無垢の残響
黒い、無垢な、純粋な力。
それは暗黒神が残した遺産であり、私を怪物の深淵へと押しやった起点でもある。無妄絶境が暮光深邃を斬り落とし、
陽光カフェの一卓の対話が、正式に宣告する——
これから、私たちは敵だ。
黒い、無垢な、純粋な力——それが、この力を得た時に私が感じたものだった。
漆黒の大地はあの夜と同じで、皎潔な月は烏雲に覆われていた。
その時、私は神と出会った。彼は自分の力を私に与えた後、姿を消した。
彼こそが暗黒神だった。人の形でも獣の形でもなく、ただの黒い球体だった。私の体内から這い出し、交流を重ねた末に私たちは協力関係を結んだ。
彼は一言を残し、私は長い間その言葉を熟考した。
「お前の体には、どこか懐かしい感じがする……」
周囲はすでに闇に包まれていた。ここはイスリンの一角にある原始の森だ。
私はつい先刻、ここの頭目——「暮光深邃」を倒したばかりだった。黒い甲殻を持つ長刀の人型カマキリだ。速度は非常に速く、夜にはまったく位置が特定できなかった。
だから私は確かに彼の刀に斬られた。自分はここで終わりだと思った瞬間、予想外にも彼の力に救われ、さらに一つのスキルで一瞬にして暮光深邃を秒殺した。
その技が「無妄絶境」だ。
漆黒の粒子が空を划り、暮光深邃の視界を完全に潰した。だが奴はそれでも私の位置を知っていた。私はとっくに理解していたからこそ、このスキルを奴のために作り上げたのだ。
奴は魔力の流れを頼りにその魔力の源へ突っ込んだが、空振りした。その場所には何もなかった。続いて魔力の攻撃が襲い、奴の体を引き裂いた。反応した奴は慌てて離れ、再び標的をロックしたが、結果は同じだった。そこで奴は逃げ始めた。
だがどれだけ飛んでも、この感知を遮断する領域から出られないと感じた。
奴は自分が永遠にここに閉じ込められたと思い、適当に攻撃し始めた。
まるで、自分の無能さに挫折して酒や煙草で麻痺し、物を破壊し始める人間のようだった。
私は黒造主を振り、奴の頭を斬り落とした。
頭が地面に落ちる音は、重い響きを立てた。
死ぬ直前に奴が見たのは、目の前に立つ私の姿だった。
奴は最初から動いていなかった。さっき奴がいたのは、ただ私の目の前だっただけだ。
「無妄絶境」は暗黒神の力で相手のすべて——思考すら——を統治する技だ。先ほどの例がまさにそれだった。
だから私はこのスキルを使うことを恐れ、今に至るまで避け続けてきた。
だが彼の言葉が、私に疑念を抱かせた。
「懐かしい感じ」? 誰の?
「お前の両親について、何か印象はあるか? それに、なぜ私はお前の体内にいる? 分身は多くあるが、お前ほど強い体で目覚めたのは初めてだ」
「わからない。ただ、二人は私をとても愛してくれていたことだけは知っている。いつも優しく世話をしてくれた。二人が姿を消すまで」
「まあいい。とにかく、私を目覚めさせてくれたことには感謝する。さて——」
この野郎は私を飲み込み始め、自分の肉体に改造しようとしてきた。これは我慢ならない。
「このクソ野郎!」
私は必死に手を振り、彼の吞噬から逃れようとしたが無駄だった。無数の黒い触手に体を絡め取られ、手足に力が入らなくなり、頭も重くなっていく。意識も散漫になり始めた。
彼の黒い物質は統治の能力を持ち、私を彼の一部に同化させようとしていた。
苦しい、気持ち悪い、言葉も出ない。なのに頭だけが高速で回り続けている……本当に、絶望的だった。
窒息感が迫ってくる。死ぬのか?
