状態のカーナがマジックジャベリンなどで、闇のモンスター軍団と共に五人の将軍達を倒したのである。
「お前達、よくやってくれた」
「グオオオオオオ!」
「シャーーーーーッ」
「また何かあった時は頼むぞ」
「ゴゴゴゴ」
闇のモンスター軍団は役目を終えて、体が闇に変わってそのまま霧散するように消滅した。
「凄かったニャ! キョウヤの闇が凄かったのニャ!」
「確かに邪神の力は凄かったですね」
「キョウヤは今日いっぱい敵を倒したから、たくさんスキルを手に入れたんじゃない」
今まで大きな声で話せなかったニャオウとハクレイとアンナが、戦いが終わったので普通に会話する。
「スキルか。ここでは落ち着かないから帰ってから確認するか」
「それで、帰りはどうするの?」
「俺もハクレイに乗って透明になって空を走って帰るか」
「それなら、そこのバルコニーから帰りましょう」
京也もハクレイに乗り、カーナが透明化のスキルを使う。そして彼等は魔王の間のバルコニーから外に出て、空を駆けてフルーレ国へ帰っていった。
場面は神界の神々の城に変わる。そこで赤い髪の女神が、大きな水晶玉が組み込まれた装置「次元転送装置」をいじっていた。
「!」
赤い髪の女神が自分の管理する世界で異変を感じ取る。
「どうしたの?」
赤い髪の女神と一緒にいた青い髪の女神がそう尋ねる。
「邪神が……邪神が復活しました」
「なんですって!」
赤い髪の女神は動揺し、その言葉を聞いた青い髪の女神は驚いている。
「今、邪神の波動を感知しました。それもとんでもない強大な力を」
「それって前に言ってたて世界を滅ぼす力を持つ邪神ベルザインって奴か」
「おそらくそうです……」
この世界には邪神と呼ばれる存在が複数いて、過去何度か出現したことがあった。今回、赤い髪の女神が感じ取った邪神の波動は、今までのなかで一番強かったので、それが邪神ベルザインの物だと確信したのである。
「それでどうする?」
「次元転送装置を使うしかありません。邪神ベルザインを倒せる英雄を呼び出します」
「大丈夫なの? それ、たくさん不具合があったんでしょ」
「不具合はほとんど修正できたはずです……たぶんうまく動いてくれます」
赤い髪の女神は次元転送装置を起動して操作を始めた。
次回 英雄召喚 に続く




