第二十一話 未踏破ダンジョンへ
「限界突破ってレアスキルじゃないのか?」
「いえ、レアスキルですよ。強いモンスターは、そうはいませんし」
「うーん。確かにそういう考え方もあるな」
この場にいる限界突破を持ってる者は、京也とニャオウとハクレイ、そしてカーナの四人である。これだけ強い存在がこの場に集まってることが奇跡だった。
「限界突破の話ですか?」
京也とハクレイの話が聞こえたカーナが、京也のそばに着地する。
「ああ、限界突破のスキルが、レアなのかレアじゃないのかって話だ」
「限界突破は生まれつき持ってる人もいますけど、レベルが99になったら自然に習得する人もいますからね。まあレベルが99までいく人が、かなりレアなんですけど」
「そうなのか」
「だからレアとも言えるし、レアじゃないとも言えます。ってそれよりも京也に話しがあるんですけど」
「ん? 何だ?」
「キョウヤと話すの、もう敬語じゃなくてもいいですよね。一緒に依頼を受けた仲ですし」
「俺はどっちでもいい。カーナが話しやすいほうでいいぞ」
「よかった。最初に会った時から只者じゃないと思ってたけど、キョウヤは信用できそうだし、これからもよろしくね」
「ああ、こちらこそよろしく」
京也は、カーナとため口で話すと少し心の距離が縮まった感じがした。
「それにしても凄かったね。さっきの雷系最上級魔法」
「ああ、実戦で使ったのは初めてだったけど、確かに凄い魔法だ」
京也の魔力ならほかの魔法でもヘルブレード将軍の魔法障壁を破壊できたのだが、彼は一度も使ったことのない最上級魔法を使おうと考えたのである。
「そういえば、今回倒したモンスターの回収はどうするんだ?」
「回収は軍のほうでするから、私達はする必要はないわ。素材の料金はもらえないけど、その分、依頼の報酬が多めになってるから。ああ、今回の報酬は、私と半分ってことでいいよね」
「おお、俺はいくらでもいいぞ」
(スキルも手に入ったし、経験値も手に入ったし、魔法の実験もできたし、カーナとも仲良くなれたし、今回の戦いはいいことばかりだ)
「じゃあ、セレスのギルドに依頼完了の報告をしたら報酬を渡すから、一緒に帰りましょう」
「おいおい、もう帰るのか?」
京也とカーナが会話してると、ツヴァイ将軍が馬に乗ってやってきた。
「ツヴァイ将軍」
「今夜は祝勝会だ。酒が飲み放題だぞ。参加していかないのか?」
「私は遠慮しておきます。お酒は飲めないので」
「俺も止めときます。騒がしいのは苦手なので」
「そうか。主役がいないのは寂しいが、無理強いはできないな。今回の報酬はセレスのギルドでもらってくれ」
「はい」
「それじゃあ、帰るか」
「うん」
京也とカーナは、ハクレイに乗って空を飛んで水の街セレスに帰っていった。
場面は魔族国アスラの首都の魔王城の王の間に変わる。王座にはこの国の王、魔王ヘルロードが座っていて、その前には数人の側近と伝令の魔人族の兵士がいる。
「全滅だと! 今回は火系の兵をそろえただろ。業火のエルフでも簡単には倒せないはずだ」
「それが人間の軍に、別のとんでもない魔法使いがいたようです」
「何っ!」
「その者は、氷、風、雷の魔法を操り、我が軍の兵を次々と倒し、ヘルブレード将軍をも倒したそうです」
「むむむ。そんな人間がまだいたのか。ならそいつを徹底的に調べて暗殺部隊を出せ」
「魔王様、業火のエルフにも暗殺部隊を何度も出しましたが、すべて失敗しました。我が軍に優秀な暗殺者は、もう残っていません」
「やはり強者には、暗殺という方法は有効ではありません」
側近達がそう意見する。カーナは睡眠警戒、気配察知、物理障壁、精霊の加護などのスキルを持っているので、彼女の暗殺は不可能だった。
「ふん、なら今度は我が出陣し、正面から武力で倒してくれるわ」
魔王ヘルロードは、まだフルーレ国の侵略をあきらめてなかった。
場面は水の街セレスの冒険者ギルドに変わる。その二階の応接室にギルドマスターと京也とカーナがいた。
「これが今回の報酬だ」
ギルドマスターの前のテーブルの上に袋が置いてあり、その中には全部で300000ゴールド(三千万円)が入っていた。
「それじゃあ、約束通り半分こね」
カーナは袋の中の白金貨を取り出し、半分に分ける。
「こんなにもらっていいのか? というか、こんなに報酬を用意してたのか」
「これは国の国防費からだ。国を守るためなら安い物だろ」
「そういうもんか」
京也はアイテム画面を表示して150000ゴールドを収納する。カーナも京也と同じように手をかざしてゴールドを収納した。
「それにしても銀の竜殺しもバランに行ってたとはな。カーナだけでも十分だっただろ」
「いえいえ。キョウヤのおかげで早く楽に敵を倒せました。空中の旅も満喫できましたし」
「エアリアルユニコーンに乗って行ったのか。ああ、それとお前達、後で受付に寄ってくれ。今回の報酬とは別にモンスターの討伐報酬も出るからな」
「マジか!」
「それとキョウヤはランクアップポイントももらえるはずだ。アスラ軍と戦ったのなら、相当もらえるんじゃないか」
「そうか。ちょっと行ってくる」
京也は応接室を出て一階の受付へ向かう。
「それでどうだ。銀の竜殺しの強さは」
「想像以上でしたよ。アスラ軍の将軍を倒したのも彼ですし」
「ふむ。奴の強さは本物か」
「それよりもエアリアルユニコーンの乗り心地が最高でした。あのもふもふは、お金では買えない心地よさでしたよ」
「そ、そうか。俺にはよくわからんが」
(今まで私と対等な仲間になれる人なんていなかったけど、今後の成長しだいでは……)
場面は一階の受付カウンターに変わる。京也は冒険者ギルドカードを出して受付嬢に渡す。
「討伐報酬を頼む」
「はい。ちょっと待ってください」
受付嬢は京也の冒険者ギルドカードを魔法の水晶にかざす。
「す、凄い討伐数ですね、ファイアーデーモンにサラマンダーにマグマドラゴン。全部で五千体以上って。ちょっと待っててください」
受付嬢は近くにいたほかの受付嬢に、今回の京也の討伐報酬を用意するように頼んでいる。
(やはりあの魔人族の将軍は、討伐数が登録されないのか。前に人間は登録されないって言ってたけど、魔人族も人間扱いなんだな)
「キョウヤさん、ランクアップポイントがたまってます。今からキョウヤさんはAランクです!」
「おお! とうとうAランクか」
「はい。Aランクになるには、ポイントのほかにAランクモンスターを倒した実績が必要なんですけど、キョウヤさんはすでにレッドドラゴンとアークデーモンを倒しています。ですから今からAランクですよ」
「ほう、Aランクに上がるには、そんな条件があったのか」
「はい。ちなみにSランクにも同じ条件があります」
「Sランクモンスターの討伐が必要ということか。Sランクモンスターってどんなのがいるんだ?」
「はい。不死迷宮のリッチ、竜の谷のエンシェントドラゴン、大海洋のリヴァイアサンとかですかね。どれも伝説級のモンスターで、とてつもなく強いといわれてます」
「わかった。後で調べてみよう。それと未踏破ダンジョンについて詳しく知りたいんだが」
次回 邪神の地下迷宮 に続く