だが自分が死ぬことに対して、私は特に異議はなかった。死霊術戦士として、死んだ生物を好き勝手に使役してきた以上、自分が使役され利用される覚悟はできているはずだ。
それでも、これは本当に気持ちが悪い……
意識がなくなっていく。私は目を閉じた。夢を見るとでも思って、心を落ち着かせようとした。
「ようやく意識がなくなった。これで誰も私が再びこの世界を統治するのを止められない。他の神など一群の役立たずだ。この体を手に入れ、分身をすべて集めれば、私は無敵だ。はははは」
突然、白い光が彼の体内で絶えず点滅し、どんどん強くなっていく。
彼は恐怖し始めた。
「これは一体どうしたことだ! なぜ私の制御が弱まっていく? お前……は誰だ?」
その疑問を残したまま、彼は浄化され尽くし、無音の世界に消えた。ネット上の情報と同じで、いつでも忘れ去られる可能性を孕んでいた。
天木の体と暗黒神の融合は完了したが、白い光の出現により彼の目的は失敗した。
今の天木はすでに彼の「神権」を手に入れている。それが、天木が強い理由だ。
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私は自分の両手を見た。
2225年にこのゲームで得た神権は、今に至るまで一切の排斥反応を起こしていない。
自分は神というより、純粋な怪物のように感じる。
「まあいい。自分の目標を固めればいい。怪物であっても、人を助ける力はある。どうせ名や利など好きではない」
私は転送水晶を取り出し、冠陽市に戻った。
ここは相変わらず人通りが多く、皆が幸福そうに見える。だがそうではない。一部の者だけだ。それが等級の違いというものだ。
貧民窟に着くと、私はすでに部屋で普段着に着替えていた。
今、彼が何を聞きに来たのか知りたかった。
彼には散々世話を焼かされたからな——そうだろ、GM鋼目納言さん?
私はここのカフェに向かった。そこそこ良い店だ。店主とは長い付き合いがある。何しろここが私のスタート地点なのだから。
ちなみに店主は女性で、娘がいる。毎日笑顔を絶やさず、朝気に満ちた若者だ。
店の入り口に入った途端、彼女は笑顔で近づいてきた。気のせいだろうか、少し顔が赤く、嬉しそうに見えた。
「天木さん〜! どうぞ中へ!」
私は頷いて席を見つけ、座った。
ここからは窓越しに、貧民区と富人区の天と地の差が見える。曖昧な二つの光景が同時に目に入る場所だ。ここに座ると、いつも人生について深く考えさせられる。
「天木さん、いつものですか?」
「ああ。それから白湯を一杯頼む。すまないな、小水」
「はい! ……誰かと約束してるんですか?」
小水の顔には不満が浮かんでいた。なぜかはわからない。嫉妬しているのかもしれない。
「どうでもいい奴だ。いつも勝手に決めつけるタイプでな。お前が空いたら、また誘うよ」
「はあ、わかりました。じゃあ仕事に戻りますね、天木さん〜」
彼女の口調は少し俏皮だった。金色のポニーテールと黄色い双瞳が、かつて好きだったキャラクターを思い出させ、少し懐かしくなった。
だが小水は小水だ。誰かの代わりにはならない。それは彼女への不敬だ。
ding——
ドアのベルの音で入り口を見ると、彼がいた。
身長は一メートル八十五、墨緑色の風衣を着て、黒い長髪に緑色の瞳。
思ったより早く到着したことに、少し意外だった。
「どうぞ、お座りください」
彼は手を振り、私の方を見て真っ直ぐ歩いてきた。しかも悪そうな笑みを浮かべている。腹立たしい。
「どうぞ、座ってください!」
「ふふ、では遠慮なく」
「ちっ。先に話すか、それとも俺が無理矢理答えさせるか? 鋼目さん」
彼は向かい側に座り、窓の外を眺めた。瞳には生気がない。
「すべては将来のためだ。私がベロシフを送り込んだ目的は、黒造主を確実にお前の手に渡すためだった。お前だけが、暗黒神の力を完全に引き出せるからな」
「俺の質問はそれじゃない」
怒りが全身に湧き上がった。ついテーブルを叩きそうになった。
「天冠位の件か?」
私は答えず、彼に続けさせた。
「お前は最初にアリ迷宮を攻略したプレイヤーだ。お前を抑えなければ、プレイヤーたちはいずれ派閥を作り始める。だからお前を標的に据えて彼らを引きつけるのが最善策だと考えた。先に謝っておく。すまない!」
彼は額を木のテーブルに思い切りぶつけた。音は大きかったが、幸い客は少なかった。
「あっ! すみません、準備が遅れて……はい、お水です」
