董卓顔の俺氏。魔界の中心で墓穴を掘る
旧アメジスト王国――
つまり滅んだアメジスト王国の地には新しくフラメンコ王国が樹立している。
フラメンコ王国は旧アメジスト王国の将軍であり、いうなれば下克上によって王国を滅ぼしていた。
フラメンコは出身が兵士からであるためか、軍事大国を目指しており国民は圧制に苦しんでいるそうだ。
それにフラメンコは経済に疎く、労働者階級の最低賃金を引き上げる代わりに商家の法人税を50%にする、外国人保有の土地資産を禁じ保有株式の51%を強制的に無償で政府に委譲させる、物資を持つ者は絶対に市場に売らせる、などの国民的支持が高い政策をつぎつぎと打ち出しており、貨幣や資本家の流出がとどまるところを知らない状況だ。つまりめちゃくちゃである。
もちろん、隣国との関係も悪い。
そもそもカタルニオチタンの王家と旧アメジスト王国とは親戚同士であり、アメジスト王家を滅ぼしたフラメンコ元将軍に良い印象を持つはずがないのだ。
それなのに、フラメンコ王国に技術供与せよ、魔道列車をただで引け、そうしないと軍事介入するぞ、などと強硬な外交を行うのだ。
ただでさえ悪い外交関係が良くなろうはずもない――
「――というのが、10万円の酒池肉林で冒険者ギルドで集めた情報だが、これ以上詳しい情報は必要かね。アリスちゃん」
「いえ、結構――」
「海水浴はしばらくなしだな」
ソフィアが学校から帰ってきて、次は何をしようか――、ということろで俺は冒険者ギルドから入手した情報を披露したわけだが、どうにもアリスの顔がすぐれない。
そりゃぁ、昔王族やっていた国が今や圧制に苦しんでいるなどと言われれば良くは思わないだろう。
そんな不安定な情勢ではとても行けるものではない。
「ふぅん。おじさまわぁ、アリスちゃんと海水浴ぅとか考えていたんだぁ」
やばい。
ソフィアの雰囲気がなんだか怖いものに変わっている。
これは焼きもちをやいているのだろうか。
そうであれば嬉しいが、どちらにせよ待っているのは刺される未来だ。
「も、もちろんソフィアとも一緒だよ。水着も買ってだなぁ。コーディネートも俺に任せろ」
「お。おぉぉ。可愛いのにしてねぇ」
「そりゃぁもちろん」
こう、ソフィアに水着にコーディネイトというと、黄色い浮き輪とか、イルカやバナナの形の浮き輪に乗せるとかしかイメージできないのはなぜだろうか。
俺にもっとアイデアが欲しい。そう。ここはスライムとかどうだろう。――服だけが溶ける未来しか見えないのはなぜだろうか。
そうなるとなぁ・
海水浴はダメだとすると。
次のターゲットとなるのは何だろうか?
お水関係――
お水関係?
いや、お水な商売とかじゃなくてだな。
さすがにソフィアにそんなところで遊ばせたらダメだからな。
いや、まてよ……。意外に――
「あ、おじさまぁ。海水浴の次はもしかして温泉とか考えているぅ?」
にやける俺を冷静にさせたのはソフィアだった。
そうだ、さすがにソフィアにキャバクラとかはいけないだろう。
このいかにも純情そうなソフィアがキャバ嬢になったら俺の目の玉が飛び出るほどビビる。
――が、温泉ならばありだろう。
温泉――素敵だ。
ソフィアと一緒に温泉にいったら、きっと。
きっと、そこの光の泡どきやがれと俺は叫ぶに違いない。
「でもソフィア、温泉なんてこの近くにあるのか?」
「ベルさまの家になら――」
「却下」
あそこは腐の匂いがする。うん、温泉の硫黄の匂いじゃなくてだな。
ソフィアが腐に染まったりなんかしたら俺は泣く自信がある。
しばらくあそこに行くのはなしだ。
「じゃぁ掘るしか……」
「掘るのか……」
文明の利器シャベル。
これがあれば人は、どんな人とでも仲良くできるという噂がある。
さてどういう使い方をすれば仲良くできるのだろうか。
人は言う。なぜ穴を掘るのか。
そこに土があるからだと。
それはドイツ人がビーチで塹壕を作るがごとく自然なことだ。
そこまで考えて俺は気持ちを切り替えた。
「いや、そこはボーリングじゃない?」
「ボーリングぅ? なにそれぇ? 転がすの?」
ソフィアは異世界転生者ではないので、温泉で定番のボーリング調査とかは何か知らない。
「まぁ、ちょっとまってね。俺に考えがある」
「うん!」
・
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そして翌週の土曜日。
この異世界でも土日は学校が休みである。
俺はいま、1本の鉄パイプを持ってソフィアの自宅近くの平地の上に立っていた。
やはり普通温泉掘るならボーリングじゃないのだろうか。
地中に穴をあけ、鉄パイプをどんどん深く挿入する。
だがこの手にした鉄パイプは短い。
普通に考えてそんなもので温泉が出る1000mもの穴を掘ることは容易ではない。
だがここは異世界だ。魔法がある。
要は近代魔術の応用だ。
掘削やボーリングのイメージは、この世界の人ではない異世界転生人だけが持つ特権だろう。
俺は鉄パイプを深く地面に突き刺した。
「『パイプは鉄で出来ている。幾たびの年月を越えて土地は腐敗――。故に土くれに意味はなくどこまでも鉄は伸びていく――』」
どこまでも腐った腐葉土の中を突き進むイメージを保ちながら呪文詠唱をすると、鉄パイプはどこまでも深く掘り進むされていく。
そして気づけば。
「うわぁ。おじさますごーぃ」
鉄パイプからは暖かいお湯が沸き出ていた……
というか、めちゃくちゃ熱い――
とりあえず、温泉は完成だ――
と思いきや。
温泉は魔王エディプスに取られてしまった。
ソフィアに親孝行しないさいと言われればソフィアは対抗する手段を持たない。
しばらくは温泉は親たち――つまり魔王エディプスとその嫁さんの物になるだろう。
まぁ、それからでも別にいいけどね?




