第四十四話 邪神軍進軍
魔王ヘルロードはカーナに暗殺者を送り、その暗殺者が依頼主の情報を話せば報復にこの魔王城まで来るだろうと考えていた。それで各地に散らばっている魔族国アスラの五人の将軍達を呼び寄せ、カーナが来るのを待っていたのである。
「複数の魔力反応……てっきり業火のエルフはひとりで来ると思ってましたが」
「さすがに魔王城にひとりでは来れないんだろう。だが奴はソロの冒険者だから仲間はいないはず」
「まあ、この戦力があれば何人来ようが関係ないだろ」
この魔王城には魔王ヘルロードと五人の将軍と魔族国アスラの精鋭の兵士、それに人間の暗殺組織の暗殺者達がいた。
「業火のエルフは俺が討つ。お前達は奴の仲間を始末しろ」
「はっ」
その時、魔王の間に伝令の兵士が慌てた様子で入ってくる。
「ヘルロード様! 侵入者です!」
「わかっている。業火のエルフだろ。それで敵は何人だ?」
「いえ、業火のエルフではありません! モンスターを引き連れた闇をまとった魔族の男です!」
「何っ!」
「モンスターを引き連れた魔族だと?」
「はっ、最初は人間のふりをして現れたんですが、今は正体を現してレッドドラゴンやオーガキングと共に戦っています」
「レッドドラゴンにオーガキング!?」
侵入者の情報を聞いた五人の将軍達が動揺している。
「ええい! 騒ぐな!」
魔王ヘルロードが一喝して五人の将軍達が鎮まる。
「そいつが何者でも問題ない。今、ここには我が国の最高戦力が集まっている。これで我等が負けるはずがない!」
「確かに……」
「その魔族は俺が直々に始末してやる。お前達はとりまきのモンスター共を始末しろ」
「はっ」
「どこの魔族か知らんが、俺に歯向かったことを地獄で後悔させてやる」
場面は魔王城の中庭に変わる。
「ブフアアァァァァッ!」
「ギャアアアア!」
「ガアアアア!」
レッドドラゴンが中庭にいた魔族国アスラの兵士達に火のブレスを放つ。超高温の火に飲み込まれた兵士達が次々と倒れていく。
「レッドドラゴンは城の外から攻撃してくれ。その巨体では城の通路を移動できないからな」
「ギャオーーーン!」
京也はレッドドラゴンにそう指示し、彼はオーガキングやミスリルゴーレム達と共に魔王城の通路を進軍していく。もちろん、京也のとなりには透明状態のカーナ達がいた。
「強い魔力が集まってるのを感じるわ」
透明状態で移動しているカーナが、魔王ヘルロード達の魔力を感じ取る。
「俺は感知できないが……」
「今はまだ力を隠してるみたいね。何かの罠かも」
「方向はどっちだ?」
「あっちの方向ね」
「あっちって言われても透明だからわからんぞ」
「ああ、そうだった。強い魔力は上の方から感じるわ」
「上か。階段を見つけて上がっていくか」
京也達は魔王城内にいる兵士達を倒しながら進んでいく。そして魔族国アスラの兵士達を闇のモンスター軍団にまかせて、京也とカーナ達は大きな階段があるフロアに到着する。
「いるな……」
「うん、これは暗殺者ね」
京也は敵意察知、カーナは精霊の加護で、隠れながら敵意を放つ者の存在に気付く。その時、柱の影から武器を持った人間の暗殺者が複数現れ、京也に斬りかかった。
「物理障壁!」
京也は体の周りに球状の物理障壁を展開して暗殺者達の攻撃を防ぐ。透明状態のカーナ達は京也から少し離れた場所で様子を見ている。
「この魔族……只者じゃないぞ」
「ああ、連携して倒すぞ」
「おお」
「了解」
現れた暗殺者は四人だった。彼等は剣や刀や短剣を京也に向けて構える。
(そうか。今の俺の姿を見て魔族と勘違いしてるのか。じゃあ……)
「貴様等は人間か? なぜ人間が魔王城にいるんだ?」
京也は暗殺者達がここにいる理由を知っていたが、魔族の男を演じるため、あえてそう質問する。
「やるぞ!」
暗殺者達は京也の話を無視して四人同時に襲い掛かる。
「くらえ! バニシングソード!」
「サイブレード!」
「飛翔剣!」
「雷牙突き!」
暗殺者達は同時に京也にスキルで攻撃したが、すべて彼の物理障壁によって防がれた。
「ちっ、なんて障壁だ」
「俺のスキルでも破壊できないとは」
暗殺者達は自分達の必殺の一撃を防がれ動揺している。
(情報は引き出せそうにないな)
「シャドウフォール!」
京也は闇系上級魔法を発動する。
「なっ、何だ!」
「これは」
「くっ、動け……」
「ぐああああ!」
暗殺者達は自分の影から現れた影の手に拘束され、そのまま影の中に引きずりこまれていなくなった。戦いが終わり京也のとなりにカーナ達が戻ってくる。
「今の奴等は、私を狙ってる組織の奴等ね」
「多分な。ほんとは組織に何人いるのかとか幹部の情報とか知りたかったんだが」
「まあ、しょうがないよ。襲ってきた奴等を倒せば十分でしょ。依頼主のヘルロードさえ倒してしまえばいいわけだし」
「わかった。おっ、お前達も来たか」
魔族国アスラの兵士達を倒したスケルトンジェネラルとメデューサと複数のミスリルゴーレムが京也を追ってこの場に到着した。
「じゃあ、みんなで先に進むぞ」
京也と闇のモンスター軍団は二階へ続く階段を上がっていく。ハクレイは空中を駆けて上の階に移動して京也についていく。
「侵入者は我等と敵対してる地方の魔族かもしれません」
「ああ、確かに俺が魔王になる時、色々あったから俺に恨みを持ってる魔族も多いだろ」
魔王ヘルロードと五人の将軍達は、侵入者をこの魔王の間で待ち構えていた。
「うわーーーっ!」
「ギャアアアア!」
魔王の間の外から叫び声が聞こえてくる。
「来たようだな」
京也と闇のモンスター軍団が王の間に入ってくる。もちろん京也の隣には透明状態のカーナ達もいた。
「運が悪かったな。侵入者よ。今ここには各地に散らばっていた将軍が集まっている。ここまで来たことは褒めてやるがここまでだ」
魔王ヘルロードは魔王の椅子に座ったまま話し、余裕のある様子だった。
(こいつが魔王ヘルロードか。そう言えば前にアスラの将軍を倒したっけな)
京也は前の魔族国アスラ軍との戦いでヘルブレード将軍を倒していた。それで五人の将軍達の強さは、ヘルブレード将軍と同じくらいだろうと推察する。
「俺は魔王と戦う。お前達は、ほかの奴等を頼む」
「グオオオオ!」
「シャーーーッ!」
オーガキング達が五人の将軍に向かって突撃し戦いが始まる。
「さて、俺の相手はお前だ。魔王ヘルロード!」
京也は暗黒神の魔剣を魔王ヘルロードに向けて挑発する。
「ふん、どこの馬の骨だか知らんが、俺に刃を向けたことを後悔させてやる」
魔王ヘルロードは魔王の椅子から立ち上がり、京也の前に移動し腰の赤い剣を抜いて構えた。
次回 魔王ヘルロード VS 邪神キョウヤ に続く