小水は彼が手でテーブルを叩いた音だと勘違いし、有錢人の機嫌を損ねるのを恐れて慌てた。
「小水」
「はい!」
「彼はただ頭をテーブルにぶつけただけだ。お前たちに不満があるわけじゃない。戻っていい」
「……はい」
彼女は水を置いて去った。私は彼を見た。まだその姿勢のままだ。
「起きろ。続きを話せ」
「はい。あのシステム指令は、実は私もキャンセルできない。唯一の方法は脳内のものを取り外すことだが、体への負担が大きい。もう少し我慢してくれないか?(私が反応しないのを見て唾を飲み込み、続けた)お前は魔猿を倒して服従させた。本当に感謝している。報酬もまだ渡していなかったな」
彼が指を鳴らすと、黒い品質のネックレスが私のバックパックに出現した。
私はそれを開き、新大陸を発見した。
**死霊魔戒**
品質:黒
機能:死霊法師系職業のキャラクターが操る骸骨と腐化生物の等級を向上させ、数量を増加させ、各数値を大幅に上昇させる。消費MPは固定の15から5に大幅減少。スキルの発動時間を延長し、ダメージも大幅に上昇。黒造主などの暗黒神武装を装備している場合、高確率で「影喰」効果が発動する。
影喰:黒泥が敵に同化し、一瞬で相手を自分の配下に変え、完全に自分の影とする。
「お前……」
一時の利益で彼を許そうという気持ちが芽生えたが、すぐに冷静を取り戻した。
私は両手をポケットに突っ込んだ無関心な態度から、両手を組み、両腕を垂直に下ろした姿勢に変え、彼に問いかけた。
「誠意は十分だ。だが俺は利益のために執着を捨てるような人間じゃない。これは一旦引っ込めておけ」
「いい。どうせこの物はお前の元へ来たがっていたんだ。そうだろ、暗黒神?」
「お前もそうだろう? 秩序神?」
双方が淡く微笑んだ。ちょうどその時、小水が私が注文したコーヒーと卵炒飯を運んできた。
小水は慎重に飲み物と食事を並べて去った。彼女の目には緊張が溢れていた。以前クラムチを呼んだ時と同じだ。
「うまいな! 俺には白湯だけかよ——」
本当に、この男は読めない。
「食べたいものがあれば自分で注文しろ」
私はすでにスプーンを取り、卵炒飯を口に運んでいた。香りが良く、色は黄金色で、米は卵液に包まれ、目玉焼きは小さな欠片にされ、葱が添えられている。実に美味しそうだ。日常で食べるレトルトの味を思い出すと、苦々しい。
「じゃあ注文するよ。お前の卵炒飯が美味しそうすぎるからな」
彼はカウンターへ走っていった。本当に好きなのか、ただの演技なのかはわからない。もう午後だ。鞍馬鉱場の話を聞くべき時だ。
彼が戻ってくると、目が輝いていた。少し落ち着かない。
「鞍馬鉱場の件を話せ」
「ふん、先に食ってくれ。そうでないと集中できない」
彼に振り回されて頭が混乱し、少し無言になった。
「一口食ってみるか?」
私は使っていない箸を差し出した。彼はそれを受け取り、食べ始めた。
彼は自ら卵炒飯を私の前から自分の前へ移した。他人から見れば極めて失礼な行為だが、私たちは長い付き合いだ。私と同じで、仮面の下は読めない。
「うわ、本当に美味い! 宣伝してやろうか?」
「やめろ。小さな経営だからこそ最高のサービスが維持できる。お前のように規模を拡大すれば、この店は有名になり、より多くの人を雇い、表面上は客に親切でも、内部では変質していく。やがて富のために手段を選ばない経済人の集団になる」
「このままでいいさ。だがそれは少し利己的じゃないか? 天木」
「俺は全員を代表できない。だが人が増えれば必ず矛盾が生まれる。だからこそ人々は大きな集団を多くの小さな集団に分けるんだ。細分化は必要なことだ。お前がこの『陽光カフェ』を宣伝すれば、他と協力し、最悪の場合買収される。たとえ元の料理人や接客や店主が替えられなくても、すでに味が変わってしまう」
私は続けた。
「一般に男性は店に対して多くを求めない。だが基準を満たさないサービスを受けると、即座に顔を変え、二度と来なくなる。それだけの単純なことだ。逆に味が変われば人も来なくなる。残るのは死忠のファンと、本当の良さを知らない者だけだ。上流階級に反対する名声など、大きな波は立てられない。その後ゆっくりとコストを下げ、静かに、気づかれぬうちに——それが富人区の利益至上主義のやり方だ。利益のために手段を選ばず、将来のサービスは有錢人だけに限定される。陽光カフェを今のまま保つには、膨張させないことだ」
彼は卵炒飯を私の前に戻した。機嫌が悪くなったようだ。私が富人区の悪口を言ったからだ。彼はそちらの管理層だから、よくわかっているはずだ。
