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最強エルフとスキルを失った冒険者  作者: 霧野夜星


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第二十九話 北のハイン王国へ

「初めまして。私はエリス。この軍を率いる責任者です」

「俺はキョウヤ、Aランク冒険者です」


 エリス将軍は馬から降りて京也と握手しながら挨拶する。


「あなたのことはセレナ王女から聞いています。ラージ帝国軍をひとりで追い払ったと」


 セレナ王女はフルーレ国の第二王女で、水の街セレスがある地域の領主である。エリス将軍とセレナ王女は、小さいころからの親友だった。


「それにしても」


 エリス将軍はハクレイを見ている。


「こちらが伝説のエアリアルユニコーンですか」

「はい。名をハクレイといいます」

「こんにちは。エリス将軍」

「!」


 いきなりハクレイに話しかけられたので、エリス将軍は驚く。


「こ、こんにちは。あなたは人の言葉が話せるのですか?」

「はい」

「ニャオウも話せるニャ!」

「!」


 ハクレイの背中に乗っているニャオウの言葉を聞いて、またエリス将軍が驚く。


「猫さんも話せるのですか? それにそちらはフェアリーですよね」


 アンナは、ハクレイの背中でニャオウの隣に座っていた。


「私はアンナよ。綺麗な人は嫌いじゃないわ」

「あら、ありがとうございます。アンナ」


 綺麗な人と言われ、エリス将軍は喜んでいる。


「エリス将軍は綺麗なだけでなく、戦場では黄金の嵐と呼ばれるほど強いんだぞ」

「ギ、ギルドマスター。戦場のことはその辺で……」


 エリスは黄金の嵐と呼ばれることを恥ずかしがっているようだ。


「それでエリス将軍。俺はハクレイに乗って空中を走れば、短時間でハイン王国に行けますが?」

「それは単独で行動するってことですよね」

「はい」

「それは危険です。いくらラージ帝国軍を一人で追い払ったとはいえ、戦場では何が起きるかわかりません。単独行動は止めた方がいいでしょう」

「ですが、早くハイン王国を助けに行った方がいいのでは」

「いえ、これから行くハイン王国のデルタ砦は、私達が到着するまで籠城する手はずになってます。デルタ砦は堅牢な砦として有名なので、急がなくでも落ちないでしょう。砦内の食料も十分と報告がありましたし」

「なるほど。もう戦う作戦が決まってるんですね」

「はい。そういうことです」


 エリス将軍の話を聞いて京也は納得する。そこへ男の兵士がエリス将軍の元へ走ってくる。


「エリス将軍、補給物資の受け取りが終わりました」

「わかりました。では出発しましょう」


 エリス将軍率いる王都軍と京也達は、北のハイン王国の南西部にあるデルタ砦へ向かって出発した。



 水の街セレスを出発してから七日後、フルーレ国軍は国境を越え、更にハイン王国内をデルタ砦に向かって進軍していた。京也はハクレイに乗りながら、葦毛の馬に乗っているエリス将軍と共に会話しながら移動している。


「キョウヤさんは、雷魔法ひとつでラージ帝国軍を追い払ったと聞いていますが」

「いえ、雷魔法だけではないですよ。その前に敵軍に弱体化魔法を使ってます」

「弱体化魔法ですか?」

「はい。エナジードレインといって、相手の経験値を奪って、相手のレベルを下げる魔法です。それを広範囲に使いました」

「エナジードレインですか。私の知らない魔法ですね」


 エナジードレインは、Aランク以上の一部の悪魔系モンスターが使う希少なスキルで、人間で使えるのは京也くらいだった。さらに悪魔系モンスターが使うエナジードレインと、彼が使うエナジードレインでは効果が違っていた。これは京也が異世界から来た人間で特殊なケースだからである。