「お前の言う通りだ。こんなに率直な言葉を聞くのは久しぶりだ。このカフェはそのままでいい。卵炒飯の味が変わるのは嫌だからな」
「もしこの店が味を変えたら、お前はどうする?」
「まず状況を確認し、態度を見る。例えば店員がまだ小水かどうか、店主が替えられていないか。替えられていなければ料理人に直接聞く」
「もし彼が口ごもって三言しか返さなければ、だいたいわかる。コストを下げて大衆に迎合し始めたんだ。小水は知らないはずだ」
言い終えたところで、ちょうど小水が料理と飲み物を運んできた。かなり多い……頼めるものをほとんど頼んだようだ。十数品ある。小水はずっと私を見ていた。少し不思議に思った。
「やっと来た。先に食おう!」
小水が並べ終えると、彼女は私の耳元で小さな声で囁いた。口調は少し恥ずかしそうで、吐息が熱く感じられた。
「さっき、この方と私の話をしてましたか?」
彼女はすぐに耳元から離れた。私は今、冷静でいるのが怖いほど冷静だった。彼女が私の表情を恐れるのを避け、少し驚きと少しの冷静を装った。
「天木がこんな可愛い子と一緒ならきっと幸せだろう、ってずっと褒めてたんだ。そうだろ、天木?」
「……ああ」
「そうなんですね〜。天木さんがこんなに感情を激しく表現するなんて。私も天木さんは優しいと思いますよ〜」
言い終えると彼女はカートを押して戻っていった。だが口が猫のようになっていて、安心させられた。
「俺はこのままでいたい。この店が変わらないことを願う。これは俺一人の利己的な願いだ。クラムチも同じ考えだ。さっきは助け舟を出してくれてありがとう」
「もう一年近く付き合っているが、お前は変わらないな。本当にすごい」
「ああ」
食事を終えると、小水が片付けに来て去った。その間ずっと私を盗み見していた。
「本題に戻ろう、天木。俺はお前をこのゲームの腫瘍だと思っている」
「もうわかってる。あんなに多くの人間を監視に送るのも慣れたよ。お前の前にいる俺が本物かどうかさえ、お前には確認できないだろう」
「変わらないと言っただろ。今のお前は間違いなく本物だ。俺の言葉の意味はわかっているはずだ。お前の存在は秩序神の管轄を乱している。俺は彼の子神で、彼の命令に逆らえない。鞍馬は俺たちの管理下だ。お前が行った瞬間から、すでに俺たちの罠の中にいた。今もお前の友人たちはそこにいる。彼女たちの絶対の安全は保証できない。管理する従業員を一人一人丁寧に調べたわけではないからな」
「だから俺に許せと?」
「許されることを望んではいない。俺は本気でお前を友人だと思っている。だが俺もただの操り人形だ。俺の上には長老院がいる。彼らも秩序神の子神だ。今回ベロシフを使ってお前と会う機会を作った。だからこれから話すことは非常に重要だ」
私の視界がぼやけ始めた。自分がなぜ指名手配されたのか、ようやく理解した。
暗黒神が私の体内にいるからだ。イスリンは暗黒神を信仰する国家だ。イスリンの暗黒神教はすでに私を発見し、私が世界を統べ、黒雲で覆うことを望んでいる。彼らは強く、管理者を打ち負かす力を持っている。だからこそ長老院は私を殺そうとする——世界が闇に覆われるのを防ぐために。
「秩序神はお前を名指しで暗黒神だと言った。止めなければ手に負えなくなると。お前もわかっているはずだ」
「わかっている。だがその前に生きていたい。もし制御を失ったら、その時は殺すなり封印するなりしてくれ。秩序神と暗黒神はもともと仲が悪い。一方はユートピアを崇め、一方は力至上を崇める。俺は迷宮をすべて攻略し終える。信じてくれ」
「お前はこれから長老院、暗黒神教、プレイヤーたちの追跡を受けることになる。本当にすまない。こんなに良い人間なのに……」
彼は悲しみと自責を抑えきれず、頭を下げた。
「これから俺たちは敵だ、鋼目納言」
私は立ち上がり、カウンターへ行って別れを告げた。
「小水、また来るよ。俺のことを忘れないでくれよ(微笑)」
「いつでも歓迎しますよ〜。でもたまに私を遊びに誘ってくれると嬉しいです。前に流星を見に誘ってくれたこと、覚えてますから」
「ああ。じゃあ行くよ」
彼女は笑顔で手を振った。だが私ははっきりとわかっていた——もう二度とこの店には来ない。
思い出も、出会いも、私がここに現れなければ、ここは大きくは変わらない。
あるものはいずれ変わる。私は将来、管理者たちに追われて死ぬだろう。それが最善の計画だ。
このカフェの人々に波風を立てさせるわけにはいかない。
さよなら、鋼目納言。