「なら今回も、そのエナジードレインを使ってもらってもいいですか?」

「いいですよ。ただしエナジードレインは人間にしか効果がないので、モンスターには効きません。さらに連続では使えません」

「なるほど。強力な反面、色々な制約があるんですね。ではそれを踏まえて作戦を考えてみます」


 エリス将軍は武勇が優れているだけでなく、戦術を考えるのも得意だった。


「ん?」

「どうしました?」


 エリス将軍と話していた京也は、前方から大勢の敵意を察知した。


「これは……敵か!」

「敵ですか? 私には見えませんが」

「前方の左右の高台に伏兵が潜んでいるようです。俺は敵意を察知するスキルを持ってるのでわかります」


 フルーレ国軍が進んでいる広い街道の左右には、五、六メートルくらいの高台があり、その上の木や草の陰に敵が潜んでいることを京也が見抜く。


「伏兵ですか……伝令兵!」


 京也の話を聞いてエリス将軍が数人の伝令兵を呼ぶ。


「部隊長達に伝令です。歩兵部隊は、伏兵を警戒しながら進んでください。騎馬兵はその後をついていくように」

「はっ!」


 伝令兵が各部隊にエリス将軍の言葉を伝え、フルーレ国軍の歩兵五千は、鉄の盾を構えながら前進を始め、騎馬兵はその後に続いていく。そのまましばらく進軍していると、


「放て!」


 左右の高台から、無数の矢が盾を構えたフルーレ国軍の歩兵に雨のように降り注いだ。


「ぐっ」

「た、耐えろ!」

「おおお!」


 最前列の盾を構えている歩兵達が、無数の矢の攻撃に耐えている。その様子を後方のエリス将軍と京也が見ている。


「エリス将軍、俺が敵を倒してきましょうか」

「この状況で、どうやって戦うんですか?」

「ハクレイに乗って空中から雷魔法で攻撃してきます」

「わかりました。なるべく矢の届かないくらい上空から攻撃してください」


 京也はニャオウとアンナと共に、ハクレイに乗って空中疾走で空高く駆け上がる。そして東側の高台の敵の弓兵に向かって魔法を発動する。


「サンダーストーム!」


 京也は弓兵に向かって広範囲に雷魔法を上空から放った。


「ギャアアアアアア!」

「グアアアアア!」

「な、何だ? 魔法か!」


 いきなり上空から大量の雷が降り注ぎ、攻撃に夢中になっていた弓兵達に次々と命中する。


「上だ! 空から魔法を使ってる奴がいる!」


 高台の西側にいる弓兵が京也の存在に気付き、空中に向かって矢を放つ。だがはるか上空を高速で走っている京也達に、その矢は当たらなかった。


「一度に全部は倒せないな」

「空中からでは、全員に雷を命中させるのは難しいわよ。木の陰にいる敵もいるし」

「ニャら、ニャオウも戦うのニャ!」

「しょうがない。私も手伝うか」

「私は空中疾走に集中します」


 ハクレイはそのまま空中を走り、ニャオウ、アンナが魔法で上空から攻撃する。


「コールドストームニャ!」

「ホーリーアロー!」


 ニャオウは極寒の冷気を地上に向けて広範囲に放ち、アンナは無数の光の矢を作り出し地上に向けて放つ。


「ぐあーーー!」

「ギャアアアア!」


 今度は西側の高台の弓兵達に、ニャオウとアンナの魔法が降り注いだ。さらに京也もまた雷魔法を使って、残っている弓兵に攻撃する。


「あれが銀の竜殺しか」

「まるで空中魔法砲台だな」

「凄すぎだろ。ひとりで全滅させそうだ」

「いや、よく見ろ」


 敵軍の兵士の中には魔法障壁を使い、京也達の魔法を防いでいる者もいた。京也達は広範囲に魔法を放っているため威力が落ちていて、魔力の高い京也達の魔法を、その敵兵は防げていたのである。


「魔法障壁ですね。なら私達の出番です」


 京也達の魔法攻撃により、弓兵の攻撃はすでに止んでいた。


「歩兵部隊、冒険者部隊、突撃してください!」


 フルーレ国軍歩兵五千と冒険者達が、高台に残っている敵兵に向かって突撃を開始する。



 次回 ゼウス共和国軍との戦い に続く

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